今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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お休みタイムのセイコー・エクストラフラットの巻

2017年10月01日 16時25分06秒 | ブログ

ご依頼の作業が続いていたので、お休みタイムを取っていませんでした。お休みと言っても結局疲れるのでストレス解消というところですけどね。ヤマハ・FS1ですが、オイルシールなどを交換したO/H済みのオイルポンプが付いていたのですが、やはり少しオイルがにじみます。シリンダーのダキツキが続いて、オイルの吐出量も正確か不安なので、ストックしておいたポンプと交換したかったのでした。

結局、キャブレターも取り外した方が交換が楽でした。すでにポンプは交換してアクセルワイヤーとの同調を取ってロックナットを締めます。

 

オイルラインを繋いで、中間に入ったエアーを抜きます。ネジを緩めてオイルのみが出るまで排出してネジを締めます。

 

吐出量の最小ストロークをシックネスゲージで測定します。0.25~0.3mmぐらいが規格だと思いますが、焼付き防止で少しストロークを大きめにしておきます。

 

初期のオイルポンプには、手動でポンプを回せるギヤが付いています。エンジンを掛ける前にオイルを多めに送っておきます。交換が終わって、近くのGSまでガソリンを入れに行きましたら廃業していました。おまけに帰り道でエンジンストール。押して帰りました。原因は、オイルが多めのセッティングで回転を上げなかったためにプラグがかぶったようです。そのプラグは清掃でも回復せず、別のプラグに交換したところ、何事も無かったようにエンジンは掛かりました。2サイクルエンジンは、プラグの突然死があるので、常に予備のプラグを積んでいないと危険です。

で、私の私物のセイコー・エクストラフラットです。全くの不動でおまけにケース(真鍮にクロームメッキ)の裏側は完全に磨滅していて真鍮が緑青に変化していました。マニアさんの手が入っていない使用済みの完全ジャンク。1,000円で入手しました。エクストラフラットは1954年(昭和29年)の発売開始とのことですが、この個体は裏蓋打刻から1957年3月の製造のようです。

デジカメの設定か、光物を撮影するとおかしな画像になります。すみません。機械は亀戸製の新10Bで、戦後の1948年(昭和23年)に登場した機械です。EXTRAFLATはセイコーだけではなく、シチズンなどでも使われているネームのようです。何度かO/Hをしながら使われていた時計でしょうけど、カンヌキの折れや筒車の極端な摩耗などはないようです。

反対側。新10Bは7石、10石、15石が存在するようですが、この個体は残念ながら7石でした。石はテンプ周りに集中していて、輪列には入っていません。詳しいサイトさんによると、エクストラフラットには7石は無いと書かれていましたが、ありますね。但し、途中で機械を入れ替えた可能性もあるので何とも言えません。受けの化粧加工と丸穴車のネジの頭が小さいのは初期の生産のようです。三番車のホゾを締めてあるようです。

汚れが多いので、いつもよりも長く洗浄をしました。

 

 

ストレスの掛かる丸穴車の軸が折れやすいのがこの機械の特徴ですので、S-4グリスを使います。

 

 

香箱もきれいでした。各輪列をセットします。

 

 

この時代のヒゲゼンマイは非常に弱く、受けをつまんでテンプを持ち上げたりすると、そのままヒゲゼンマイが変形をしてしまうので非常に扱いが難しいです。経年劣化なのかは分かりません。スムーズに動いてくれないので、天真の摩耗を疑いましたが、測定すると3.44mmあります。ストックの新品天真は3.40mm。なんだ摩耗していないじゃん。ここからヒゲゼンマイの修正に苦労することになります。ちょっと触ると変形してしまって思うようになりません。しかし、良いトレーニングにはなります。目が見えればの話ですが・・

なんとかヒゲゼンマイを修正していきながら、+25秒、片振り無しまで追い込みました。

 

そもそも、普通の新10型はケースの外径が小さくハマグリ型の頃に、文字盤の直径を大きくして、全体的なバランスで薄く見せた目の錯覚のようなモデルでしょ。ケースは緑青を落とすとこんな状態。銅メッキだけでもしておこうかな? 程度の良い個体はかなり高価になるようですが、働くお父さんの腕で動いていた時計ですから本来の使命を全うした個体という気もします。風防がストックに無いので調達してから再開します。

と、思ったんですけどね。スモセコは秒針の小窓をキャンセルするために長短針を異常にラウンドするように高く曲げてあるものが多くて、この個体もそのような調整になっていました。それによって、高さの低めの風防では、針と風防の内側が接触をしてしまうので少し高さの高い風防をセットしようと思いましたが、よくよく考えたらFLATが売りのモデルですね。では、針と針の間隔をぎりぎりに詰めてなんとかストックの低めの風防を取り付けました。当時のトキライトなどより現在入手可能の風防は肉厚が厚い傾向にあるので、雰囲気を壊し気味となることが多いのですが、やっぱり薄い方で正解だったようです。精度は+30秒/日以内に収まっていて、実用は充分可能です。ちょうど、キヤノンと同じ齢ですね。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/