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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

日本はもともと「ニ季」の国 / Netflixで韓国映画「84㎡」を観る ~ 騒音殺人事件 / 王谷晶「ババヤガの夜」、宮島未奈「成瀬は天下を取りに行く」、芥川也寸志「私の音楽談義」他を買う

2025年07月26日 00時01分06秒 | 日記

26日(土)。24日付の日経夕刊第1面のコラム「あすへの話題」で、実践女子大学教授の佐倉統氏が「そもそも日本は二季の国」という見出しのエッセイを書いています 超略すると次の通りです

「日本は四季が美しいのが自慢だったのではないかーと嘆きたくなるが、大阪市立大学の生態学者・吉良竜夫(1919ー2011)は50年以上前に、『日本はもともと二季の国だった』と喝破していた 「日本文化の構造」(講談社現代新書・1972年)によると、吉良は『日本は四季の別が明らかで、自然のめぐみゆたかな国・・・とは、かつての国定教科書のうたい文句だったが、本当はうるわしい春と秋の季節はあまりにも短い 日本の大半は、長い夏と長い冬の交代する国、蚊帳とこたつの交代する二季の国なのである』と述べている。快適な春と秋がなくなったのではなかった もともと短かったこの2つが、さらに短くなっただけなのだ 量の違い。程度問題

う~ん、そうだったのか、程度問題か とはいえ、この暑さが緩和されるわけではないしなぁ 希望としては春と秋が長くなってほしい 冷暖房がいらないので電気代がかからないからね なんと風流からほど遠い理由だろう

ということで、わが家に来てから今日で3847日目を迎え、トランプ米大統領は24日、改修工事が進められている英連邦準備制度理事会(FRB)の本庁舎を訪ね、工事費用の予算超過を理由に、自らの利下げ要求に応じないパウエル議長を批判しようとしたが、間違ったコストを示してパウエル氏に正される一幕があった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

トランプはわざわざFRBに乗り込んでパウエル氏に圧力をかけようとしたけど  逆に恥を晒したね

         

手元の本が残り1冊となったので、いつも通りジュンク堂書店池袋本店で文庫本・新書を9冊購入してきました

1冊目は芥川也寸志著「私の音楽談義」(中公文庫)です この本は芥川龍之介の三男・也寸志の生誕100年を記念して出版されたエッセイ集です

2冊目は宮島未奈著「成瀬は天下を取りに行く」(新潮文庫)です 本屋大賞を受賞して大きな話題を呼んだ作品です

3冊目は王谷晶著「ババヤガの夜」(河出文庫)です 英国推理作家協会主催「ダガー賞」を日本人として初めて受賞したミステリーです

4冊目は中山七里著「祝祭のハングマン」(文春文庫)です ご存じ「中山七里は七人いる」と言われるほどの多作家の最新文庫本です

5冊目は中山七里著「中山七里  短いお話ほぼ全部」(宝島社文庫)です 本書は未収録の短編やエッセイ等を集めた作品集です

6冊目は岡本和宣編「有吉佐和子 ベスト・エッセイ」(ちくま文庫)です 有吉佐和子著「青い壺」を読んで、これほどの筆力のある小説家は普段どんなことを考えて生活していたのかを知りたくなりました

7冊目はPha著「どこでもいいからどこかへ行きたい」(幻冬舎文庫)です 著者はカプセルホテル、サウナ、ネットカフェの常用者のようです

8冊目はノーム・チョムスキー著「誰が世界を支配しているのか?」(双葉文庫)です 「トランプの猛威、ガザの惨状、泥沼のウクライナ情勢、これらすべては2017年に本書によって予言されていた」というのが謳い文句です

最後の9冊目は佐々木敦著「『書くこと』の哲学~ことばの再履修」(講談社現代新書)です 「書くための理論と実践」が解説されているようです

いずれも、読み終わり次第toraブログでご紹介してまいります

         

Netflixで7月18日から配信が開始されたキム・テジュン脚本・監督による韓国映画「84㎡」(1時間58分)を観ました

この映画は高層アパートを購入し、念願のマイホームを手に入れた若い男性が、騒音の犯人と疑われたことで極限状態に追い込まれていくサスペンス・スリラーです タイトルの「84㎡」は韓国のアパートの一般的な間取りとされている32坪(約84㎡)に基づいています

若い独身男性ウソン(カン・ハヌル)は念願のマイホームを手に入れたが、ローン返済のため正業のほかにアルバイトをしてカツカツの生計を立てていた その上、彼は睡眠も十分にとれないほど謎の騒音に悩まされていたが、下の階の住人にウソンが騒音の犯人だと疑われたことから、ウソンは犯人を突き止めるべく行動を開始する やがて、すぐ上の階の住人ジノ(ソ・ヒョヌ)が一緒に犯人探しに加わる 一方、ウソンは莫大な借金を1日でも早く返済するため同僚の誘いに乗りビットコイン投資を始める 順調に利益が上がっていたが、犯人に仕立て上げられ警察に逮捕されたことから、売買取引に失敗してすべてを失う 2人の推理により最上階に住む大家”が、家賃の支払いが滞っている住人を追い出そうとして、騒音問題をでっち上げたのではないかという疑念が浮上する 果たして騒音の真犯人は誰で、どういう理由で騒音問題を起こしたのか

この映画で描いているのは、単なる騒音トラブルではありません 韓国における住宅事情、特に急激に上昇する不動産価格と、それに伴う住宅ローンの重圧が根幹に横たわっています ソウルなどの都市部で不動産価格が高騰し、若い世代や中間層が住宅購入に苦労し、ローンの返済のため生活を切り詰めながらの生活を強いられているという現実があります

しかし、これは韓国に限った問題ではありません 日本においても東京など大都市圏での不動産価格の高騰があり、今やマンションから億ションの時代に移ったと言われています 昨日(7月25日)付の日経朝刊は「中古マンション価格最高 6月東京23区2か月連続で1億円超」という見出しで、「東京カンテイの調査によると、東京23区の中古マンションの6月の平均希望売り出し価格は前月比2.4%高の70平米あたり1億333万円になった」と報じています 中古でさえこの有様です 今住んでいるマンションは築30年になりますが、メールボックスには毎日のように「お部屋を売りませんか?」「無料査定します」などのチラシが入っています 実際、ここ2~3年の間に部屋を売却して出て行った居住者が複数います 個人的なことを言えば、東京圏のコンサート会場にドア・トゥ・ドアで1時間以内で行ける現在のマンションを売る気はありません

話を戻します 本作はスリラーサスペンスとしてとても面白かったです 「楽して金儲けをしよう」と思っても、そう簡単には上手くいかない、という教訓もありました

         

今日からミューザ川崎の”熱い”夏「フェスタ サマーミューザ」が始まります   今日はジョナサン・ノット ✕ 東京交響楽団の「オープニングコンサート」を聴きに行きます

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角野隼人斗とジャンマルク・ルイサダ  師弟対談 ~ 朝日新聞の記事から / 松下龍之介著「一次元の挿し木」を読む ~ なぜ200年前の人骨と現代の少女のDNAが一致したのか?

