明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(2316)差別をなくすための「合理的配慮」の拡充と地方自治の可能性(鼎談 河かおる・にしむらしずえ・守田敏也 その2)

2023年04月13日 11時00分00秒 | 明日に向けて(2201~2400)

守田です(20230413 11:00)

前回に続き、滋賀県立大学院准教授でサンタナ学園に関わってきた河かおるさんと、近江八幡市をフィールドにフリースクール「ひとつぶてんとう園」を主宰しているにしむらしずえさん、そして守田敏也で行った鼎談の動画をご紹介します。
後半で「合理的配慮」のこと、地方自治のことに触れられています。サンタナ学園の話から切れ目なく話が続いているのですが、概ね50分ぐらいからご覧になっていただけると良いかと。統一地方選を担うにあたっても大事な点です。ご覧下さい。


差別を止めるため「合理的配慮」の考えを広げる必要がある

今回の鼎談、サンタナ学園のことを軸にじっくり話し合いましたが、河さんは、教育の問題だけでなく、あらゆる差別を包括的に禁止する法律を作れないかと模索しているそうですで、この点についてもお話してくださいました。
実はこれもすでに先例があります。沖縄で作られた条例です。

沖縄県差別のない社会づくり条例 2023年4月1日施行
https://www.pref.okinawa.lg.jp/site/kodomo/heiwadanjo/heiwa/sabetunonaishakaidukurijourei.html

さらに河さんは障害者差別解消法において、すでに「合理的配慮」が必要とされていることが明記されていることを教えて下さいました。
「行政機関等及び事業者に対し、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合に、その実施に伴う負担が過重でないときは、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を行うことを求める」というものです。

もともとこれは国連で採択された「障害者の権利に関する条約」に基づいたもの。

障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)
(Convention on the Rights of Persons with Disabilities)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

実は滋賀県近江八幡市では、この点に学んだ在日コリアンの安徳烈(アンドンリョル)さん(故人)が、この観点を取り上げられました。
河さんも安さんにこの点を教えられ、近江八幡市の多文化共生推進指針に盛り込もうとされたことがあったのだそうで、指針ができています。

近江八幡市多文化共生推進指針 2012年3月
https://www.city.omihachiman.lg.jp/material/files/group/103/tabunkasisin(pdf).pdf

でも河さんが座長として2011年3月に「推進指針(案)」を提出した後、別の座長のもとで検討して2012年3月に策定された推進指針には、残念ながら「合理的配慮」に言及した部分は反映されていなかったのだそうです。
せひこの推進指針をよりよいものにリフレッシュしていく必要がある。そのために安さんや河さんが積み上げてきたことを、近江八幡市でもっと活用していく必要があるし、他の地方自治体でもこの点を注目していただきたいです。


地方行政にこそ大きな可能性が

さらにこうした差別を越えるために、地方行政こそ大きな可能性があることも話し合われました。
いま私たちのまわりにある差別の中で、大きなももの一つが「国籍」による差別です。実はもともとの日本国憲法草案には、基本的人権が、地位や性別、そして国籍でも差別されてはならないと書かれていたのです。
もともと憲法の主語は「国民」ではなくpeople=人民、ないし民衆だったのに、当時の保守層が猛烈に反発して、変えられてしまったのだそうです。

しかし地方自治法では、いまもこの精神が生きているのです。地方自治法が対象としているのはその地域の住民。国籍の規定など入っていない。だから地方行政の方が柔軟に、外国人のさまざまな権利を守ることもできていたりする。
それならばそれぞれの地方行政の場で、もっと差別の障壁をなくし、「合理的配慮」を進めていけばいい。そしてどこかの自治体でできたことをどんどん他の自治体へも広げたらいい。
その点で近江八幡市の「多文化共生推進指針」をブラッシュアップできれば、各地の可能性を開くことにつながります。

このため大事なのは、統一地方選後半で、各地で市民サイドに立つ候補を1人でも多く当選させることです。
近江八幡市で市議選に挑んでいる、にしむらしずえさんへの応援もどうかよろしくお願いします!

