人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

藝大オペラでモーツアルト「コシ・ファン・トゥッテ」を観る~アンサンブル・オペラの最高傑作!

2016年10月09日 09時01分12秒 | 日記

9日(日).わが家に来てから今日で741日目を迎え,新聞で阿蘇山の36年ぶりの爆発的噴火のニュースを見て心配するモコタロです

 

          

           熊本は半年前に地震があったばかり 大過なければいいな

 

  閑話休題   

 

昨日,上野の東京藝大奏楽堂で「藝大オペラ第62回定期公演 モーツアルト『コシ・ファン・トゥッテ』」を観ました 出演は,フィオルディリージに平堅柚香,ドラベッラに中山茉莉,グリエルモに栗原峻希,フェランドに川上晴央,デスピーナに横山和美,ドン・アルフォンゾに湯澤直幹,管弦楽は藝大フィルハーモニア,指揮は村上寿昭,演出はミヒャエル・テンメです

 

          

 

自席は2階BL1列26番,今回は初めて2階左側バルコニー席の1列目の通路側を選びました オペラを2階から見下したらどんな感じだろうか,という興味からです 会場は9割近く埋まっている感じです

プログラム冊子に掲載された迫音楽学部長の「ご挨拶」に「今年度,大学院研究科にオペラ専攻を新設いたしました」と書かれていました.ビックリです 東京藝大に今まで「オペラ専攻」が無かったとは信じられません 今回の公演は新たなオペラ専攻の第1回目の公演となるわけです

この作品はロレンツォ・ダ・ポンテの台本に基づいてモーツアルトが作曲したものです 18世紀末のナポリを舞台に物語が展開します.登場人物は2組のカップル(女性は姉妹)と哲学者と小間使いの男女6人とナポリの市民たちです 哲学者ドン・アルフォンソは「女の貞操は不死鳥のごとく存在しない」という持論を実証するため,男たちに,それぞれの許嫁と違う方の姉妹を口説き落とすように仕掛け,姉妹が陥落するかどうかを賭けるというストーリーです

2階席からはオーケストラピットの中が良く見えます.が,左隣に座った若い女性が前のめりに舞台を観ているので視界が若干遮られます バルコニー席の宿命ですが,1列目だから大丈夫と高をくくっていたのが大間違いでした やっぱりバルコニーは出来るだけ避けた方が良いと思いました

指揮者・村上寿昭のタクトで序曲が始まります モーツアルトのオペラにおける序曲は,「フィガロの結婚」にしても,「ドン・ジョバンニ」にしても,「魔笛」にしても,そしてこの「コシ・ファン・トゥッテ」にしても,オペラ全体の物語の内容をコンパクトに凝縮したエッセンスと言っても差し支えありません ホンの数分の序曲に3時間にも及ぶオペラのすべてが凝縮して詰まっているのです.モーツアルトは天才だ

村上寿昭は速めのテンポで序曲を演奏します モーツアルトの音楽,とくにオペラでは軽快なテンポが命です のろのろしたペースはモーツアルトではありません 

ステージ上の左サイドには複数の衣装を吊るしたハンガーが,右サイドにはメタリックなテーブルとイスのセットが置かれています.極めてシンプルな舞台作りです

第1幕では,ジャージ姿のグリエルモとフェランド,そしてドン・アルフォンソが登場して”賭け”の話に入るわけですが,3人ともいい声をしています とくにフェランドを歌う川上晴央は軽く輝くテノールで良く声が通ります グリエルモを歌う栗原峻希の声も魅力があります

そして,フィオルディリージとドラベッラ姉妹が登場して,急に出征することになった二人の若者の武運を祈ってアルフォンソと「風よ,おだやかなれ」を歌います 何と美しいアンサンブルなのでしょうか この時,二人の男性は迷彩服を着て出征するのですが,ヘルメットに国連のUNという文字が書かれていたのが何とも可笑しさを醸し出していました

ドラベッラは恋人が戦地に行ってしまった不安を胸に「静められない不安よ」を歌いますが,中山茉莉は魅力のあるメゾを聴かせてくれました

その後,アルバニア人に変装したグリエルモとフェランドが,それぞれの許嫁と違う姉妹に求愛するのですが,フィオルディリージが固い貞節をアリア「岩礁がじっと動かないように」に託して歌います 平堅柚香のソプラノは美しく,説得力がありました