2025年07月25日 00時03分32秒 | 日記

25日(金)。「北海道では38度を超える地域もあるでしょう」という天気予報をよそに、昨日朝、娘は高校時代の仲良しグループで2泊3日の北海道旅行に出発しました 「お土産は何がいい?」と訊かれたので、「食べ物なら何でもいいよ」と答えておきました 北海道限定「サッポロCLASSIC」ロング缶半ダースか、「白い恋人」1箱か・・・楽しみに待つことにします そんなわけで、夕食作りはしばらくお休みしようと思います 料理をしない人にはわからないかもしれませんが、台所って火を使うので結構 暑くなるんです

ということで、わが家に来てから今日で3846日目を迎え、ロシアのウクライナへの進攻をめぐり、両国が23日、トルコのイスタンブールで直接協議に臨み、ウクライナ側は8月末までの首脳会談の実現を提案したが、ロシア側は「ゼロからの議論のために会うのは無意味だ」として、ウクライナに事実上の降伏を求める姿勢に変化はなく、協議の進展はなかった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

   

   プーチンロシアは 戦闘を続け 出来る限りウクライナの領土を奪うことしか考えてない

         

昨日の朝日新聞夕刊に「師弟の旋律 互いに照らす 角野隼人斗とジャンマルク・ルイサダ  12月共演」という見出しによる吉田純子編集委員の記事が載っていました パリのルイサダと滞在先のドイツにいる角野によるオンライン対談を紹介しています 2人はそれぞれの演奏について美点を語り合っていますが、興味深い対話がありました

「映画を愛するルイサダは、ショパンのバラード第2番のレッスンで、『小津安二郎の”東京物語”を観なさい』と角野に助言したことがある 『小津は当代最高の映画監督です。あれだけ動きも飾りもない画面で、人間の根源的な痛みや残酷な本質を、ほんのわずかなカメラの動きで伝えることができる 同じことが、角野くんならできるはずだと思ったんです』。角野は『カメラワークをミニマルにすることで、それぞれの人物が生きてくる。映画を観てからは、何かを表現しようとするのではなく、シンプルに、ピュアに音楽を届けることを意識するようになりました』と語る」

ルイサダが小津安二郎ファンだったとは初めて知りました しかし、会話の内容のようなことは 出来るようでなかなか出来ないのではないか 最小限の動きで最大限の効果を挙げる・・・言うは易く行うは難し、だと思います それを確かめたい方は、12月25日(木)19時から東京芸術劇場で開催される2人の師弟共演コンサートをお聴きください

         

松下龍之介著「一次元の挿し木」(宝島社文庫)を読み終わりました 松下龍之介は1991年、東京都江戸川区生まれ、茨城県牛久市在住。千葉工業大学大学院工学研究科修士課程修了 現在は機械システム事業を扱う会社で、火力発電所や製鉄所向けの高圧ポンプの設計や技術提案に携わっている 第23回「このミステリーがすごい!」大賞・文庫グランプリを受賞し、本作でデビュー

大学院の博士課程で遺伝子人類学を学ぶ青年、七瀬遥(はるか)は幼い頃に父を亡くし、10代の頃に母親が再婚したため義父の連れ子だった紫陽(しはる)と兄妹関係となる 2人は成長するにつれ家族以上の愛情で結ばれていくが、4年前の豪雨の日に紫陽が失踪する それから悠はメンタルに不調をきたし、抗不安薬を常備する日常を送るようになっていた ある時、研究室に送られてきたインドのヒマラヤ山中ルーブクンド湖で発見された200年前の人骨をDNA鑑定にかけると、失踪した紫陽のものと一致した あり得ない鑑定結果を担当教授の石見崎に相談しようと彼の自宅を訪ねると、石見崎は何者かに殺害されていた さらに古人骨を発掘した調査員も襲われ、研究室から古人骨も盗まれてしまう 石見崎の葬儀の時、唯(ゆい)と名乗る女性が遥に声を掛けてきた。故人の姪だという彼女は、石見崎の娘で車椅子生活を送っている真理がいなくなったという 2人はそれぞれの謎を探るため協力し合うことに決める 調査を進めるうちに分かってきたのは、24年前、インドのルーブクンド湖で人骨を入手した悠の義父・七瀬京一と石見崎教授、そして分子生物学の権威・仙波佳代子が密かに何かを研究していたということだった その研究とは何か? そして、そのことが200年前の人骨と紫陽のDNAが一致したことにどうつながるのか

語り手(登場人物)が次々と代わり、時間も過去に遡ったりして、小説としてはかなり入り組んだストーリー展開になっているのに、比較的スムーズに流れが掴めるミステリーでした   謎が謎を呼ぶ、巧みなストーリー展開は とても新人作家に出来る”技”ではないと思います

紫陽、唯、真理ーこの3人の女性の正体とそれぞれの関係だけを取り上げても、最後には「ああ、そうだったのか」と感心させられます そしてタイトルにある「挿し木」とはそういうことだったのか、と納得します

一気読み必至の面白さです 広くお薦めします

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香坂鮪著「どうせそろそろ死ぬんだし」(宝島社文庫)を読む ~ 自然死か、殺人か? / ロシアの指揮者ゲルギエフのイタリア公演中止 / 「ライト・クラシックコンサート 」のチケットを取る

2025年07月24日 00時04分06秒 | 日記

24日(木)。22日付の朝日新聞朝刊によると、ロシアの指揮者ゲルギエフ氏が出演を予定していたイタリア南部のコンサートが中止になりました 記事を超略すると次の通りです

「イタリア南部のナポリ郊外にあるカゼルタ宮殿で開催される音楽祭に出演が予定されていた、ロシアの世界的指揮者ワレリー・ゲルギエフ氏の27日のコンサートが中止になった ゲルギエフ氏はウクライナ侵攻を進めるロシアのプーチン大統領の支持者として知られ、イタリアの文化相やロシアの反政権派らが反対する事態になっていた コンサートには地元州政府が招待しており、主催者側は『考えが異なる人との対話を維持するためだ』と説明していたという しかし、イタリア文化相が『ロシアのプロパガンダになる』との懸念を表明。昨年2月に死亡したロシアの反政権指導者アレクセイ・ナワルヌイ氏の妻ユリアさんも『戦争とプーチン政権の犯罪』を正当化する試みだとして反対していた ゲルギエフ氏は侵攻への批判を表明しなかったとして、首席指揮者を務めていたドイツのミュンヘン・フィルを解雇されるなど、欧米の音楽舞台から事実上追放されていた 同氏はマリインスキー劇場の芸術監督兼総裁を務めるほか、全面侵攻後の2023年には、ボリショイ劇場の総裁にも任命された。ロシアメディアによると、昨年は中国や中東で活動したという

この記事を読んで思い浮かべたのは、NHK交響楽団の客演指揮者としても知られるロシア連邦・北オセチア出身の指揮者トゥガン・ソヒエフ(1977年生まれ)です サンクトペテルブルク音楽院で研鑽を積み、ベルリン・ドイツ交響楽団首席指揮者、ボリショイ劇場音楽監督、フランスのトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団音楽監督などを歴任しました 2022年のロシアのウクライナ侵攻を受け、「ヨーロッパでロシア音楽・芸術家が”キャンセル文化”の犠牲になっていること」「愛するロシアの音楽家たちとフランスの音楽家たちのどちらかを選ばなければならないという不可能な選択を迫られたこと」を理由に、ボリショイ劇場とトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の音楽監督を辞任しました

この2人の音楽家の違いはどこにあるのか? ゲルギエフはプーチンとの関係を断ち切ることが出来なかった そのため、ソヒエフが辞任したボリショイ劇場の音楽監督の地位を手に入れることができた。しかし、活動の場はロシア連邦の内部、中国、中東などに限られる。イタリアでのコンサートは中止になった

一方、トゥガン・ソヒエフはウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、フィルハーモニア管、シュターツカペレ・ドレスデンといったヨーロッパ諸国の一流のオーケストラに客演し、シカゴ響、フィラデルフィア管、ニューヨーク・フィル、ボストン響といったアメリカの一流オーケストラ、日本ではN響に定期的に客演しています