ひとつぶてんとう園 ホームページ
https://hitotubutento.wixsite.com/hitotubu-tentoen


#サンタナ学園 #ひとつぶてんとう園 #河かおる #にしむらしずえ #沖縄県差別のない社会づくり条例 #安徳烈 #障害者権利条約 #近江八幡市多文化共生推進指針 #合理的配慮 #統一地方選

ひとつぶてんとう園、オープンデーの動画もご覧下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(2315)子どもたちはみんな幸せに育つ権利がある‐サンタナ学園に触れて (鼎談 河かおる・にしむらしずえ・守田敏也 その1)

2023年04月12日 17時00分00秒 | 明日に向けて(2201~2400)

守田です(20230412 17:00)

サンタナ学園とひとつぶてんとう園の経験から見えてくること

滋賀県立大学院准教授の河かおるさんと、しずえさん、守田敏也で、鼎談し「子どもたちの学ぶ権利に」ついて話しました。その動画をアップします。
後半で地方自治のことにも触れていて、統一地方選を担うにあたっても大事な点を話せたと思っています。その点からもぜひ観ていただきたいです。

河さんは「サンタナ学園」という滋賀県愛荘町の在日ブラジル人の学校を支援しています。まずこの学校を訪問させていただいてから鼎談しました。

この学校を支えるため、河さんが理事の一人となって設立したNPO法人コレジオ・サンタナのHPを示しておきます。
https://sites.google.com/view/nposantana

にしむらしずえさんもフリースクール、ひとつぶてんとう園の代表を務めています。
それぞれの園に通う子どもたちは、当然ながら学ぶ権利を持っていますが、行政からの支援はこれまでまったくありませんでした!

それはおかしい。学ぶ権利は当然守らなければいけないし、何より子どもたちがのびやかに育てない社会なんて貧しすぎます。
ではどうすれば良いのか。そんな点をお話しました。


すこしずつ国も行政も動き出した 

行政もまったく何もしていないのではなくて、この間、多くの方の関わりの中で少しずつ変化してきています。
国は2019年10月から幼児教育・保育についての無償化を決めましたが、ここだけはサンタナ学園も対象になっています。
また滋賀県はヤングケアラーのことでもアンケートを行っています。

2021年、滋賀県が社会福祉協議会に委託して「子ども若者ケアラー実態調査」を実施
https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kosodatekyouiku/kosodate/327438.html

国はさらに「教育機会確保法」を制定し、不登校時の学校以外の学びの場を学校の出席扱いと認める「出席認定」を始めました。
そのことで行政によって差はありますが、フリースクールに子どもが通っている親への支援もはじまりつつあります。
滋賀県でも県議会で意見書が出されています。

滋賀県議会「不登校児童生徒の教育の機会の確保に向けたフリースクール等の在り方検討と経済的支援を求める意見書」2022年12月21日可決
https://www.shigaken-gikai.jp/g07_IkenView.asp?SrchID=869&bunrui=&kword1=&kword2=

でもそれが実際に子どもたちの目線に十分に立っているのかというとさまざまに限界もある。そこをどうしていくのか。何が必要なのか。
この点で、河さんとにしむらさんの話が混じりあいました。

続く

#サンタナ学園 #NPO法人コレジオサンタナ #ひとつぶてんとう園 #河かおる #にしむらしずえ #ブラジル人 #フリースクール #幼児教育保育無償化 #ヤングケアラー #教育機会確保法

ひとつぶてんとう園、オープンデーの動画もご覧下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(2314)六ヶ所再処理工場が最後的に行きづまっている!-やっぱり原発はオワコン(2)

2023年04月09日 10時30分00秒 | 明日に向けて(2201~2400)

守田です(20230409 10:30)

