人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

今井正監督「にごりえ」を観る~新文芸坐/米原万里「ベスト エッセイ Ⅰ」を読む

2016年08月03日 07時56分33秒 | 日記

3日(水).わが家に来てから675日目を迎え,何かを期待して上を見ているモコタロです

 

          

                何かって オヤツに決まってるじゃん!

 

  閑話休題  

 

昨日の夕食は「豚肉のスペアリブ」「生野菜とタコのサラダ」「冷奴」にしました ボリュームたっぷりに見えますが,半分近くは骨ですから

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,池袋の新文芸坐で「にごりえ」をみました これは,樋口一葉原作の「十三夜」「大つごもり」「にごりえ」の3つの物語のオムニバスで,今井正監督が1953年に映画化(モノクロ.130分)したものです

「十三夜」は,貧しさゆえに何も分からぬまま銘家に嫁いだ せきが主人の仕打ちに耐え切れず実家に帰ったが,父親に説得されて 嫁ぎ先に置いて来た太郎のもとに帰る せきが乗った人力車の車夫は幼馴染みの落ちぶれた録之助だった.二人はそれぞれが置かれた立場を考え,幼いころの恋心を打ち明けることなく別れる.中秋の名月の晩だった

「大つごもり」は,心優しい みねは資産家・山村家に奉公しているが,育ての親である伯父から大晦日までに2円の前借りを頼まれ,山村家の後妻あやに頼んだが断わられ,出来心で引き出しから2円を盗んでしまう  しかし,幸か不幸か,当家の放蕩息子が親の留守中に金を無断拝借したため,みねに疑いはかからなかった

「にごりえ」は,蒲団屋の源七は落ちぶれた今も小料理屋「菊之井」の酌婦お力のことが諦めきれないでいた お力は気前の良い客 結城に憧れるが,心の底では源七のことを振り切れないでいた.内職をして一家を支えていた源七の妻お初は,お力に嫉妬して悪口を言い,源七に離縁されてしまう お盆も過ぎたある日,袈裟懸けに切られたお力と,割腹した源七の死体が草むらで発見された

 

          

 

 この3つの物語は貧しく生まれたがゆえに苦労する女性の運命を描いていますが,「時代の変遷」を感じます この物語の描かれた時代の女性はいかに社会的に弱い立場に置かれていたか,ということです それに比べて,現代社会は自由が溢れています.能力と先見の明さえあれば東京都知事にだって,アメリカの大統領にだってなれるのです

 

          

          

 

  最後の,閑話休題  

 

「米原万里 ベスト エッセイ 1」(角川文庫)を読み終りました この本は1994年9月から2004年2月までに米原万里が新聞や雑誌に寄せたエッセイをまとめたものです 米原万里は1950年生まれ.ロシア語の通訳者として世界的に活躍した後,作家活動に入り2006年5月,56歳で死去しました

 

          

 

この本に収録されたエッセイは,通訳時代の失敗談,当時の政治家の堕落振り,次から次へと繰り出す下ネタ,と幅広い範囲に渡って毒舌を交えて書き綴っています

私の場合はどうしても音楽や音楽家のことに興味があるので,「ムスチスラフ・レオポルドビッチ・ロストロポービッチ」が一番面白く読めました

「『芸術論が,その作品を凌駕している芸術家は不幸だ』という至言を吐いたのは,セザンヌだったかマチスだったか 絵描きは絵で,舞踏家は踊りで,音楽家は音楽で勝負するのだから,さらにそのうえ作品の構造や技術について言葉を弄してアレコレ云々するなんてのは,なくても十分,良くて付録,悪くて蛇足

と論理を展開しながら,次の行からは,

「実際にお会いした超一流と目される芸術家たちのおのれの芸を語る言葉の豊かなこと,巷の評論家もマッツァオの腕前だ

「音を言葉で描写させたら,ムスチスラフ・ロストロポービッチ(注:世界的なチェリスト)の右に出る音楽家をわたしは知らない.・・・・その一端を紹介しよう

打楽器に対して・・・・・『東京中のビルのガラスが砕け散り,東京中の老婆がショック死するような音を頼む!』

間の抜けたピッチカートを弾いたヴァイオリン奏者に対して・・・・・『君の指は,1時間以上ゆでたスパゲティーみたいだね

お気づきのように,極力形容詞をさけ具体的でイメージ豊かな比喩を多用する その多様多岐にわたる比喩の採集現場に立ち会えるのだから,通訳は3日やったら止められない

と続けます.さらに,ロストロさんの大好物について語ります

「ロストロポービッチには,来日の度に必ず訪れる場所が2つある.一つは,築地の魚市場 「大トロ,中トロ,ロストロ」というほどマグロのトロに目が無くて,贔屓の店で仕入れたヤツを,公演中ホテルの冷蔵庫に入れて毎日食す ある日,週刊誌の取材があった

『なぜトロがお好きなんですか?』

『君には好きな女がいるだろう.その女のことを,君はなぜ好きなのか,なぜ愛しているのか?』

質問され慣れていない相手が答えに窮してしどろもどろになったところで,釘を刺す.

『愛とは,そういうモノなのだよ.理由はいらない.好きだから好きなんだ

要するに病膏肓の口の和食狂いで,そんな『教養』が子供たちの作曲作品を審査するときに顔を出す

『そりゃトロの刺身も天婦羅も兜煮も大好きだけど,全部いっぺんに出されたら,ウンザリしちまうよね 君の伴奏の部分がまさにそうなんだ.テーマが多すぎやしないか?欲張らずにどれか一つに絞ってごらん

という具合に紹介します.ロストロさんがもう一カ所必ず訪れるのは相撲部屋だそうですが,これは割愛します

一つ一つを紹介していたらきりがないので,あとは書店でご購入下さい.本体価格640円です.買って後悔しません

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