今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

カレンダー無しのセイコー・ロードマチックを仕上げるの巻

2013年04月14日 20時51分27秒 | インポート

Dscf045002 大阪のご常連さんから、「夏に使えるシンプルな防水時計をご所望」とのことです。そこで、セイコーLM 5601-9000を入手して仕上げることにしました。搭載されている機械は56系で、カレンダー作動がウィークポイントですが、このモデルはカレンダーは省略されていますので心配いりませんね。文字盤は絹目のアラビア数字と個性的なものです。(ご依頼者のご趣味) しかし、中古市場でも、何故かこのモデルは比較的高値になってしまいます。製造は1973年と後期で、ワンピースケースのため、薄く仕上げることが出来ています。

Dscf045201 じつは、少し前から作業をしていましたので、機械の組立画像を消してしまいました。いつもの56系と一緒です。ケースは、軽く研磨してあります。当時のベルトは、画像のようなメッシュベルトが流行りで、薄型タイプには標準で付いていたことが多かったようです。

Dscf046301 テンションリング付きの風防は、右が、この個体についていたもの。左は、現在、入手出来る社外の新品ですが、外径や厚みがかなり大きいようです。

Dscf047402 機械は、タイムグラファーで歩度調整をした後、ケースに収めています。ワンピースケースのため、一度、ケースに収めると、歩度調整は困難(風防を分離する)です。で、風防は、現在では入手困難の純正部品を高い価格で入手してみましたが、外径は社外品とほぼ同じ。高さは、元々付いていたものより高く社外よりは低いというぐあい。元々の風防も正規品ではなかったようです。

Dscf047505 風防の外形は、ケースの内径より大きいため(圧入)ワンピースケースオープナーS-14を使って、外径を絞ってケースに挿入します。(した)

Dscf047602 ベゼルを圧入して完成。ベルトは、夏用なので、モレラートのラバー製をチョイスしました。色をグリーンとしましたが、要するにカーキ色ですね。全数字の薄型モデルなので、ミリタリーの雰囲気となりましたね。


シャッター地板クラックのPEN-S 3.5

2013年04月11日 21時43分08秒 | インポート

Dscf047001 シャッター不調で来たPEN-S 3.5 #1200XXですけどね。点検すると、シャッターの地板にクラックが入っています。これは過去にも何度か経験したことがあります。小型に設計をするため、地板などの強度が足りず、レンズ部分に圧力のストレスを受け続けていたような個体に多い故障です。地板の交換が必要ですが、このシャッターは、長く生産されており、製造時期によって、部品が微妙に変化しており、(組むことは出来ます) 神経質なシャッターですので、別のシャッターを作って交換することにします。

Dscf046903 の部分にストレスが掛かって、クラックが入ってしまいます。

Dscf047101 在庫のシャッターをオーバーホールしています。特に問題はありませんね。

Dscf047201 完成した新しいシャッターユニットを搭載完了です。

Dscf047301 シャッターユニット交換終了です。オーナーさんは、このカメラをカバンに入れて撮影を続けていらっしゃいますので、この個体に対する愛着は非常に強いものがあります。そこで、今回は、心臓部のシャッターユニット交換で復活させました。これからも、愛機として活躍してくれるでしょう。

Dscf047401 少し時間が空きましたので、笹原ペンさんから来ていた、セイコー・チャンピオンをオーバーホールします。ケースはEGP(金めっき)のため、すでに消耗した状態です。機械は、特に問題は無い状態ですので、さっさと超音波洗浄のあと組立てています。

Dscf047501 途中の画像は撮り忘れました。片振りの調整が完全に出来ませんでしたが、まずまず実用精度は出ていると思います。文字盤と針は大人しいサラリーマンタイプですね。金めっきのケースは、11時のラグが内側に1mm曲がっていて、それに合わせてベルトの取り付け幅を詰めてありましたよ。メッシュのベルトはすごいなぁ、良くここまで使ったと思いきや、表面をペーパーで削ったようです。このベルト、汗汚れがしみ込んでおり、何度、超音波洗浄をしても洗浄液が黄色に汚れるのには閉口しました。風防もクラックが多いですが、今回はこのままとします。

