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とりがら時事放談『コラム新喜劇』



とりがらショート書評 その1

「なぜこの店で買ってしまうのか」で有名な著者パゴ・アンダーヒル。
そのアンダーヒル氏がマーケティングリサーチ会社の最高経営責任者としての
経歴と経験を活かして、素人にも分かりやすく「ショッピングモールとはなに
か」ということを解説した、実に面白い読み物が本書である。
普通、マーケティングに関する専門書は意味不明な語句が並び、容易に理解で
きないものが多いが、本書はまったく異なっている。
読者はまず、著者と一緒に自動車に乗って、アメリカのどこか郊外のショッピ
ングモールへ向かうところからストーリーは始まる。
広大な駐車場の欠点や、どのような人が、その駐車場のどこに自分の車を駐車
させるのか、語り始めるあたりから目が放せなくなる。

本書の特徴は、主に筆者が活躍するアメリカを舞台にしつつも、随所に他の国、
例えば南米やスペインなどをちりばめ、日本の例も多く分析しているところだ。
日本では老朽化した施設の例として奈良ファミリーを取り上げている。
我が国のショッピングモールは規模は小さいけれどもアメリカの模倣に近いも
のが多い。とりわけここ十数年はライフスタイルが大きく変動し、場所にもよ
るが、いわゆる駅前のショッピングセンターが壊滅状態になってきている。
家族で買い物に行く時は自家用車に乗って、郊外のショッピングセンターへ行く
ことが主流になっているのだ。
そういうアメリカを模倣した日本の小売業の形態を、冷静に観察する際、とび
きりの参考書に本書はなるだろう。
「先進諸国の中で、最初に高齢化社会を迎える日本に、その模範となるショッ
ピングモールの形が出てくることを期待したい」
と言うような趣旨を著者が最後に述べていることが一番印象に残った。

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