プーチンロシアがウクライナに侵攻していなければ、2人の指揮者は現在とは異なる道を歩んでいたことでしょう 芸術家は政治と無関係に存在することはできません

ということで、わが家に来てから今日で3845日目を迎え、ロシア下院が22日、「過激派」の関連サイトをインターネットで検索して閲覧した場合などに、罰金を科す法案を賛成多数で可決したことに伴い、上院を通過し、プーチン大統領の署名後、施行される  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

反プーチン政権勢力などが過激派と見做されるようだ  検索・閲覧するだけで罰金! 流石はロシア

         

昨日、夕食に「蒸しじゃが タラコバター」「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」「シメジの味噌汁」を作りました 「蒸しじゃが~」は久しぶりに作りましたが、簡単で美味しかったです

         

9月23日(火・祝)15時から東京オペラシティコンサートホールで開かれる「ライト・クラシックコンサート ~ 愛と冒険のクラシック音楽」のチケットを取りました プログラムは①グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲、②ドニゼッティ:歌劇「愛の妙薬」から前奏曲、二重唱、③プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」からソロ、二重唱、④メンデルスゾーン「真夏の夜の夢」から「結婚行進曲」、⑤プッチーニ:歌劇「妖精ヴィッリ」より「夜の宴」、⑥コスマ「枯葉」、⑦マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲、⑧グリーグ「ペール・ギュント」より「朝」「山の魔王の宮殿にて」、⑨バーンスタイン「ウエストサイド・ストーリー」より「マリア」「トゥナイト」「いつかどこかで」、⑩デバルト:映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」より「彼こそが海賊」、⑪ジョン・ウィリアムズ:映画「インディ・ジョーンズ」より「レイダース・マーチ」です 出演はテノール独唱=宮里直樹、ソプラノ独唱=砂田愛梨、オルガン=高橋博子、管弦楽=東京フィル、指揮=角田鋼亮です

これは砂田愛梨のソプラノを聴くためにチケットを取ったようなものです   実力者・宮里直樹との二重唱もあるし、申し分ありません

         

香坂鮪著「どうせそろそろ死ぬんだし」(宝島社文庫)を読み終わりました 香坂鮪(こうさか まぐろ)は1990年熊本県生まれ。大阪府在住。現在、循環器を専門とする特定機能病院に勤務。第23回「このミステリーがすごい!大賞・文庫グランプリ」を受賞し、本作でデビュー

探偵業を営む七隈昴は、余命宣告された人々が集う交流会「かげろう会」のゲストとして、助手の薬院律とともに山奥の別荘に招かれる 二人は交流会の参加者たちと食事をし、親交を深める ところが翌朝、参加者の一人・記者の賀茂慶太が不審な死を遂げる 自然死か、殺人か?・・・殺人であれば、なぜ余命わずかな人間を殺したのか?? 七瀬たちは死因の調査を始めるが、やがて事の真相が明らかになる

この作品は、殺人を扱っているミステリーなのに どこか明るい雰囲気に満ちています    それは著者特有のユーモア精神に溢れているからです ユーモア・ミステリー小説といえば「謎解きはディナーのあとで」で有名な東川篤哉が真っ先に頭に浮かびますが、最初から読者を笑わせる目的をもって書かれている東川作品と違い、香坂作品は”何気に”笑わされている自分に気がつくといった”控えめな"ユーモア精神に徹しています

ストーリーとしては、2人目の殺人事件が起こった時は、「他のミステリーと同じように、やっぱり連続殺人事件なんだな」と思いましたが、ところがどっこい、そういう単純なストーリーではありませんでした それこそ、「あっと驚く どんでん返し」が待っています よくよく考えれば、余命いくばくかの人間をわざわざ殺す者はいないよね、と思います ミステリーなので結末を書くわけにはいきませんが、「してやられた」と思うこと必至です

本書がデビュー作とはとても思えないほど面白く、ページをめくる手が止まりませんでした 最後の1行で思わずニヤリとしてしまいました 広くお薦めします

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Netflixで1億4000万回以上視聴されたフィリップ・バランティー二監督「アドレセンス」を観る ~ 英国で殺人の罪に問われた10代の少年の姿を描いたテレビドラマ

2025年07月23日 00時01分02秒 | 日記

23日(水)。わが家に来てから今日で3844日目を迎え、トランプ米大統領はプロフットボールNFLのコマンダーズに対し、先住民を意味する従来の球団名「レッドスキンズ」に戻さない限り、新スタジアム建設を停止させる可能性があると自身の交流サイト(SNS)で警告した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

  

  トランプって 何にでも口出しして 自分の名前を後世に残そうとするよね  強権主義者の鏡だ

         

Netflixで1億4000万回以上視聴されたというスティーブン・グレアム&ジャック・ソーン脚本、フィリップ・バランティー二監督「アドレセンス」(全4話)を観ました

このドラマを観ようと思ったのは、7月20日付日経朝刊のコラム「名作コンシェルジュ ドラマ」でこの作品を絶賛していて、興味をもったからです

このドラマは近年、英国で10代によるナイフを使った死傷事件が多発していることを背景に製作がスタートした作品です タイトルの「アドレセンス(Adolescence)」は「思春期」という意味です 全4話の内訳は第1話=65分、第2話=51分、第3話=52分、第4話=60分の合計3時間48分です

ある日の早朝。郊外で暮らすある一家の自宅に武器を持った警察隊が突入し、13歳の少年ジェイミー・ミラー(オーウェン・クーパー)を殺人容疑で逮捕する ジェイミーと同じ学校の女子生徒ケイティ・レナードが駐車場で刺されて死体で発見された事件の容疑者としてだった ジェイミーは、自分は殺していないと主張するが、ルーク・バルコム警部(アシュリー・ウォルターズ)は決定的な証拠映像をジェイミーと父・エディ(スティーヴン・グレアム)に見せつける 果たしてジェイミーは本当に彼女を殺害したのか そうだとすれば動機は何か

【以下ネタバレ注意】

犯行動機が把握できない中で浮かび上がってくるのは、「80対20の法則」です これは一般的に言われる8対2の法則ではなく、「80%の女性は20%の男性に惹かれる」というもので、それは男性における「インセル=非モテ・童貞野郎」に繋がります また、「ミソジニー=女性嫌悪」や「マノスフィア=男性優位思想」という言葉も登場します つまり、ジェイミーは男性優位思想に浸る一方で「女性に興味があるが、相手にされない」という理不尽な怒りをNSNの中で募らせていくが、ケイティからは「インセル」を意味する絵文字で軽蔑されたため、殺害におよんだのです

一方、父親はジェイミーをスポーツを通して「男らしく」育ててきたつもりでしたが、ジェイミーにはそれが苦痛でした 息子は部屋に閉じこもるようになります 同じ家に住んでいながら、部屋に閉じこもってSNSの世界に没頭する息子が何を考えているのか全く分からない 父親は「きちんと育ててきたつもりなのに、息子は罪を犯した。どうすれば良かったのか」と自問しますが、もう手遅れです SNS時代の親子関係の難しさが凝縮されているように思います

さて、この作品の大きな特徴は、各話ともワンカットで撮影されているということです かつて、「カメラを止めるな」という傑作映画がありましたが、あの上を行っている撮影技術が使われています 普通のドラマでは複数のカットを編集して繋げることで筋道やテーマが鮮明になります しかし、「ワンカット」つまり1台のカメラを長回しして約1時間の間カメラを止めずに撮影するやり方は前代未聞です 途中ノンカットなので失敗が許されないため、演技する方も観る方も緊張感が半端ありません

