人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ジョナサン・ノット+東響でマーラー「交響曲第9番」を聴く~成功した新音楽監督の船出

2014年04月21日 07時00分24秒 | 日記

21日(月)。昨日、サントリーホールで東京交響楽団の第619回定期演奏会を聴きました。同楽団の新音楽監督ジョナサン・ノットの就任記念コンサートです プログラムは①武満徹「セレモ二アル」、②マーラー「交響曲第9番」です。①の笙独奏は宮田まゆみです

 

          

 

開演に当たり「指揮者の意向により休憩がありません」のアナウンスが入ります 1曲目の武満徹「セレモ二アル」はサイトウ・キネン・フェスティバル松本の第1回オープニング作品として委嘱・初演されたもので、雅楽の楽器である笙(しょう)による序奏と後奏をもつオーケストラのための小典礼楽です

コンマス・水谷晃のもとチューニングが行われソリストと指揮者を待ちます。オケは向かって左手奥にコントラバス、その前に第1ヴァイオリン、右にチェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンと並ぶ対向配置を採ります

笙を手にした”白装束”の宮田まゆみが指揮者ノットとともに登場し、厳粛な雰囲気の中、笙のピアニッシモの音が会場の隅々まで沁み渡っていきます ここで”ピアニッシモ”と書きましたが、笙は楽器の特性から大きな音が出せないので、実際にはフォルテで吹いているのかも知れません。どこで息継ぎをしているのだろうと不思議に思うほど音が絶えません。独特のブレス法があるのでしょう。途中からオーケストラが流れを引き継ぎ静かな音楽を奏で、最後に再び笙のピアニッシモによって曲を閉じます 東洋と西洋が融合するような曲想です

拍手の中、カーテンコールが何度かあり、休憩なしで次の曲が始まります。管楽器、弦楽器とも追加されステージが狭く見えるほどに拡大します 指揮者の譜面台が外されました。ノットは暗譜で指揮をするようです

 

          

 

再びジョナサン・ノットが登場、マーラーの第9交響曲が開始されます。第1楽章「アンダンテ・コモド」はチェロとホルンとハープとで「光」が表現されます。次いで、やさしく深い音楽が続きます

ノットの指揮は、壮年期のカラヤンを思い出させます。各楽器への指示は鋭く、しなやかな両手でオーケストラを完全にコントロールします それが顕著だったのは第2楽章「レントラーのテンポで、ややぎこちなく粗野に」と第3楽章「ロンド・ブルレスケ」です 両楽章とも速いパッセージが続く箇所が少なくないのですが、ノットはこれでもか、といったスピードをオケに求めます 自ら自家用ジェット機を操縦して世界を飛び回って演奏活動を展開したカラヤンのスピード感に通じるところがあります。「これが現代のマーラーだ」とでも言うかのような指揮振りです

(家に帰ってからカラヤン+ベルリン・フィルの1982年のライブCDを聴いてみて、これが誤解だったことが分かります。何と、ノット+東響の方が速いのです よく考えてみれば82年と言えば30年以上前の演奏です。その後、我々を取り巻く生活環境はより一層スピード感が増しています。それを反映するかのようなノットのテンポです ついでに言えば、カラヤンとノットとの大きな違いは、カラヤンは目を閉じて指揮するのに対して、ノットは両目をしっかりと開けて指揮をします

 

          

 

しかし、間を置かずに入った第4楽章「アダージョ」では、弦楽器を中心に、第3楽章までにもがき苦しんできた人生を浄化し、この世に別れを告げる音楽を綿々と響かせます

この曲は1909年~1910年に作曲されましたが、マーラーは自分の耳で聴くことが出来ないまま死去しました 初演は彼の弟子ブルーノ・ワルター+ウィーン・フィルによって1912年6月26日にウィーンで初演されましたが、ワルターはこの曲を「別れ」の音楽だと言っています

弦楽器のピアニッシモが終わりを告げ、会場にしじまが訪れて約20秒、ノットのタクトが下ろされ、パラパラという拍手が徐々に拡大し会場全体を包み込みます 静かな感動に「ブラボー」は聴かれません。2度目のカーテンコールで初めて「ブラボー」の声が聴こえてきました。「ノー・ブラの某さん」の声もありました。やっぱり来てましたね、あなた

この日の演奏を振り返ってみると、ノットは本当のところ「セレモ二アル」と「第9交響曲」を間断なく続けて演奏したかったのではないか、と思いました もちろん、1曲目のソリスト宮田まゆみさんへの配慮があるので、そうはいかないことは分かっていますが、ノットの周到なプログラミングから2つの曲の一貫性を考えるとそう思わざるを得ません

この日のコンサートは新音楽監督ジョナサン・ノットの船出として大成功を納めたと思います

 

          

         

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