統一地方選前半投開票日になりました。前回に続いて原発がオワコンであることを示します。ぜひ原発反対を訴える候補のたくさんの当選を実現しましょう。

日本原燃がとんでもない審査申請書を提出

前回、プルサーマルの行き詰りについて書き、最後に「こうなると次に来るのは再処理工場の閉鎖です」と書きましたが、その現実性も浮上してきています。
それを象徴するのが、六ケ所再処理工場=使用済み燃料からプルトニウムを取り出す施設の稼働を目指す日本原燃が、間違いだらけのとんでもない審査申請書を提出したこと。

この書類は、工場稼働に必要な審査のためのもので、昨年末に提出されましたが、3月28日の審査会合で原燃自身が大幅に不備があったことを明らかにしました。
約6万ページの申請書のうち、なんと約3100ページで落丁や記載漏れがあったと言うのです。記載がまるまる抜け落ちた落丁が400ページ、記載漏れが800ページ、必要な計算結果の不記入が1000ページ、様式不備が900ページだそうです。

そもそも六ヶ所の再処理工場は1997年に完成する予定が、トラブルを繰り返して、26回も延期しています。
昨年も「年度の上半期に完成」とそれまで宣言していたものの、12月末に「2024年上半期完成」と26回目の延期を行いましたが、その時に提出した申請書がとんでもないものだったというわけです。


東京新聞 2023年4月8日より


六ヶ所再処理工場はオワコン

どうしてこんなことになってしまったのか。東京新聞が記事の中でこう分析しています。
(原因は)「経営層がスケジュールありきで現場の社員に無理な作業を押しつけたことがある。現場は『経営層に言っても、工程は見直されない』『間に合わないことは許されない』ととらえ、不完全な書類がそのまま原子力規制委員会に提出された。」

「間に合わないことは許されない」…現場に無理命じて間違いだらけ申請書 日本原燃・六カ所の再処理工場審査
東京新聞 2023年4月8日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/242807

確かにそれもあるかもですが、問題はもっと根深い。スケジュールよりも、もやは再処理工場を完成させようとすること事態が、無理な押しつけになっていることが現れたのではないでしょうか?
なぜってもはやもんじゅが廃炉になり、プルトニウムを使うMOX燃焼工場も作れていません。唯一の頼みのフランスの同工場も暗礁に乗り上げ、再処理する意味が無くなっている。プルトニウム大量備蓄は禁止だから、やっかいものを生みだすだけです。

このことを一番よく理解しているのは現場の技術者、労働者なのです。岸田政権が「原発推進」と無理な号令をかけても、原発が終わったコンテンツであること、再処理工場もオワコンで、なんの未来もないことを現場はよく知っているのです。
その上、六ケ所再処理工場自身も、26回もトラブル続き。技術的にも完全に行きづまっているわけで、その困難を越えんとするインセンティブなどもはや全くないのです。26回目の延期に関するNHKの記事を示しておきます。

青森 六ヶ所村 使用済み核燃料の再処理工場 26回目の完成延期
NHK NEWSWEB 2022年9月7日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220907/k10013807991000.html


あるのは巨大な危険性だけ、きちんと終わらせなければ

そう考えると、実は現場は、書類の不備を分かっていながら提出したのではとさえ思えてきます。これを裏付ける情報はないですが、しかしそうでもなければこんな大幅な落丁、記載漏れ、計算結果の不記入、様式不備など起こるでしょうか?
少なくとも現場のモチベーションが相当下がっており、仕事に対する誠意など、どんな現場でも必須のものがまったく無くなってしまっていることは明らかです。

それは危機管理意識の低下にもつながっている可能性がある。そもそも26回も稼働が続く中で、6万ページの書類のうち3100ぺージもの不備を生み出す組織が、きちんと危機管理ができているとは思えません。
恐ろしいのは六ヶ所再処理工場には、すでにたくさんの使用済み核燃料が運びこまれていること。軽水炉の事故よりはるかに怖いです。軽水炉は日本の半分を壊滅させかねませんが、再処理工場は北東アジアに壊滅的被害を与える可能性がある。

だからいま、再処理工場はオワコンであることを政府、原子力業界にきちんと認めさせ、即刻再処理工場の廃止に向かい、備蓄した核燃料の安全管理に向かわなければです。
まさにきちんと終わらせることが大事。そのためにも原発反対の声をさらに高めましょう!