信じられないと驚いたのは「エピソード2」のラストです いつの間にかカメラは地上を離れ空から下界を映し出しています いったいどうやって撮影したのか??? 後でネットで「裏話」を観たらドローンを使っていることが分かりました

もう一つの大きな特徴は、ジェイミー役のオーウェン・クーパー、父親エディ役のスティーヴン・グレアム(脚本も担当)、ルーク・バルコム警部役のアシュリー・ウォルターズをはじめすべての俳優の演技がリアルで、現在進行形のノンフィクションを観ているような感じがしました

この作品は、英国の議会でも話題になり、スターマー首相は英国全土の中等学校で無料視聴できるようにしたとのことです

Netflixに加入されている方は、是非ご覧ください 観る価値のある作品です

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新交響楽団第270回演奏会 ~ 芥川也寸志生誕100年映像音楽特集を聴く:坂入健司郎の指揮で「赤穂浪士」テーマ音楽、映画音楽組曲「八甲田山」ほか

2025年07月22日 00時14分09秒 | 日記

22日(火)。わが家に来てから今日で3843日目を迎え、韓国の尹前大統領の夫人による不正疑惑を捜査する特別検察官は、世界平和統一家庭連合(いわゆる統一教会)の韓鶴子総裁が、夫人へ資金を提供するため教団の金を横領したとみて捜査していると韓国メディアが報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

日本で悪事がバレて信者への返金騒ぎになったから 地元韓国の政権を取り込もうと企てたわけか

         

3時のおやつです モコタロ焼きではありません。悪しからず

         

昨日、夕食に「豚の冷シャブ」と「舞茸の味噌汁」を作りました 夏のスタミナ維持には豚肉が良いようです

          

昨日、東京国際フォーラム ホールC で「新交響楽団第270回演奏会 ~ 芥川也寸志生誕100年映像音楽特集」を聴きました   前日のコンサートに続いて芥川也寸志の作品です 新交響楽団は昨日の公演で演奏された芥川也寸志「交響管絃楽のための前奏曲」(1947年)を初演したアマチュア・オーケストラです プログラムは①芥川也寸志「赤穂浪士」テーマ音楽、②坂田晃一「おしん」「おんな太閤記」「いのち」「春日局」、③武満徹「オーケストラのための波の盆」、④芥川也寸志:映画音楽 組曲「八甲田山」、⑤レブエルタス:組曲「マヤ族の夜」、⑥伊福部昭「SF交響ファンタジー第1番」です   指揮は坂入健司郎です

坂入健司郎は慶応義塾大学経済学部卒業。指揮を三河正典、山本七雄の各氏に師事。2008年に東京ユヴェントス・フィルハーモニーを結成 2023年8月、読売日響と「三大交響曲」で共演、24年5月にはN響と共演した

新響が用意してくれた席は1階11列28番、センターブロック右通路側です いつも希望通りの席を用意していただきありがたく思っています

オケは14型で 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの新響の並び コンマスは堀内真美さんです

1曲目は芥川也寸志「赤穂浪士」テーマ音楽です NHk大河ドラマ「赤穂浪士」は大河第2作で、1964年1月~同12月に全52回が放送されました

坂入の指揮で演奏に入りますが、鞭(板ムチ)のビシッという厳しい打ち込みの連続が、討ち入りの厳しさを想起させます 漠然とですが、中学時代にテレビで観ていた記憶があります 同じメロディーが繰り返される「オスティナート」の特徴が聴き取れます

ここから髙森美咲さん(打楽器奏者)が坂入氏とともに進行役を務めることになります

次は坂田晃一作曲による4曲(「おしん」「おんな太閤記」「いのち」「春日局」)です 坂田氏は1942年東京生まれ。東京藝大器楽部中退。作曲・指揮を山本直純に師事し、アシスタントを努めながら商業音楽のあらゆるジャンルの音楽を手がける 朝ドラ、大河ドラマの音楽のほか「家政婦は見た」「もしもピアノが弾けたなら」などの作曲も手掛けています その坂田氏が新響のチェロ奏者としてステージに上がっていることを知り、驚きました プログラム冊子に坂田氏は「音楽を純粋に楽しむためにはアマチュアであることが絶対条件であると、遥か昔に職業音楽家として歩み始めてすぐに気が付いてしまった オーディションを受けて、なんとか受け入れてもらった 入団後9年が経ち、一団員として”音楽を純粋に”楽しんでいる」と書いています

髙森さんのインタビューに、坂田氏は「作曲家が自分の作品をオーケストラの一員として演奏するのは極めて珍しいと思います 大変レアな経験だと思うので、楽しんで演奏したいと思います」と語り、満場の拍手を浴びました

坂入氏の説明によると、演奏する4つの作品の共通点は、女性が逞しく生きていく姿を描いている点です

「おしん」は1983年4月から84年3月までNHKで放送された橋田壽賀子原作・脚本による朝ドラ第31作です 1984年11月に記録した、日本のテレビドラマ史上での最高視聴率62.9%という記録はいまだに破られていません

「おんな太閤記」は1981年放送の大河ドラマ第19作で、主演は佐久間良子です

「いのち」は1986年放送の大河ドラマ第24作で、主演は三田佳子です

「春日局」は1989年放送の大河ドラマ第27作で、主演は大原麗子です

すべてテレビで観たわけではありませんが、どこか懐かしさを感じながら聴きました 「いのち」における堀内コンマスのヴァイオリン・ソロは素晴らしい演奏でした

次の曲は武満徹「オーケストラのための波の盆」です これは明治期にハワイ・マウイ島に渡った日系移民1世を主人公とする、倉本聰脚本、実相寺昭雄監督による95分のテレビドラマです 組曲は①波の盆、②美沙のテーマ、③色褪せた手紙、④夜の影、⑤終曲の5曲から成ります

坂入氏が「音楽にはリズム、メロディ、ハーモニーと3要素がありますが、この曲はハーモニーが美しい作品です」と解説していましたが、まさにその通りの弦楽を中心とするアンサンブルが美しい曲でした

前半最後の曲は、芥川也寸志:映画音楽 組曲「八甲田山」です この映画は新田次郎の小説「八甲田山 死の彷徨」を原作としています 日露戦争を目前にした1902年1月、極寒地での激戦に備え、八甲田山で行われた日本陸軍雪中行軍演習において199名の死者を出した「八甲田山雪中行軍遭難事件」を題材にしています この映画は1977年に公開されましたが、「八つ墓村」の音楽とともに1978年第1回 日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞しました    第1曲「八甲田山」(タイトル)、第2曲「徳島隊  山に向かう」、第3曲「棺桶の神田大尉」、第4曲「終焉」の4曲から成ります

坂入の指揮で演奏に入りますが、全体的にスケールが大きく重厚感があり、また時折現われる抒情的な音楽が印象的でした

プログラム後半の1曲目はレブエルタス:組曲「マヤ族の夜」です この曲はメキシコの作曲家シルベストレ・レブエルタス(1899-1940)が、1939年に公開された映像作品につけた音楽です この日の演奏は、作曲者の死後、メキシコの作曲家・指揮者ホセ・イベス・リマントールが1959年に編曲した版によります 髙森美咲さんの解説によると、「なんとリマントールは、映画音楽をそのまま抜粋するのではなく打楽器やら特殊楽器やらを『爆盛り』して、組曲として再構成したのである(よくやった!)。リマントール版によって増えた民族楽器たちに、打楽器パートは頭を悩ませる(もとい、ワクワクする)ことになる」ということです これは大変なことになりそうです

