今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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TAVANNES 懐中時計を復活させるの巻

2018年11月22日 20時57分31秒 | ブログ

先日、お父様の形見のオメガ・シーマスター・デビルを復活させたバイクのお友達から、今度は祖父様の形見が届きましたよ。不動ですが何とか復活せよとのことです。懐中時計は知識がありませんが、TAVANNES(タバン)は戦前にウォルサムなどと一緒に輸入されたスイスの時計のようです。ケースは金無垢とかではなく、金メッキの普及品ですが、しっかりとした作りです。風防の内側に水滴が付いているように見えましたが、これは内部の油が揮発してガラス面に付いたものでした。

とにかく、古い油で各部が固着しているような状態で、超音波洗浄を数度繰り返して部品を点検していくと・・あら~、丸穴車(右側)の歯が対角で2枚欠損しています。たぶん、角穴車(左)の歯車と受けの間に固着したオイルがあって、回転が重い状態で無理にリューズを巻いて歯に負荷を掛けたのでしょう。このサイズですと歯を植える入れ歯の技術は私にはありませんので、交換用に部品を探すことにします。

幸い、2枚続けて折れていませんので、負荷を掛けなければ巻上げは出来ますので、O/Hはして行きます。懐中時計は腕時計の基本形が大きいだけですので、組立自体は特に問題はありません。目に優しいので助かります。

 

 

サイズが大きいのは楽なのですが、地板に対して受けの嵌合(ピン)が非常に固く、ホゾがホゾ穴に入っているのかが分かり難いので慎重に組みます。

 

 

チラネジ付のテンプはブレゲひげです。これで、恐らく50年ぶりぐらいに動き出すはずです。

 

日ノ裏側はシンプルで、こういうの好き。古い割には摩耗は小鉄車の軸だけで、他の部分は良好です。あまり使い込まれてはおらず、O/Hも1~2回というところでしょう。

 

最初はぐずり気味でしたが、アンクルに注油をしましたら元気に目覚めました。浦島太郎だね。文字盤はホーローで耐久性は後年の作りより丈夫ですが、どうしてもクラックが入りますね。

 

問題は針です。ブレゲ針でもないコブラ針というのかな? 特に長針が激しく錆びていてすでに先端の尖がりが無くなっています。研磨をすると無くなっちゃうかも知れません。

 

研磨をしてブルースチールをやり直しました。お陰で手をやけどしました。この針は中央が極端に細く、先端が太くなっているので、熱の伝導が一定ではないのでブルーの濃度を揃えるのが難しいですね。長針軸部のブルーを磨いてあるのが芸が細かいところ。まぁ、元の状態よりは良いでしょう。

風防に蓋のあるハンターケースはカッコ良いですね。ガラス風防とベゼルの接合面が腐食していて接着で処理するしかないのに、そのベゼルが歪んでいるという困難な状況を何とか克服してケーシング出来ました。しかし、機械留めネジの片方が、太い規格外のネジを強引に締め込んでありました。ワンオーナーなので、やった時計屋さんは分かっています。金メッキを磨いていきます。

 内蓋に映った機械が豪華に見えますね。

 

 

何か真鍮色に見えますが、もっと品の良いゴールド色をしていますよ。14Kかなぁ?、リューズを押すと風防蓋のロックが外れて開きます。

 

う~ん、仕上がって見ると、ホーロー文字盤の白とブルースチール針のコントラストがきれいで、ケースの金が豪華さを更に高めています。当時としては高価な時計だったでしょうね。まずは復活おめでとうございます。丸穴車は部品が入手出来ましたら交換することにします。最近は懐中時計が静かなブームのようで、ムーブがクォーツのものなどは安価に出回っているので、実用としては良いと思いますが、雰囲気を楽しみたければ、やはり当時の機械式だと思いますね。私も欲しくなりました。

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