人生の目的は音楽だ!toraのブログ

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岩城宏之著「森のうた 山本直純との藝大青春記」を読む ~ 抱腹絶倒のエピソードの数々

2022年06月07日 07時17分50秒 | 日記

7日(火)。東京は昨日、梅雨入りしました 雨は鬱陶しいですが、農産物の生育・収穫を考えると降る時に降らないと後で困ります 人間なんて勝手なものです

ということで、わが家に来てから今日で2704日目を迎え、ウクライナのゼレンスキー大統領は5日、ロシア軍が攻撃を集中させている東部ルハンスク州のセベロドネック近郊などの拠点を相次いで視察し、部隊を激励したほか市民とも面会した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     プーチンは 暗殺を恐れて 絶対に最前線には行かない  そこがゼレンスキーとは違う

 

         

 

昨日、夕食に「ビーフカレー」を作りました わが家のビーフカレーはブロック肉ではなくバラ肉を使います。牛丼屋のカレーみたいですがとても美味しいです カレーにはワインですね

 

     

 

         

 

岩城宏之著「森のうた 山本直純との藝大青春記」(河出文庫)を読み終わりました 岩城宏之は1932年東京生まれ。東京藝大打楽器科卒。在学中にNHK交響楽団副指揮者となり、1956年デビュー。内外の主要オーケストラを指揮する一方、日本初の常設室内管弦楽団「オーケストラ・アンサンブル金沢」の設立に寄与、日本人作曲家作品の積極的な初演を行うなど、日本のクラシック界の発展に尽力した。2006年逝去

 

     

 

本書は、朝日新聞・吉田純子編集委員が書評欄で推薦していて、面白そうだと思って入手した作品です 1987年に朝日新聞社から刊行され、1990年に朝日文庫、2003年に講談社文庫に収められたロング・セラーです 今年2月に復刊されました

本書は とてつもない才能と愛嬌を持つ盟友、山本直純との4年間を綴った岩城宏之の捧腹絶倒の名著です    念願の東京藝大に入ったものの、指揮者になりたくて仕方がない作曲科のナオズミ(山本直純)と打楽器専攻のぼく(岩城宏之)は、「盛り蕎麦2枚進呈」をダシに芸大生を集め、学生オーケストラ「学響」を結成する そして、100人以上のオーケストラと200人以上集まった合唱を抽選で絞り、遂にショスタコーヴィチのオラトリオ「森の歌」を演奏する ぼくがシンバルに回り、ナオズミが指揮を執った。ブラボーの嵐が押し寄せた、という感動の物語です

東京藝大を受験する前の話には笑ってしまいました

「いろいろな大学案内書を読んでいると、音楽大学の中で、もっと立派そうなのがあった 『国立音楽大学』である。ぼくはそれを『コクリツ』と読んだのだった。『藝大』は何か芸者の養成学校のような気がした

山本直純の天才ぶりを書いた「『学響』のとき」には驚愕します アメリカ留学を終えて帰国し、藝大で指揮を教えることになった渡邊暁雄氏が『副科』に入るためのテストをした時のエピソードです

「先生はピアノの前に座り、ナオズミに静かな声で語りかけた。『きみ、いま叩く和音の中の、上から3番目の音の、5度下の音を声に出してごらん』。和音なんていうものではない。指10本を使った滅茶苦茶な不協和音だ ナオズミは即座に『アーッ』とダミ声をあげた。先生は指定した音、つまり上から3番目の音の5度下のキーを、ポーンと叩いた ダミ声と同じ音だった ゆっくりうなづいた先生は、『もう一度やってみようね』とつぶやいた。多分、マグレだと思ったのだろう。違う不協和音を叩いた。『今度は、下から2番目の音の6度上をうたってごらん』。『イーッ』。またポーンと試す 完全無欠な絶対音感教育の、しかももともと天才的な感覚を持っている人間でなければあり得ない。テストをする先生自身、絶対にできないに決まっている。これ断言できる

岩城宏之の失恋の話を書いた「恋の涙」はジーンときます 岩城は付き合っていたピアノ科の彼女に振られてしまいます。彼女はウィーンに留学してしまったのです。ガックリしてメソメソしている岩城を慰めようと、ナオズミは「オメェよー、向かいの映画館でディズニーやってるぜ。たまには気が晴れて、いいかもよ」と誘います。2人で「ピノキオ」を観ていると、お姫様が出てきて、ぼくは彼女を思い出して涙が出てくる するとナオズミは「おい、オメェ、出ようか?」と気を使って外に出る。向かいの喫茶店でワーワー泣くと、ナオズミが「ちょっと待ってろよナ」と言ってどこかへ行ってしまう そして「ピノキオ」の絵本を抱えて戻ってくる。「きょうはナ、オメェ、家に帰ってこれ読んで寝ろよナ」。「あ、そうそう」と言ってまた出て行ってしまう 戻ってきたナオズミは「オメェ、今晩はこれを着て、寝ろよナ」とピノキオだらけのパジャマと枕を持ってきた その後もナオズミの慰めは続きます。最初は「彼女への涙」だったのが、涙の3分の1がナオズミへのうれしさに、3分の2が・・・そして100パーセントがナオズミへのうれしさに捧げられていきます

普段は態度が大きく、言葉使いも悪いナオズミですが、親友が悲しい時には自分のことのように心配して気を使ってくれる。読みながら涙が出てきました

当時、山本直純は目白の自由学園(仮教室)で開かれていた「斎藤秀雄指揮教室」に通っていましたが、岩城もナオズミに誘われて通うようになります 1年足らずで止めてしまいますが、その経験から岩城なりの考えをまとめます 「タタキやシャクイなどの『斎藤理論』は、生まれながらにして素晴らしい指揮をしている人たちの動きを、分析して組み立てたわけである もしかしたら、先生は、恐ろしく不器用だったのではないか。だから理論づけようとした」。なかなか鋭い分析だと思います

このほか、カラヤンやマルティノンのリハーサルに2人で潜り込んだ話など捧腹絶倒のエピソード満載で、何度も声を出して笑ってしまいました それにしても岩城宏之はどうして こうも文章が巧いんだろう、と感心します 女性では中村紘子が筆頭でしょうが、男性では岩城宏之で決まりでしょう

なお、タイトルの「森のうた」は、一つはナオズミが指揮したショスタコーヴィチのオラトリオ「森の歌」から採ったものですが、もう一つは、2人の青春の舞台となった東京藝大が上野の森にあるからです

これから読もうとする人にアドヴァイスするとすれば、決して電車の中で読んではいけません 思わず吹き出して「怪しい人」とレッテルを貼られる恐れがあるからです


コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (miminga33)
2022-06-08 14:13:51
こんにちは。
岩城さんの文章の巧みなことは、本当に素晴らしいですね。森のうたも面白かった!!ブログを読んでいたらまた読みたくなりました。

山本直純さんもですけれど、岩城さんが比較的若いうちに病気で亡くなったことは悲しく悔しいことです。
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岩城宏之&山本直純 (tora)
2022-06-08 17:12:22
ウサコさん コメントありがとうございました。

岩城氏の死は本当に早すぎましたね。初演魔の岩城さんのことですから、空の向こう側で山本直純氏の作曲した新曲を初演しているかもしれませんね
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