久しぶりにキャノネットG-Ⅲです。コンパクトなサイズに、流石キヤノンのモノづくり、機能を凝縮していて、よく出来たカメラだと思います。一家に1台、このカメラがあれば充分でしたでしょうね。片方は露出計不動で、ニコイチで1台仕上げて欲しいとのご希望ですが、両方とも非常にきれいな個体ですから、なんとか両方とも復活させたいと思いますね。
どちらも国内製ですが、まず1台目。こちらの個体の方が製造は後期でよりきれいな個体ですが、露出計が作動しない。電池室を外してみる、電池の液漏れかガスのためにターミナルが激しく腐食しています。
電池室から熱カシメのターミナルを分離してみます。画像は腐食粉をだいたい落としたところ。リード線の半田付けも導通不良となっています。テスターで回路のチェックをしても回路が繋がっていません。
リード線先の基盤の半田付けも腐食して断線しています。リード線の芯線を伝わって、ガスが腐食させるのですね。
少し時間が空きました。2台同時進行でやっているものですから、中々進みません。とにかく、熟成された機構と、あまり軽量化を考慮しない設計で、単純にサイズダウンをしたようなカメラですから、中身が濃いので組立も手間が掛かるのです。キヤノンらしい真面目なものづくりというところでしょうか。ファインダーはガラス面が多いですから、どうしても曇り汚れとなりますね。しかし、ハーフミラーなどは、劣化が少ない個体が多いと思います。きれいに清掃をしておきます。
レンズの前群を分離して清掃をします。結構、基板と接片が多いですね。鏡胴に振動を与えるとAで露出計の針が瞬間的に作動しない不具合があります。接片と基板のパターンとの接触が緩いのです。シャッターユニットは、通常の逆向きにセットされる設計のため、分解は後ろ側からになります。
いつも思うのですが、G-ⅢQLプレートは接着されていて、カバーを外す時のビスが半分隠れているのですね。ちょっと外してくれれば、プレートを剥がさなくても良いものを・・・材質は、ソフトメタルなので、曲げたり傷をつけないように慎重に分離します。
2台目の電池室には液漏れはないと思いましたが、リード線の先端の半田付けは腐食をしていました。画像は、新しいリード線を半田付けしたところ。
このカメラのモルト交換は厄介です。現存の個体は、途中で古いモルトの清掃を受けていない場合、ダイカスト本体の塗装も確実に侵していて、ダイカストも腐食で粉になっています。しかも溝が深い。これはシコシコ清掃する以外にありません。
裏蓋側も清掃しますが、クイックローディング機構のバネがあって、非常にやり難いのです。
すでにダイカストの腐食で、粉状となったホコリが大量にローディング部に入っていますので時間を掛けて清掃しました。欲しい性能を全て満たした、一家に1台あれば充分というカメラですね。ちょっと重いですけど・・
腐食したターミナルにはんだが乗るようにするには、私の場合は薬品処理ですが、やすりでこするよりは目を配ることが多くなります。中和処理も必要ですし。
それと熱カシメは、カメラではなくスマートホンの電池充電器(電池のみ単独で充電するもの)がない機種の充電器を仕立てるために、使わなくなった電話の電池充電器から改造した時(改造はNGですが個人使用だし多目に見てください。そもそも認定ラベルの番号が存在しない大陸商品ですし…)、熱カシメを切り離し、その電池の接触電極所定の位置に、溶剤で溶かした樹脂を盛って融着させたことがあります。
手法は当然異なるし、私自身の経験の尺度でしか推し量ることはできませんが、「やっつけじゃない丁寧な仕事」を感じます。最近は丁寧な仕事を意識しない人を多く見かけます。
何度かコメントありがとうございます。
画像を見て大変なのはかめおさんが経験者さんだからですね。じっさい、あそこまで腐食していると処置無しです。腐食半田については、同じ困難があって、同様な方法もとりますが、一般の方にはなんのことやら分からないのが作業者の辛いところでしょうか?
良く出来たカメラで、機構がてんこもりの割にはサイズを詰めたので組立しにくいところもあります。今回は2台同時進行なので、大変です。よって、画像UPは出来ないかも・・