演奏前に坂入氏は「私はブルックナーとかマーラーの指揮者というイメージが強いと思いますが、実は南米の音楽が大好きで、このレブエルタスの作品も大好きです」と語っていました

曲は第1楽章「マヤ族の夜」、第2楽章「祭りの夜」、第3楽章「ユカタンの夜」、第4楽章「魔術の夜」から構成されています

坂入氏は「レブエルタスは”メキシコのストラヴィンスキー”と呼ばれるほどエキサイティングな作品を作曲しましたが、この曲はある意味ストラヴィンスキー以上にエキセントリックです 打楽器奏者が15人も出演します。ほら貝も出てきます」と語りました

坂入の指揮で演奏に入りますが、髙森美咲さんの言葉で言えば「本演奏会最大のどんちゃん騒ぎが、始まる」です

とくに最後の楽章のフィナーレは、金管・木管群が咆哮、大規模編成による打楽器群が炸裂、弦楽器群が渾身の演奏を展開し、ストラヴィンスキーの「春の祭典」も真っ青の「狂喜乱舞」「阿鼻叫喚」「放歌高吟」「七転八倒」「無理難題」「強行突破」の世界が繰り広げられました 演奏者の皆さま、お疲れさまでした

最後の曲は芥川也寸志の師匠・伊福部昭「SF交響ファンタジー第1番」です 映画「ゴジラ」は1954年に第1作が公開されて以来、今なお「シン・ゴジラ」「ゴジラ ー1.0」などが製作されヒットを続けています その音楽を作ったのが伊福部昭です 「SF交響ファンタジー第1番」は「ゴジラ」のメインテーマから始まり、「キングコング対ゴジラ」、「フランケンシュタイン対地底怪獣」、「宇宙大戦争」などの音楽が使われ、メドレーで演奏されます

坂入の指揮で演奏に入りますが、演奏を聴きながら子どもの頃に観た「ゴジラ」「キングコング対ゴジラ」や、最近観た「ゴジラ ー1.0」などのシーンを思い出していました

坂入指揮新響は渾身の演奏で聴衆を魅了しました この曲は何回聴いてもワクワクドキドキで、まったく飽きません

満場の拍手とブラボーの嵐がステージに押し寄せ、カーテンコールが繰り返されました 芥川也寸志が創設した新交響楽団は、メンバーこそ入れ替わってきたとはいえ、「オスティナート」の伝統が息づいています その新響の演奏で芥川也寸志と師匠・伊福部昭の音楽を聴く喜びは他に代えがたいものがあります

坂入健司郎の指揮も良かったし、新響の渾身の演奏も素晴らしかった 髙森美咲さんの進行役も(もちろん演奏も)良かったです 素晴らしいコンサートでした これからも維持会員として新響を応援していきます

    

            高いところから見る景色はいいもんだなあ

          コンマスお疲れ様でした おっと女性の場合はコンミスだった

          気持ちのいい演奏だった 打ち上げの生ビールが目に浮かぶ

指揮棒を振り過ぎて腕が痛くなっちゃった これからはタクトはやめてアイ・コンタクトにしよう

       それじゃあ またどこかでお会いしましょう お元気で!

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「芥川也寸志 生誕100年記念コンサート」で「交響管絃楽のための音楽」ほかを聴く ~ 藤岡幸夫 ✕ オーケストラ・トリプティーク ✕ 生誕100年記念合唱団

2025年07月21日 00時01分05秒 | 日記

21日(月・休)。昨日は参議院議員選挙の投票日だったので、コンサートに行く前に 近くの小学校の投票所で投票してきました 投票する時から、翌日の新聞各紙の第1面の大見出しが頭に浮かびましたが、今このブログをご覧になっている段階では大勢が判明していることでしょう

ということで、わが家に来てから今日で3842日目を迎え、モバイルバッテリーの発火事故が相次いでいることを受け、中国の空港で6月末、新規格の認証マークがついていないモバイルバッテリーの国内線への持ち込みが突如禁止となり、混乱が起きている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

昨日 山手線の車内でモバイルバッテリーの発火事故があって  ご主人さまも迷惑を被ったんだよ

         

昨日、北とぴあ「さくらホール」で「芥川也寸志  生誕100年記念コンサート」を聴きました JR王子駅近くの「北とぴあ」は、自宅から徒歩+都電で約20分、コンサート会場の中で一番近い位置にあります

コンサートはオール芥川也寸志プログラムで、①交響管絃楽のための前奏曲、②交響管絃楽のための音楽、③交響三章(トリ二タ・シンフォニカ)」、④日扇聖人奉讃歌「いのち」、⑤映画版組曲「八墓村」、⑥交響組曲「東京」より第4楽章「アレグロ・オスティナート」です 演奏は管弦楽=オーケストラ・トリプティーク、合唱=生誕100年記念合唱団、指揮=藤岡幸夫です

全自由席なので1階センターブロックT列18番、左通路側席を押さえました 会場はほぼ満席です 5月26日に東京オペラシティで開かれた「伊福部昭 総進撃」公演の時もそうだったのですが、彼の弟子・芥川也寸志の本公演でも、客層は男性比率が極めて高く、男8:女2くらいの割合ではなかったかと思われます

オーケストラ・トリプティークは日本の作曲家を専門に演奏するオーケストラとして、プロ奏者により2012年に結成されました 「トリプティーク」は「三連画」のことですが、前衛・近現代音楽・映像音楽という3本の柱をもって活動するオーケストラを表しています

ステージ上には複数の集音マイクが林立していますが、事前に「本公演は録音しているので、スマホ等の電源は切るように」との協力依頼がありました 多分CD化して売るのでしょう また、企画・西氏から「芥川は滝野川(現在の北区田端)で7月12日(8日前が生誕100年)に生まれ、指揮を執る藤岡幸夫氏も北区の出身である そして、本日の会場が北区の北とぴあである」という説明があり、本日の公演が北区と切り離せないことを強調しました

オケは 左から第1ヴァイオリン(8)、第2ヴァイオリン(6)、ヴィオラ(4)、チェロ(4)、その後ろにコントラバス(4)という変則8型編成を採ります 下手にはピアノ、ハープがスタンバイします。打楽器奏者4名が全員女性というのは珍しいのではないかと思いました コンマスは三宅政弘です

1曲目は「交響管絃楽のための前奏曲」です この曲は芥川也寸志(1925-1989)が1947年に東京音楽学校の卒業作品として作曲、作曲者の死後、1990年1月20日に山田一雄指揮新交響楽団によって初演されました プロのオケによる演奏は、本公演が初演となります 曲はアレグロ ⇒ アンダンテ ⇒ アンダンテ ⇒ アレグロ ⇒ プレストとギアがチェンジされヒートアップしていく構成となっています

藤岡の指揮で演奏に入りますが、若き日の芥川の作品ではあるものの、終盤は「オスティナート」で締めるんだな、と思いました

2曲目は「交響管絃楽のための音楽」です この曲は1950年に、NHK放送50周年記念のコンクールで團伊玖磨と並んで特賞を受賞した作品です 第1楽章「アンダンティーノ」、第2楽章「アレグロ」の2楽章から成ります

演奏では第1楽章のイングリッシュ・ホルンの抒情的な独奏が素晴らしかった 第2楽章こそ芥川の音楽を象徴する「オスティナート」です 推進力に満ちたアグレッシブな演奏が展開しますが、ティンパニの活躍が目覚ましい

