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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

東京音大プロデュース「アルカンからの手紙」公演を聴く~「サントリーホール レインボウ21」

2015年06月11日 07時04分38秒 | 日記

11日(木).わが家に来てから245日目を迎え、廊下に脱走するモコタロです 

 

          

            ご主人さまのCDラックが並んでて 廊下が狭いんだよね

 

  閑話休題  

 

昨夕,サントリーホール”ブルーローズ”で「レインボウ21 サントリーホール デビューコンサート2015 東京音楽大学プロデュース~アルカンからの手紙」公演を聴きました これは「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン2015」の一環として開かれたコンサートです ショパンやリストが脚光を浴びていた同じ時代に生まれ、いくつもの超絶技巧曲を作曲しながら、彼らの陰に隠れて当時ろくに見向きもされなかったシャルル・ヴァランタン・アルカン(1813-88)に光を当て、その魅力を発掘しようという意欲的な試みです

 

          

 

プログラムは2部構成になっており、第1部では①アルカン「練習曲”鉄道”」、②ショパン「エチュー嬰ハ短調」、③リスト「超絶技巧練習曲集」から第4番「マゼッパ」、④アルカン「悲愴的な様式による3曲」(追憶)から第2曲「風」、⑤ショパン「ピアノ・ソナタ第2番」から最終楽章が、第2部では①アルカン「ある鸚鵡(オウム)の死によせる葬送行進曲」、②ショパン「チェロ・ソナタ ト短調」から第1楽章,③アルカン「ピアノ独奏のための協奏曲嬰ト短調」が、それぞれ演奏されます 演奏者は東京音楽大学の学生が中心です

この日は大ホールでのコンサートがないので,ホワイエは閑散としています.いつも通りコーヒーを飲みながらプログラムに目を通しました 全自由席だったのでセンターブロックの前から5列目右通路側席を押さえました.会場のブルーローズは学生らしき若者たちを中心に8割以上入っている感じです

付け髭のナビゲーターがアルカンについて語ります

「アルカンはショパン,リストと同じ時代に生きた作曲家でしたが,3人に共通するキーワードは『ピアノ』と『超絶技巧』です

確かに1曲目のアルカン「練習曲”鉄道”」と2曲目のショパン「エチュード嬰ハ短調」(演奏=豊島萌華),そして3曲目のリスト「超絶技巧練習曲」から第4番「マゼッパ」(演奏=朝倉すみれ)を聴く限り,その通りです しかしショパンは『超絶技巧』で括るのはどうだろうか?と思って,4曲目のアルカン「悲愴的な様式による3曲」から第2曲”風”と5曲目のショパン「ピアノ・ソナタ第2番」から最終楽章(演奏=森永康夫)を聴くと,確かにそういう面もあるな,と思い直しました

 

          

 

さてこの日,印象に残ったのは後半の2曲でした.まず,アルカンの「ある鸚鵡(オウム)の死によせる葬送行進曲」です これは3本のオーボエ,ファゴット,ソプラノ,テノール,バス,オルガンという珍しい組み合わせによる作品です アルカンが室内楽曲を作っていたとは知りませんでした.オウムが死んだ様子がフランス語で歌われていますが,解説によると「お昼ごはん食べた?」「それで,何?」という歌詞を繰り返して,つまり『オウム返し』で歌っているとのことです.これは非常に面白い曲です 演奏でとくに素晴らしかったのはファゴットを吹いていた洞谷美妃さんという修士課程修了の女性です このファゴットが通奏低音のように全体を支え,賑やかな曲想の中に安定感を与えていました

 

          

 

圧巻だったのはショパンの「チェロ・ソナタ」(チェロ=前嶋修光,ピアノ=川村恵里佳)の後に演奏されたアルカンの「ピアノ独奏のための協奏曲嬰ト短調」です ここで曲のタイトルをあらためて見てみると「ピアノ独奏」のための「協奏曲」になっています 通常のピアノ協奏曲はピアノ独奏と管弦楽のための協奏曲です.つまり,アルカンは独奏も伴奏もすべて1台のピアノでまかなってしまおうとした訳です 50分にも及ぶ大超絶技巧曲ですが,さすがに一人では弾き切れないのでしょう.第1楽章を4年生の小林遼君が,第2楽章と第3楽章を修士課程2年生の安並貴史君が弾きました ところによってはショパンのようでもあり,ところによってはリストのようでもあり,超絶技巧という意味ではリストを上回る”演奏不可能”とも言えるような独特の曲です 二人は暗譜で弾きましたが,こんな曲を楽譜を見ながら弾いていたら演奏が滞ってしまうでしょう.選択肢としては暗譜しかないでしょう その意味では,アルカンの”演奏不可能”に近い超絶技巧曲に果敢に挑戦した二人の演奏は見事でした.機会があればもう一度聴きたいくらいです

 

          

 

アルカンと言えば,その昔マルク・アンドレ・アムランの演奏で超絶技巧曲を生演奏で聴いたことがあります その当時は「アルカンの曲は難し過ぎて弾けない」と言われていました しかし,時は過ぎ,今や大学生が暗譜で弾く時代になりました.この間,日本人の演奏技術も飛躍的に向上したということでしょう

ナビゲーターによると,アルカンは本棚に押しつぶされて死んだそうですが,アルカンはどんな本を読んでいたのでしょうか?彼はショパンととても仲が良かったようなので,ショパンの恋人ジョルジュ・サンドの作品も書棚に収められていたかも知れません 書棚と床にサンドされてしまったとしたら可哀そうですね

 

          

コメント
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