Dscf047504 追加で時計が到着しました。セイコー・ゴールドフェザーと言うモデルで、1960年代の薄型高級機になります。25石で、ケースは14Kの金張りです。しかし、残念なことに、ケースはかなり消耗しています。また、文字盤の赤変色ですが、これはメーカーの製造上の問題のようです。機械をオーバーホールしておきました。

Dscf047601

ケースは流石にラグなどの剥離はありませんが、裏側リュウズ部分などは剥離をして、真鍮材が摩滅しています。当時は、薄型が流行していた時代で、シチズンの薄型時計デラックスを抜いて、一番薄い腕時計だったとのことです。ケースの厚みは約7.5mmです。当時は、相当高価な時計だったようですね。文字盤とケースの状態が良ければ、現在でも高値となるモデルです。ジャバラのベルトを付けて完成です。


最近良く来るPEN-S 3.5

2013年04月08日 18時47分12秒 | インポート

Dscf046801 その前にね。スーパーの食玩売り場で、ずっと気になっていた四式重爆「飛龍」を連れて帰りました。食玩にしては、値段が高かったので、見送って来たのですが、残念ながら、その割には、胴体のパーツの合いなどはあまり良く無いのが残念なところ。最近は金型技術が良くて、殆どのモデルで良い出来ですが、このモデルは、一昔前のレベルですね。でも、飛龍のモデルは少ないし、スマートな機体で好きですね。陸軍機でありながら、優れた運動性を見込まれて、雷撃も出来るという機体。陸軍は、一つ前の中島の「呑龍」が対ソ連を仮想敵国とした設計で、重武装ではあっても、見るものが無い性能で、旧式の九七重爆を運用し続けた反省から三菱に試作を命じた機体ですね。重爆はやはり九六陸攻や一式陸攻を設計した三菱が経験豊富です。しかし、呑龍も立川飛行機でも生産されたようで、私の叔父が、購買課で部品を手配していたと聞きました。しかし、すでに制空権を奪われ、練達の搭乗員(陸軍だから操縦者?)も少ない戦争末期の登場は遅すぎた感があります。まぁ、少しぐらい早く出現しても、戦況には影響は無かったわけですけど。YS-11から40年ぶりとなる国産旅客機、三菱のMRJが成功すると良いですね。

Dscf046204 では、はじめましようかね。1966年2月製のPEN-S3.5です。3.5にしては、裏蓋の劣化などが目立つ個体ですよ。分解歴はありますが、シャッターは緩慢な動きをしています。

Dscf046302 特に極端に悪いと言うところは無いですので、UPする内容も無いと思いますが・・トップカバーですが、巻上げ側の吊環部をへこましています。こちら側は珍しいのよ。その衝撃で、駒数ガラスの接着が脱落しています。横のビスは、まだスリ割りビスの頃です。ファインダーも樹脂製のため、接着が外れているか、簡単に剥れてしまいます。

Dscf046402 シャッターユニットは幸い未分解でした。すでにO/Hを終えており、特に問題はありません。本体と裏蓋は洗浄してあります。この裏蓋。ちょっと本体との合いがきつ目ですね。シボ革のOLYMPUS部分が盛り上がっている部分がありますが、これは、リベットの錆膨張したのが原因で、2.8の中頃まての個体に多いのですが、もしかしたら、裏蓋は別の個体のものかも? まぁ、オリジナルということにしておきましょう。

Dscf046601 トップがハーは、吊環を分離したのち、へこみの修正をしてあります。めっきの汚れが目立ちましたので、超音波洗浄をしましたら、梨地の奥にこびり付いた汚れが落ちて、ピカピカになりました。しかし、彫刻文字の色が抜けてしまいました。失礼。入れ直します。最後に駒数ガラスを再接着。