3曲目は「交響三章(トリ二タ・シンフォニカ)」です この曲は東京音楽学校研究科時代の1948年に作曲した作品です 第1楽章「カプリチオ:アレグロ」、第2楽章「ニンネレェラ/子守歌:アンダンテ」、第3楽章フィナーレ:アレグロ」の3楽章から成ります

第1楽章では、芥川が幼少時に聴いていたストラヴィンスキーの音楽や、青年期に学んだショスタコーヴィチの音楽が形を変えて現れます 第2楽章ではオーボエのソロが素晴らしかった 第3楽章は、結局「オスティナート」です やはり芥川の音楽の本質は師匠・伊福部昭譲りの「オスティナート」だと言えると思います

プログラム後半の1曲目は日扇聖人奉讃歌「いのち」です この曲は1888年になかにし礼の詩により作曲した作品です ステージの上手と下手に分かれて、男女混声合唱50数名がスタンバイします

藤岡の指揮で演奏に入りますが、合唱団により152回も唱えられる「何無妙法蓮華経」の迫力に圧倒されます

2曲目は映画版組曲「八墓村」です この曲は野村芳太郎監督映画「八墓村」の音楽として1977に作曲した作品です 曲は①メインタイトル、②鐙武者 ~ 父の記憶、③惨劇:32人殺し、④青い鬼火の淵(道行のテーマ)、⑤呪われた血の終焉(落武者のテーマ)」、⑥エンディングの6曲から構成されています

藤岡の指揮で演奏に入りますが、この曲ではさすがにオスティナートは影を潜め、映画音楽としての流麗な音楽が展開します

最後の曲は交響組曲「東京」より第4楽章「アレグロ・オスティナート」です この曲は1986年に生まれ故郷「東京」の讃歌として作曲した作品です

藤岡の指揮で演奏に入りますが、ルンバのリズムが刻まれウキウキした音楽が展開します 変則的なオスティナートと言えなくもない音楽です 芥川はこういう音楽も書いていたのか、と意外に思いました

コンサートで、必ずと言って良いほど日本人の作曲家の作品を取り上げる藤岡幸夫の取り組みは素晴らしいと思います 首席客演指揮者を務める東京シティ・フィルでは伊福部昭、芥川也寸志ほか日本人の作品を何回も聴きました

満場の拍手とブラボーが飛び交うなか、カーテンコールが繰り返されました 藤岡氏の指揮もオーケストラ・トリプティークの演奏も、プロに徹した素晴らしいパフォーマンスでした

16時10分頃終演したので、池袋で買い物をするため、王子から京浜東北線で田端まで出て、山手線に乗り換えようと思ったら、駅の構内アナウンスで「16時11分頃、新宿 ~ 新大久保駅間で車内でスマホのモバイルバッテリーから発火があり、そのため乗客が線路内に立ち入ったため、山手線の内回り・外回りとも運転を見合わせています」と言っています    しばらく田端駅で待ちましたが、まったく動く気配が見えず埒があかないので、また京浜東北線で王子まで戻り、都電に乗り換えました     都電も振り替え客で混雑していて、1つ電車を見送りました    ギュウギュウ詰めの電車で大塚駅まで出て、そこで買い物を済ませて、再び都電で自宅の最寄りの停車場まで戻りました コンサート帰りにこんな目に遭うなんて 想像も出来ませんでした

         

今日は東京国際フォーラム・ホールCに新交響楽団「第270回演奏会」を聴きに行きます

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ジョナサン・ノット ✕ ガリーナ・チェプラコワ ✕ ロバート・ルイス ✕ マティアス・ウィンクラー ✕ 東響コーラス ✕ 東京少年少女合唱隊 ✕ 東京交響楽団でブリテン「戦争レクイエム」を聴く

2025年07月20日 00時16分58秒 | 日記

20日(日)。わが家に来てから今日で3841日目を迎え、トランプ米大統領は18日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が17日に報じた記事(トランプ氏が2003年に未成年人身取引罪などで起訴された米実業家ジェフリー・エプスタイン氏に自身の署名が入った「下品な手紙」を送ったと指摘する内容)で名誉を傷つけられたなどとして、100億ドル(約1兆4800億円)超の損害賠償を求める訴訟をフロリダ州の連邦地裁に起こした  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

トランプはここ数日間  WSJに記事を掲載しないよう交渉してきたという 火のない所に煙は立たぬ

         

昨日は「土用の丑の日」だったので、人並みに「鰻重」をいただきました 次回はぼほぼ1年後だと思います

         

昨日、ミューザ川崎シンフォニーホールで東京交響楽団「第101回 川崎定期演奏会」を聴きました    東響はサントリーホールでの定期会員ですが、21日の定期が新交響楽団のコンサートとダブったことから、東響を振り替えました    プログラムはブリテン「戦争レクイエム」です   出演は、ソプラノ独唱=ガリーナ・チェプラコワ、テノール独唱= ロバート・ルイス、バリトン独唱=マティアス・ウィンクラー、合唱=東響コーラス、児童合唱=東京少年少女合唱隊、指揮=ジョナサン・ノットです

ジョナサン・ノットのインタビュー記事によると、子どものころ 少年合唱団で「戦争レクイエム」を歌ったことがあるそうで、また これまで1度だけこの曲を指揮したことがあるとのことです

   

ブリテン「戦争レクイエム」はベンジャミン・ブリテン(1913-1976)が第二次世界大戦中にドイツ軍の爆撃で破壊されたコヴェントリーのセント・ミカエル大聖堂の復興の献堂式で演奏するために委嘱され 1961年4月から62年1月にかけて作曲、1962年5月30日にコヴェントリーでブリテンの指揮により初演されました

作品のスコアの巻頭には英国の詩人ウィルフレッド・オーウェン(1893-1918)の詩の一節「私の主題は戦争であり、戦争の悲哀である。死は悲哀の中にある・・・。今日、詩人にできるのは警告することだけだ」という言葉が記されています 作品全体の構成は、ラテン語の「レクイエム」をベースにしています 第1曲「レクイエム・エテルナム」、第2曲「ディエス・イレ」、第3曲「オッフェルトリウム」、第4曲「サンクトウス」、第5曲「アニュス・デイ」、第6曲「リベラ・メ」の6曲です 各曲にはオーウェンの詩による歌曲が挿入されます ラテン語の典礼文はソプラノ独唱と合唱とオーケストラにより演奏されます 一方、オーウェンの詩は、兵士の声を代弁するテノールとバリトンの独唱により英語で歌われ、本体から独立した室内オーケストラ(12名)が伴奏します これに加えて、チェンバーオルガンの伴奏を伴う少年合唱が舞台から離れた場所(本公演では3階上手のドアの外側)で歌われます

振り替え後の席は2CB6列14番、左ブロックの左側通路から2つ目です ミューザのホールは好きですが、どうも2CBブロックの席は分かりずらくて迷ってしまいました

P席に男女同数のコーラス計80数名がスタンバイします 次いでオーケストラが入場し配置に着きます 弦楽器は14型で 左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置を採り、さらにその上手に室内オケ12名(小林壱成はじめ弦楽トップ奏者5名+フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、ハープ、ティンパニ)が控えます コンマスはグレヴ・ニキティンです

