ご常連のINOBOOさんはカメラと腕時計の両方に情熱を持っていらっしゃいます。何やら到着していますが、この後も追って到着するようです。ニコンのF3ファインダーをウエムラスペシャルの仕様にしたいとのこと。時計の左側はセイコー・キングクォーツ9721-8010ですが、このモデルは水晶振動子を2個として精度の向上を図った高級モデル。右側は同じくセイコーの自動巻きモデル6216-9000 ウィークデータ 39石で、発売期間も短いため、現在は稀少なモデルです。これらのメンテナンスをして行きます。
画像を撮り忘れましたので少ないです。製造は1979年で、それまでのクォーツユニットよりも薄く設計されていますので、薄型のドレスウォッチなどにも使われているユニットです。ユニットは注油などのメンテナンスを実施していますが、問題はケースの全体に使用傷が多いこと。そこで、リューターで研磨していますが、単純なデザインではなく、多面にカットされたデザインですので、エッジを殺さないように研磨をして行きます。
研磨洗浄の終ったケースに、メンテナンス済みのユニットを組み込んで完成です。撮影用に仮のベルトを装着したところ。薄型の高級モデルですので、光沢黒のベルトが良く似合いますね。
ニコンF3ファインダーは、チタンカバーの前面プレートを塗装する予定でしたが、裏側に光路の一部を担っている設計のため、金属ではなく、モールド部品であったため、ブラックカバーの個体を生かして、カバーをチタンカバーとすることにします。
清掃を終えたファインダーにチタンカバーを取り付けます。下部の本体取り付け用のゴムダンパーが取り付け部分のボロカクシにもなっていますね。
ゴムダンパーの接着をしてウエムラスペシャルの完成。前面のNikonプレートが樹脂製なのは残念でした。
次は、セイコー・ウィークデーター6216-9000ですが、製造が1966年と古いので、ケースの状態は非常によろしくないですね。実用品として大量生産された時計とはいえ、私の感覚では腕時計は自分の分身のような気がしていて、ここまで傷だらけ、手垢まみれにすることは忍びないと感じるのですが、消耗品として、立派に役目を果したと見るべきでしょうか?
風防も傷だらけなので交換のためベゼルを外しています。画像では、傷が写らないのですが、どうしたら、ここまで傷を着けられるのでしょう?? 取りあえず、超音波洗浄をします。
超音波洗浄をして手垢などの固着した汚れを落としています。ケースの全面に傷が多く、研磨では取り切れない深い傷も何箇所かありますね。
光ってしまって、研磨をした状態がお分かりになるでしょうか?ケース、ベゼルと裏蓋も磨いてあります。裏蓋のイルカマークは以後のモデルとは異なって、可愛らしいデザインが特徴です。ケースがあれだけ傷だらけであって割には、裏蓋は摩滅も殆ど無くきれいなのが不思議です。
オリジナルの風防は傷だらけですね。交換用は社外のヨシダS58を使います。INOBOOさんの懇意にされている時計店さんに1枚だけ残っていたのでラッキーでした。規格寸法は32.25mm(外径)となっていますが、オリジナルを計測すると32.08mm。すでにクラッシュされて小さくなっているのですが、経験的にこの差では無理に圧入すると金属疲労のベゼルが割れてしまう可能性があるため、最小限の寸法詰めをします。
何とか圧入できましたね。形状的にはオリジナルと同じ角の丸いタイプですが、正規はエッジの立ったタイプとの考察もあるようです。
機械のメンテナンスをして行きます。この機械は工場から出たままの未分解です。
この時代は、時計の高級度をはかるのに、使用されている石の数を競うという日本人らしい価値観がありましたね。この機械は、基礎キャリバーの6218Cの35石を改良して39石としたものです。しかし、ホゾなどの使用個数は限られており、画像のように、カレンダー車の部分などにはめ込まれています。オリエントには64石や100石なんて機械も存在します。まぁ、何を競っているんだか・・・
自動巻き機構を取り外した状態。未分解の機械ですので、非常にきれいです。
文字盤の裏側。インデックスは接着などではなく、差し込んでリューターで潰してあります。
文字盤にも種類があるようですが、この文字盤は、防水が完全だったと見えて、まったく劣化のあとがありません。文字盤は時計の顔なので、これは非常にラッキーです。では、機械をケースに入れます。
6218Cの5振動を改良して5.5振動としたロービートの機械です。ゼンマイを巻いて歩度の調整をして行きます。
これで完成です。ケース研磨と風防ガラス交換で、非常に良いコンディションとなっています。当時の発売価格は23,000円ですから、非常に高級なモデルでしたので、現存数は少なく、稀少なモデルとなっています。