第1幕フィナーレは,二人の男が姉妹の気を惹こうとヒ素を飲んで苦しむ中,デスピーナが偽医者に扮し磁石で毒を制し,姉妹に男たちを介抱するように言いますが,姉妹は怒ってはねつけます この場面における六重唱は見事です.アンサンブル・オペラの極致をいくフィナーレです

20分の休憩後は第2幕に入ります.左隣の女性は幸いにも前傾姿勢を取らなくなったので彼女に対する評価が上がりました よく気が付いたものです

第2幕では,まずデスピーナが姉妹に浮気を勧めるアリア「女は15にもなれば」を歌います デスピーナを歌う横山和美はコケティッシュな役割がピッタリです 歌も素晴らしいです そして,フィオルディリージはアルバニア人に心が動かされたことに対し,良心の呵責を覚え 新しい恋心を強固な意志で抑え込もうとして,ロンド「愛しいあなた,お願ですから許してください」を苦悶に満ちた表情で歌います この時の平堅柚香の歌唱はヒロインの心を見事に表現していました

気持ちよく彼女のロンドを聴いている時,突然すぐ近くで「ピロピロピロ~」というケータイ着信音が鳴りました.どうやら左隣の女性のケータイが鳴ったようです 「ピロピロピロ~」ですよ ピロリ菌じゃあるまいし,勘弁してほしいです その時,歌声がピークに達したタイミングだったので,遠くの人には届かなかったかもしれませんが,すぐ隣の私にはその音はすごく大きく聞こえました その瞬間,彼女に対する評価が再び地に落ちました

気を取り直して・・・・この公演では6人の出演者すべてが良かったと思いますが,とくに印象が強かったのは前述の通り,フィオルディリージを歌った平堅柚香とフェランドを歌った川上晴央です この二人は「魔笛」でタミーノとパミーナを歌ったらピッタリだと思います

 

          

 

ところで,このオペラの見どころの一つは第2幕のフィナーレをどう演出するか,です 最後にドン・アルフォンソが「女はみんなこうしたもの」と言って,恋人同士は元のさやに納まって舞台を去って行く・・・・というのがお決まりのフィナーレですが,今回のミヒャエル・テンメの演出は変わっていました グリエルモとフィオルディリージ,フェランドとドラベッラがそれぞれ手を繋いで別々の方向に去っていくとき,フィオルディリージとフェランドは後ろを振り返り,お互いに手を差し伸べながら去っていくのです つまり,この演出では,それぞれのカップルは「元のさやに納まっていない.少なくも男女それぞれ1人は新しい”恋人”に心を移したままである」ということを表わしています 何度かこのオペラを生で観ましたが,今回のような解釈は初めてで,とても新鮮でした

私は数年前まで,モーツアルトのオペラでは①フィガロの結婚,②魔笛,③ドン・ジョバンニ,④コシ・ファン・トゥッテ,⑤イドメネオの順に好きでしたが,ここ数年は,①コシ・ファン・トゥッテ,②フィガロの結婚,③魔笛,④ドン・ジョバンニ,⑤イドメネオの順になっています その最大の理由は,ソロのアリアよりも二重唱,三重唱,四重唱,五重唱,六重唱のアンサンブルが素晴らしいからです 「コシ・ファン・トゥッテ」はアンサンブル・オペラの最高傑作です

 

          

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2 コメント

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ピロピロピロー (tatsuo ono)
2016-10-18 12:38:52
ピロピロー、かわい子ちゃんだったら・・・。とはいかないねえ。仕方がないので、なかったことにして音楽に集中するしかありません。後を引くと、自分が損するだけですもんねえ。参考になりました。
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マナーの悪い客が多すぎ (tora)
2016-10-18 13:20:03
tatsuo onoさん,コメントありがとうございました.
マナーの悪さは老若男女美人不美人を問いません.
正直言ってぶん殴ってやろうかと思う時もありますが,日本は放置国家,いや,法治国家なので実行には移しません
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