ノットとテノール、バリトンが入場し配置に着きます ソプラノは合唱の下手側の上方にスタンバイします 少年合唱は3階上手のドアの外で控えますが、客席からは見えません

ソリストのガリーナ・チェプラコワはロシア出身のソプラノ、ロバート・ルイスは英国ウェールズ出身のテノール、マティアス・ウィンクラーはドイツ・ミュンヘン出身のバリトンです この国籍には大きな意味があります ブリテンは、自身のパートナーであるテノール歌手のピーター・ピアーズ(英国)、親しい友人だったバリトンのディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ(ドイツ)、そしてソプラノ歌手ガリーナ・ヴィシネフスカヤ(ロシア)の3人を念頭に作曲を進めました そこには、大戦中に敵国として戦った3か国の歌手が集うことで、作品を和解のレクイエムとしたい、という意図が込められていたのです 本公演に当たり、ジョナサン・ノットは、ブリテンの意図を汲んで3か国から歌手を招聘したのです

ノットに選ばれた歌手陣は総じて絶好調でした

ガリーナ・チェプラコワはリリカルな歌唱で聴衆を魅了しました

ロバート・ルイスは良く通るテノールで存在感を示しました

マティアス・ウィンクラーは艶のある低音の魅力を発揮しました

合唱の東響コーラスは、「サンクトゥス」を中心に 力強い大迫力の合唱を披露しました 何より全員が暗譜で最後まで歌いきる実力を持っていることに驚きます

児童合唱の東京少年少女合唱隊は、透明感のある無垢なコーラスを聴かせてくれました

東京交響楽団は今期で最終シーズンを迎えるジョナサン・ノットの卓越した統率力のもと、歌手・合唱に寄り添いながらブリテンの祈りを歌い上げました

最後の「リベラ・メ」では合唱とオケにより「怒りの日」の恐怖が表現されたあと、戦闘の中で命を落としたイギリス兵とドイツ兵とが出会い、「俺は君に殺された敵だよ」「さあ、我々も眠ろう」という会話が交わされ、追悼の鐘が鳴らされ「アーメン」の祈りとともに全曲を締めくくります 「戦争レクイエム」の初演から63年が経過した現在の世界。今なおウクライナや中東をはじめ世界で戦争が絶えることがありません そうした中で、ジョナサン・ノットがこの曲を取り上げた意味を考えています

         

今日は北とぴあに「芥川也寸志  生誕100年記念コンサート」を聴きに行きます

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ドーリック弦楽四重奏団のチケットを取る(10/31 浜離宮朝日ホール) / 佐藤厚志著「荒地の家族」を読む ~ 2011年3月11日の東日本大震災で被災した一人の男の物語

2025年07月19日 00時25分58秒 | 日記

19日(土)。気象庁は18日、関東地方と北陸地方、東北地方の南部で梅雨明けしたものとみられると発表しました そこで一句

「関東は 梅雨入り前から すでに夏」

「日本では 夏冬二季制 導入へ」字余り

おそまつ

話は変わりますが、10月31日(金)19時から浜離宮朝日ホールで開かれる「ドーリック弦楽四重奏団」のチケットを取りました プログラムは①メンデルスゾーン「弦楽四重奏曲第1番」、②ヤナーチェク「弦楽四重奏曲第1番”クロイツェル・ソナタ”」、③ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第10番”ハープ”」です

このコンサートのチケットを取ろうと思ったのは、一つはメンデルスゾーンとベートーヴェンの作品が入っていたから、もう一つは数年前にコンサートの予習のために購入した同クァルテットのショーソン「ピアノ、ヴァイオリンと弦楽四重奏のためのコンセール」のCDの演奏がとても素晴らしかったからです

このCDを録音した当時(2013年)は4人全員が男性奏者でしたが、その後チェロを除く3人が女性奏者に交代したようです そうはいうもののイギリスの名門ドーリックSQですから、伝統を受け継いでいるでしょう

ということで、わが家に来てから今日で3840日目を迎え、トランプ米大統領は16日、自身のSNSで、米国内で販売するコカ・コーラの甘味料に「本物のサトウキビ糖」を使うことでコカ・コーラと合意したと発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

米国内のサトウキビの主要産地はトランプ氏の地元フロリダ州  これが何を意味するかお解りですね

         

昨日、夕食に隔週金曜日のローテにより「鶏のガーリックチーズ煮、スパゲティ添え」を作りました 今回もとても美味しくできました

         

佐藤厚志著「荒地の家族」(新潮文庫)を読み終わりました 佐藤厚志は1982年宮城県仙台市生まれ。東北学院大学文学部英文科学科卒業。2017年「蛇沼」で新潮新人賞を受賞しデビュー 20年「境界の円居」で仙台短編文学賞大賞を、23年「荒地の家族」で芥川賞を受賞

40歳の植木職人・坂井祐治は、十数年前の東日本大震災によって全ての仕事道具を波にさらわれ、その2年後には妻・晴海をインフルエンザの高熱で喪う その後、息子・啓太を連れて、百貨店勤務の知加子と再婚するが、彼女は赤ん坊を流産し、「思っていた生活と違う」と言い 2人を置いて出て行ってしまう 祐治は辛いことを忘れるため、自分を追い込み肉体を痛めつけながら仕事に没頭する 息子との関係はギクシャクしている 津波対策で防潮堤が出来たが、元の生活は二度と戻らない なぜあの人は死に、自分は生き残ったのか・・・祐治はそう自問しながら彷徨い続ける

この小説を読んでいると、3.11大震災と東電の原発事故により、家を流され、家族を失い、県外での避難生活を余儀なくされた人々の苦悩が、これでもかというほど突き刺さってきます 著者は次のように書きます

「海や空を見て苦悩を小さく感じるどころか、むしろいかに自分が虫けらと変わらず、この世で火花のように刹那に存在する取るに足らない命かという事実をこれでもかと痛感させられ、頭が狂いそうになる 怒ったり、悲しんだりしたところでどうにもならない災厄が耐え難いほどに多すぎて、右にも左にもいけず、ただ立ち尽くすほかない日が続いた 穴があった。どれだけ土をかぶせてもその穴は埋まらなかった。底が見えず、地獄まで続いている。飛び込んでしまえば楽だという囁きを聞きながら、祐治は無駄と知りながら土をかぶせ、穴を埋めようとした。それは無限に続くと思われた

こういう心境は、実際に人生を変えるほどの大震災や大事件を経験した者でなければ分からないものかもしれません それでも、人間には想像力もあれば創造力もあります

巻末に「大地とつながる肉体」という標題で作家の小川洋子さんが解説を書いていますが、本書の本質を突いた素晴らしい読後感が披露されています 本文ともども読み応えがあります 広くお薦めします

         

今日はミューザ川崎に東京交響楽団「第101回川崎定期演奏会」を聴きに行きます 21日(月)のサントリーホールでの定期演奏会が他公演とダブったため、東響の方を振り替えました

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チョン・ミン ✕ 神尾真由子 ✕ 東京フィルでチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」&「交響曲第6番”悲愴”」を聴く ~ 第1020回 サントリー定期演奏会

2025年07月18日 00時03分59秒 | 日記

18日(金)。わが家に来てから今日で3839日目を迎え、北欧フィンランドで15日、ロシアとベラルーシの国民による不動産購入を禁止する法律が施行されたが、フィンランドのハッカネン国防相は同日、SNSで「フィンランドの安全保障を強化し、あらゆる影響力工作に備えるものだ」と強調した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

   

   ロシアは主権国家を侵略して領土を拡張する国だから 一般国民も油断できないね

         

昨日、夕食に「豚バラ肉の大葉ロール」「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」「大根の味噌汁」を作りました いつもと異なるレシピ(ポン酢醤油を使用)で作りましたが、美味しくできました

         

