今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

コンパクトPEN系をやっておきますの巻

2022年07月09日 19時00分00秒 | ブログ

修理のご依頼は夏枯れ状態ですので9月のカメラ市に向けてコンパクト系PENをやっています。特に大きな出来事はありません。PEN-EE2は裏蓋が蝶番式となり、より使いやすくはなっていますが、遮光用のモルトが多用されています。それが加水分解で溶けてベトベトになり、果ては黒塗装を侵してしまいます。元は同じ石油ですからね。ふぅ、まずは手間の掛かる除去作業です。

裏蓋はコストダウンのため、一般的な製法の2枚重ねではなく、ペラペラな1枚物になっています。そのモルトが接する端部の塗装が侵されています。

 

パトローネ部分も厳重な遮光対策がされていますね。すべて除去清掃をした上で貼り替えます。

 

EE精度はセレンが生きている個体でも1~2段程度は低下しています。セレンの起電能力だけでなく、メーターの磁束減少も原因です。

 

これも多い。PEN系は後玉が弱いです。2枚貼り合わせのバルサムが良くありません。貼り合わせ面に空気層が出来るものや、この個体のように曇りが発生するものがあります。バルサム貼り直しについては研究するとして、今回は良好な部品と交換します。

これはPEN-D3 #4093XXと1968年8月製と思われる後期の個体です。よく見るとメーターの樹脂ガラスが欠落しています。通常は裏側から接着するのが普通ですが、なぜかD系は表から接着をしています。内側にガラス厚みを収容するスペースが無かったのでしょう。よって、無理なエポキシ接着を組立作業者に強いています。ストック部品から調達して再接着をしておきます。

D系もやはり後玉が問題です。この個体のようにシャッター羽根の前後にカビが発生するのはどのシャッターでも同じですので清掃が可能ですが、曇るレンズも多いのです。新種ガラスの採用なども影響があるのでしょうかね。

では、洗浄の上、シャッターを組み立てて行きます。非常に状態の良いシャッターです。

 

後玉はきれいになりました。完成したシャッターにヘリコイド部をドッキングします。

 

洗浄した本体に搭載します。

 

 

この頃になると駒数板下のギヤは黒い樹脂製になっています。不用意に分解するとネジ〇カになりますので注意が必要です。カムは従来のものより角が丸くなってバレルを掛けたようになっています。巻上げフィーリングの改善かと思います。

シャッタースピード用のクリックは中期までのスチールボール式からピン式になっています。組立の容易性を狙ったものか?

 

露出メーターですが、永い間使われなかったものはマイクロスイッチの接点が不良となり、針が振れないか、振れても不安定な症状が出る場合があります。

 

メーター窓を接着します。

 

 

非常に良いコンディションのD3になりました。

 

 

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ペトリ・カラー35のメンテナンスの巻

2022年07月05日 21時10分00秒 | ブログ

台風はどこへ行っちゃったのでしょうか?とにかく良かった。で、あまりやりませんが比較的きれいなペトリ・カラー35ブラックが来ていましたのでメンテナンスをして行きます。良くローライ35のコピーとか言われますけど、コンパクトで沈胴というコンセプトが似ているだけで、全然別物のカメラですね。ローライ35と並べてみると、ペトリカラーが横幅100mmで、ローライ35が95mmというところですかね。

過去にかなり分解修理を受けていますが、それにしてはファインダーがひどく汚れていますので、ここから作業をして行きます。発売は1968年とのことで、この頃はペトリお得意の金コートのハーフミラーではなく、通常のミラーになっていますので蒸着面を拭いても大丈夫でした。

ここは、絞りダイヤル部ですが、ダイヤルの回転を規制する(重くする)ウェーブワッシャーが変ですね。Eリングもスリットに入っていません。良く知りませんが、たぶんウェーブワッシャーはオリジナルではなく、SUSのプレーンワッシャーを折り曲げたものと思われます。それですとバネ性が無いのでEリングかスリットに入らないわけです。修正をしておきます。

露出計の針の動きが接触不良気味になる時があります。普通は緑色のリード線が繋がっていて(メーター作動)接片の中央を押すと青色のリード線の電池の電圧チェック側に接します。緑側の接片が酸化気味で導通不良のようですので接点を磨いておきます。その他、本体上側の劣化したモルトを貼り替えておきます。

問題はシャッターとレンズです。シャッターは、かなりいじられていて、特にガバナー(右側)の摩耗で動きが悪いと見えて、特に低速側がコントロールされずに速く切れてしまいます。しかし、このガバナーはユニット化されていませんので、ネジを緩めるとバラバラになってしまいます。まぁ、洗浄注油をして何とか正常に作動します。

レンズはかなりカビがあります。シャッター羽根の前後がひどいです。

 

 

レンズを分離してカビの清掃をしました。組み立てます。

 

 

カム板を取付けてASA環をリングナットで固定します。

 

 

操作的には右側に集中配置されていて使いやすいと思います。ただし、沈胴ダイヤルは、沈胴から無限位置まで繰り出すのに約15回ぐらい指で送る必要があり、ちょっと、かったるいです。このダイヤル軸は潤滑が切れて使用されている個体が多く、かなりガタが出ているのと、ギヤのバックラッシュが非常に大きいのも気になるところ。硬めのグリスを入れておきます。しかし、PEN-Wのような塗装の劣化は見られませんね。

ペトリもやれば出来るじゃん。と言うようなカメラですが、激しい労働争議が続いた会社では企業力を高めることは出来なかったのかなと思います。写りも非常に良いと評判ですので名機と言って良いのかなぁ・・

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