今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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ニコイチでジョンブリアンを作れの巻

2017年10月10日 19時38分58秒 | ブログ

都内の「遅れて来たペンマニア」さんから久しぶりに来ています。手前のジョンブリアンは以前に部品取りにした残骸なので程度は悪い。そこで、同時期の個体を調達したのでニコイチで1台作れ。とのご指示です。やりますけどね。ニコイチは2台分解をして良いとこ取りをするので倍の工数がかかりますよ。

で、どうするかを検討しましたが、当初はジョンブリアンのボディー(裏蓋)を使ってグレーの部品を移植することを考えました。戸籍が無くなってしまうような組立はなるべくしたくないからです。しかし、流石に残骸で、ボディーと裏蓋の状態が悪いのです。仕方ありませんのでグレーのボディーを使ってジョンブリアンのシボ革を貼ることにしました。こちらも決して良い個体というわけではないのですけどね。程度の悪い通しでどちらがマシかというレベルの低い選択。

裏蓋はグレーを使いますが底部にへこみが・・なるべく修正ということで・・

 

グレーも大概です。駒数カニ目ネジのカニ目の片方が埋まっている。

 

 

ネジがねじ切られていて接着されていました。左ネジを知らずに締め込んでねじ切ったのでしょう。

 

 

この頃の駒数ギヤは対角に2穴が開いていないので分解が非常に困難。特に古いので固く締まっています。スプール軸は使えません。

 

スプロケット軸のナットが外せずに傷だらけにして諦めたようです。三光から初期の個体は工具を掛けるスリットが狭くて開けにくいのは私も一緒です。スリットを太くして奮戦はしたようです。

 

そんなことじゃ開かないんだな。こうなると、このナットは諦めてカニ目を新たに開けて分離するしか方法がありません。

 

駒数ガラスは再接着されていて剥がれていると・・

 

 

シューカバーが分離できず、無理をしてへこませています。

 

 

修復しておきます。

 

 

ファインダーがまた悩ましい。右側の方が樹脂の状態は良いのに大きく変形をしていますね。左側は樹脂が劣化をして白濁しています。

 

仕方がないのでせっせと研磨しました。え~、まだ序盤なのに画像何枚よぉ? あとは端折るしかないかな?

 

でも、そうも行かないんですね。どのくらいの工数を掛けて作業をしているのかが伝わりませんからね。スプールシャフトはなるべく摩耗の少ない方を選択したのですが、これが失敗。例の下側のナットが1つしかないわけですが、シャフトとの嵌合がきついのです。たぶん、図面は一緒で公差の両端なのでしょうけど・・

スプール軸は左側はネジが埋まっているので右側を使う以外にないわけですが、駒数板が入る部分がヤスリ掛けされていますね。これ、偶に見かけるので工場での工作の可能性もあります。理由は分かりません。

 

駒数ギヤは過去に分解をしようと傷にしてありますね。右側を選択します。

 

 

シャッターユニットをO/Hしておきます。

 

 

シャッターユニットを本体にセットして、シンクロターミナルの半田付け後前板を取り付けます。シボ革接着の接着剤は完全に落としてきれいでしょ。

 

駒数ガラスとファインダーのレンズは接着済み。

 

 

遮光紙は新しく作り直したものを接着します。

 

 

PENの初期の駒数針は金色ですね。こちらも程度の良い方を使います。

 

 

これでトップカバー側をドッキングします。

 

 

ツマミとカニ目ネジはグレーの個体にしか付いていなかった訳で、駒数ネジは使えない。ツマミは使えるがメッキが良くない。ということで、手持ちの純正中古から程度の良いものを調達しました。

 

ふぅ、メカ部はやっと出来ましたね。関東地方は季節外れの蒸し暑さで体調も悪化してのどが痛い。風邪かも?? 後はレンズ、裏蓋、シボ革が残っています。

 

パッとジョンブリアンになりました。シボ革は黒革と違って汚れが目立ちやすいので、洗浄をしても完全にはきれいになりませんね。退色もしていますし・・

 

 シャッターダイヤル(カム板)のメッキがくすんでいるので磨いてあります。

 

 

裏蓋を仕上げます。開閉鍵の部品を洗浄してグリス塗布で組み立てます。(ワッシャーが抜けていますけどね)

 

圧板の研磨、モルトを貼って完了です。

 

 

スプールは磨き出してあります。スプロケットナットは交換で、ボディーの傷はタッチアップしました。

 

と言うことでやっと完成しました。ニコイチには若干の抵抗感もあるのは事実ですが、かと言って、2台のジャンクをそのままにしておいて生きるのか? を考えると、1台にまとめても現役復帰で個体数を増やした方が良いとの考えになりつつあります。今回はオーナーさんが心得ていて、非常にシリアル№が近い個体を調達してくださいましたので、例えば工場で、「ここから100台はジョンブリアン仕様で生産します」のような、シボ革以外、部品の仕様に全く差が無かったのも将来の混乱も起きないと思っています。

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