Dscf046501 シャッターユニットから出ているリード線のターミナルは、かなりの確率で半田が剥離しています。研磨をして再半田をしてあります。

Dscf046702 これでメカ部は完成しました。きれいでしょ。

Dscf046901 レンズは前玉に細かなキズありですが、まぁきれいなほうでしょう。シボリリングの動きが異常に硬いので調整。トップカバーをセットして完成です。よくよく見ると、この個体はft機ですね。海外からの里帰りということですね。彫刻文字の色を入れ直してありますが、英字部分が微妙に盛り上がっています。裏を見ると、ドライバーの先のようなもので、叩いたようなキズが多数ありました。しかし、普通あれだけ叩けば、表面がデコボコしてしまうはずですけど、それは無いのです。ちよっとミステリーというか、私には出来ない芸当です。調子は、巻上げは軽く、シャッターも快調です。


何かありそうなPEN-FV

2013年04月06日 21時25分00秒 | インポート

Dscf045103 時計は部品待ちですので、カメラをやります。

PEN-FV #1094XXと、FVでも初期の個体ですね。ご覧のように、リターンミラーが上がったまま固着しています。作動した時も巻上げも異常に重くゴリ付いたようです。セルフタイマーレバーがお辞儀をしていますね。ちょっと変ですね。付属の40mmは分解歴があって、持病のヘリコイドガタが激しいです。何かありそうな予感がしますね。

Dscf045401 トップカバーを分離してみるとね。全反射ミラーは汎用の板から切り出したものがセットされています。しかも、カットの仕方が下手くそなので、すでに割れています。セルフタイマーも変ですね。この頃でしたら、改良前のものと思いますが、改良後のものが付いています。別の個体から交換されたので、レバーの角度が水平でない可能性もあります。

Dscf045202 リターンミラーを応急復帰させて、まずファインダーのピントを確認して見ました。結果は無限遠が出ていませんね。当初は、ミラーの張替えを疑いましたが、どうも、ホルダーごと、他の個体から移植されたようです。腐食があって、交換ご希望ですので、すべて分解をして張り替えることにします。

Dscf045203 分解のために、プリズムを分離しましたが、固着して剥れない。やっと分離しましたが、フレネルレンズが張り付いたまま。正常なら、分離しているハズです。観察すると、上端中央部がスリガラス状が透明になっている部分があります。これは、プリズム(接着剤痕)に化粧プレートを貼るため、接着剤を塗布しますが、その接着剤がマスクとフレネルレンズまで流れて接着をしてしまっています。これは工場での作業ミスです。辛うじて、マスクの視野外となっていて良品となったものか、僅かに見えている可能性もありますね。

Dscf045104 知識のある方が、部品の交換などをして、形だけ仕上げた個体ですね。こんなもんじゃしょうがないでしょ。永くお使いになりたいとのオーナーさんのご希望ですから、最初からやり直して組みますよ。いつものように、全て分解洗浄をしてモルト貼り、巻上げ部から組んで行きます。初期型の巻上げレバーユニットですので、駒数板の軸は先端が雄ねじ(ナット留め)に注意。

Dscf045302 リターンミラーは新品に張替えました。駒数ガラスは、この頃のものは古くて樹脂自体が変質崩壊したものがあって、クラックが入り、駒数文字を読み取りにくくなっていますので、うちのオリジナル部品と交換接着をします。オリジナルは、FTと供用部品のため、切りかきがありますが、FVは必要ありません。

Dscf045402 シャッターユニットのブレーキを組立しています。特に問題は無いのですが、スローガバナーは初期型で、低速が不安定な傾向にありますね。ちょっと厄介・・

Dscf045501 やはり、プリズムとフレネルレンズには接着剤がしみ込んでいます。プリズムは清掃が可能ですが、フレネルレンズはすでに接着剤の溶剤で侵されていますので、清掃は出来ません。やはりマスクから僅かに見えますね。これでよく検査を通ったものですね。抜き取り検査なのでしょうね。

Dscf045701

問題は、ミラーユニットですね。すでに、過去にも修理を試みていますが、2回テンションを掛けられた形跡があります。それによって、テンションが上がらずフリーズし易くなっているようです。最も問題は、巻上げた力を保持するためのロック爪が外れることです。これは磨耗が原因ですね。初期のユニットで使い込まれた個体に多く見られます。全体にヘロヘロな状態なんですね。良品と交換すれば、ピタッと症状は収まるのですが、簡単には交換したくないのです。