昨夜、サントリーホールで東京フィル「第1020回 サントリー定期演奏会」を聴きました プログラムは①チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35」、②同「交響曲第6番 ロ短調 作品74 ”悲愴”」です 演奏は①のヴァイオリン独奏=神尾真由子、指揮=チョン・ミンです

チョン・ミンは江陵市交響楽団音楽監督、2015年より東京フィルのアソシエイト・コンダクターを務める 世界的指揮者チョン・ミョンフンの子息と知ったのはつい最近のことです

オケは14型で 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの東京フィルの並び コンマスは三浦章宏です

1曲目はチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35」です この曲はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)が1878年に作曲、レオポルド・アウアーに初演を依頼しましたが、「演奏困難」として拒否されたため、アドルフ・ブロツキーに依頼、1881年12月4日にウィーンで初演されました 第1楽章「アレグロ・モデラート ~ モデラート・アッサイ」、第2楽章「カンツォネッタ:アンダンテ」、第3楽章「フィナーレ:アレグロ・ヴィヴァチッシモ」の3楽章から成ります

ヴァイオリン独奏の神尾真由子は2007年の第13回チャイコフスキー国際コンクールで優勝し、世界中の注目を集めた 世界各国のオーケストラと共演を重ねる一方、東京音楽大学教授として後進の指導に当たっている

チョン・ミンの指揮で第1楽章に入りますが、極めてゆったりしたテンポで演奏が進みます やがて神尾のヴァイオリンが第1主題を奏でますが、じっくりと歌うような濃厚な演奏が展開します これをロシア的情緒というのだろうか 演歌に譬えれば「こぶしが回った」演奏と言えるかもしれません 神尾の演奏は表情づけが豊かで思わず引き込まれます 第2楽章では美しいヴィブラートによるカンタービレが会場に響き渡りました 第3楽章ではオケとの丁々発止のやり取りによりアグレッシブな演奏が繰り広げられ、圧巻のフィナーレを飾りました

満場の拍手とブラボーが飛び交うなか、カーテンコールが繰り返されました 神尾はパガニーニ「24のカプリース」より第5番(イ短調)を、超絶技巧を駆使して眼にも止まらぬ超高速で一気に弾き切り、聴衆を唖然とさせました 神尾の演奏はいつ聴いても凄いと思います 単に演奏技術が優れているだけでなく、音楽が豊かに息づいています

プログラム後半はチャイコフスキー「交響曲第6番 ロ短調 作品74 ”悲愴”」です この曲は1893年に作曲、同年10月28日にペテルブルクで初演されました 第1楽章「アダージョ ~ アレグロ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アレグロ・コン・グラツィア」、第3楽章「アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「フィナーレ:アダージョ・ラメントーソ」の4楽章から成ります

チョン・ミンの指揮で第1楽章に入ります 低弦に導かれて、ファゴットが”絶望的”とでも言うべき音楽を奏でます この演奏が素晴らしかった 中盤でクライマックスが築き上げられますが、その後の”情念のうねり”とでも言えるようなアグレッシブな演奏が印象的でした 第2楽章のワルツを経て、第3楽章は勇ましい行進曲ですが、チャイコフスキーはなぜ、この絶望的とも言える交響曲に喜びに満ちた行進曲を登場させたのか? それは次の第4楽章「アダージョ・ラメントーソ」の絶望的な悲しみを一層際立たせるためです 弦楽器の”慟哭”にホルンの息の長い旋律が呼応します 低弦の音が静かに鳴り終わり、しじまが訪れますが、しばらくチョン・ミンはタクトを降ろしませんでした 初演の9日後にコレラで急逝したチャイコフスキーに哀悼の意を捧げていたのか・・・長く感じましたが、実際には短かったのでしょう タクトが降ろされると、待ってましたとばかりに満場の拍手とブラボーがステージに押し寄せました

演奏を振り返ってみると、チョン・ミンの指揮は情念を爆発させるようなところは父親譲りだな、と思いました

ところで、カーテンコールの時に、チョン・ミンが楽員の譜面台に触れて、その譜面台が倒れて最前列のチェロ奏者の楽器に当たってしまいました チェリストはさかんにチェロを気にしていましたが、大丈夫だろうか・・・コンサートは最後まで何が起こるか分かりません

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フランシス・フォード・コッポラ監督「メガロポリス」を観る ~ 「構想40年、巨匠コッポラが人生をかけた一大叙事詩」が謳い文句だが・・・

2025年07月17日 00時07分36秒 | 日記

17日(木)。わが家に来てから今日で3838日目を迎え、「ウクライナ・ポスト」紙は「ウクライナ情報機関によれば、ロシアは今年、中国人民解放軍の訓練に協力し、ウクライナ侵攻の中で身に着けたノウハウを伝授する見込みである」と報じたと  いうニュースを見て感想を述べるモコタロです

プーチンロシアは 中国だけでなく 北朝鮮軍にも 侵略のノウハウを伝授しているのは 間違いない

         

昨日、夕食に「真鯛のアクアパッツァ」「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」「シメジの味噌汁」を作りました アクアパッツァのアサリは大きめのにしたので、食べ応えがありました

         

昨日、グランド・シネマ・サンシャイン池袋でフランシス・フォード・コッポラ監督による2024年製作アメリカ映画「メガロポリス」(138分)を観ました

21世紀のアメリカの大都市ニューローマでは、富裕層と貧困層の格差が社会問題化していた 新都市メガロポリスの開発を進めようとする天才建築家カエサル・カティリナ(アダム・ドライバー)は、財政難のなかで利権に固執する新市長フランクリン・キケロ(ジャンカルロ・エスポジート)と対立する さらに一族の後継を狙うクローディオ・ブルケル(シャイア・ラブーフ)の策謀にも巻き込まれ、カエサルは絶体絶命の窮地に陥る

この映画は、コッポラ監督がH.G.ウェルズ原作の映画「来るべき世界」に着想を得て、アメリカをローマ帝国に見立てた大都市ニューローマを舞台に、理想の新都市メガロポリスを通じて未来への希望を描いた作品です 1980年代から脚本を構想し、2001年には撮影準備を進めていたが、9.11同時多発テロの影響で中断、そのまま頓挫の危機に陥ったが、2021年にコッポラ監督が私財1億2000万ドルを投じて製作を再始動させ、2024年についに完成させた大作です

「構想40年、巨匠コッポラが人生をかけた一大叙事詩」が謳い文句ですが、果たしてそれだけの膨大な時間と莫大な経費をかけて完成しただけの価値があるのか

SFXを駆使して未来都市と人々の行動を描こうとしていますが、先端技術に頼り過ぎて、監督が伝えたいことがストレートに伝わってこないもどかしさを感じました カエサルは時間を止めることが出来る特殊能力を持っていますが、時間を止めることによって何かが起こるかといえば、何も起こらないのです このこと一つ取ってみても、監督はいったい何が言いたいのかがさっぱり分からないのです これがあの大傑作「地獄の黙示録」を撮ったコッポラの作品だろうか、と疑問に思ってしまいます

この作品に限らず、巨額な製作費をかけ SFXを駆使して製作したハリウッド映画は、映画本来の魅力・面白さを失っているように思います

ところで、終盤の暴力シーンでベートーヴェン「交響曲第7番」の第2楽章「アレグレット」の葬送行進曲が流れてきたのにはビックリしました 「地獄の黙示録」ではワーグナーの「ワルキューレの騎行」が使われていましたが、「メガロポリス」ではベートーヴェンの第7番というわけです

期待が大きかっただけに、残念な感想になってしまいました

    

         

今日はサントリーホールに東京フィル「第1020回 サントリー 定期シリーズ公演」を聴きに行きます

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