Dscf045801 ゆっくりと巻き上げた時は追従するが、早く巻上げるとロックされない。ミラーユニットは、カシメで組まれているため、これ以上は分解が出来ないのです。と言うか、ユニットカメラですから、設計の段階から故障時の対処は新品のユニットに交換することで、分解修理は考慮していないわけです。私は、このカメラで一番の肝はこの部分だと思っています。良くもまぁ考えられた作動は驚嘆します。気がつけば、私のジャンク箱には、ロックせずのユニットが溜まっています。それが全て改良前のユニットでした。概ね23万代付近が、改良後のユニットとの変更時期と思います。細かな部分で改良されていて、シボリレバーを駆動するスプリングの強化や、シャッター作動時のショックを軽減するダンパーなどが改良されています。結局、幾つかの手持ちをテストして見ましたが、確実性を重視して、作動良好な個体からの移植としました。

Dscf046002 全反射ミラーは、汎用ガラスからの切り出しがセットされていましたが、破損をしていますので、今回は純正品を使います。

Dscf046102 これで、メカ部分は完成しました。あとは、外装と小物部品の取付けです。

Dscf046203 最後に、タイマーレバーの角度を調整と付属の40mmも清掃して完了。結局、全反射ミラー、リターンミラー、駒数ガラス、ミラーユニットを交換と大手術となってしまいましたが、巻上げは、当初のフィーリングが劇的に改善して、非常に軽くスムーズになっています。稀少な1967-5月製FVの個体数を維持しましたね。


セイコー・チャンピオン Alpinist をO/Hするの巻

2013年04月05日 10時00分00秒 | インポート

Dscf044501 がたぱしゃさんから腕時計が届きましたよ。ご趣味が山登りですから、セイコー・チャンピオン850 アルピニストと言う防水強化型のケースに入ったモデルですね。1964-7月の製造です。ステンレスモデルもありますが、このモデルは金めっきモデルです。風防内周の部分の劣化が気になりますね。

Dscf044801 ケースの内周は研磨をしてあります。風防は新品が付属して来ましたが、残念ながら寸法が適合しませんので使えません。そこで、かなりヤレた古い風防を必死に研磨してみました。まぁ、そこそこ見られるようになりましたね。

Dscf044701 ケースを仕上げて、機械を分解しましたが・・・ここで問題が発生しましたよ。

Dscf044901 リュウズの抜き差しでクリック感を出す「カンヌキ押エ」という部品の板バネの部分が折れています。古い時計では、ここは金属疲労により折れやすい部分です。これは部品を交換するしかありませんね。

Dscf044902 機械は第二精工舎(亀戸)製の普及機チャンピオンで17石の手巻き式です。機械としては、目だった磨耗や水入りも無かったようです。受けが直線的なのが特徴ですね。

Dscf045101 姿勢差は安定していますので、天真などの磨耗は少ないようです。この頃の機械は、片振りの調整機構がありませんので、直接、ひげゼンマイに触れて調整をして行きます。あとは、不良の交換部品が到着するのを待ちます。

Dscf045901 部品取りとして基礎キャリバーを搭載したフェアウェイが来ました。このモデルは、セイコーの始めてのワンピースケースとのことで、56系と同じように裏蓋がありません。機械の取り出しは風防ベゼルを外して行いますが、細いパッキン一つで防水を確保していますが、ちょっと心もとない感じですね。リュゥズの巻き芯はジョイント式ですので、角度を合わせて機械を取り出します。程度が良かったら、このモデルも貴重なモデルなんですね。

Dscf046001 瞬間的にはこんなデータが出ますけど、完全に安定はしませんね。

Dscf046101 完成した機械をケースに収めて裏蓋を圧入します。

Dscf046201 これで完成です。付属のベルトは、19mm幅で、18mmのラグに無理に取り付けられていました。規格の合ったベルトと交換をされるとのことですから、取り付けないでおきます。