再処理工場の事故の恐ろしさについては以下のビデオを入手してご覧下さい。

『カタストロフィ-破滅を防ぐために-』
脚本・監督 池島美紀子

制作 ストップ・ザ・もんじゅ
http://stopthemonju.la.coocan.jp
音楽 坂本龍一「Anger」 さだまさし「防人の詩」
詩の朗読 吉永小百合


以下の動画もご覧下さい。

#原発はオワコン #再処理工場はオワコン #もんじゅ廃炉 #核燃料サイクル破たん #高速増殖炉 #MOX燃料 #審査申請書不備 #六ヶ所村 #再処理工場閉鎖 #原発反対候補の応援を

*****

核と戦争と社会的共通資本に関する研究、取材、執筆をカンパでお支え下さい!
振込先 ゆうちょ銀行 なまえ モリタトシヤ 記号14490 番号22666151
Paypalからもカンパができます。自由に金額設定できます。
https://www.paypal.me/toshikyoto/1000

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(2313)プルサーマルが終わりつつある!-やっぱり原発はオワコン(1)

2023年04月08日 15時30分00秒 | 明日に向けて(2201~2400)

守田です(20230408 15:30)

統一地方選前半最終日になりましたが、原発に関する大事な情報-原発がオワコンであることが次から次に明らかになっていることを示しておきたいです。
ぜひ原発反対を訴える候補を、それぞれの場で押し上げて下さい。


プルサーマルが止まりだした!

この間、僕は原発は終わったコンテンツ=オワコンだと唱えています。
理由の一つは核燃料サイクルが、要となるはずだった高速増殖炉の原型炉=もんじゅが廃炉になり、六ケ所村の「再処理」工場も25年にもわたって稼働延期を続けるなど、完全に破たんしているからです。

それで高速増殖炉で使うはずのプルトニウムとウランをまぜたMOX燃料が行き場を失ったため、通常の軽水炉で使ってしまうおうとなされてきたのが「プルサーマル」でした。日本では玄海3号機、伊方3号機、高浜3,4号機で行われてきました。
ところがそのMOX燃料が足りなくなりだしているのです。玄海は今年11月以降、伊方は来年7月以降の調達のめどが立たず、在庫のある高浜もその先が不透明になっています。

理由は製造を一手に引き受けているフランスのメロックス工場で不良品が多発しているため。プルトニウムとウランが均質に混ざらず、使用するには危険なものができてしまっています。
どのように不具合が発生したのかというと、これまでの設備が老朽化したため建て直した際に、方式を湿式から乾式に変えたためだとか。しかし方法を変えたのは旧来のものに問題があったからに違いありません。要するにMOX燃料製造技術も未完なのです。

なおこの点を毎日新聞大島秀利さんが継続的に取材されていて参考になります。

各電力、プルサーマル燃料確保できず 後引く仏工場の不良品問題
https://mainichi.jp/articles/20230330/k00/00m/040/094000c



核燃料サイクルは終わっている

このことはいよいよ原発の終わりを示しています。なぜなら核燃サイクルが完全に終わりを迎えているからです。
というのはもともと核燃料として使われているウランは自然界のウランの約0.7%しかないウラン235しか核分裂しない。残りの99.3%のウラン238は燃料に使えないのです。

でもこのウラン238に中性子があたるとプルトニウム239ができる。核燃料はウラン235を3~5%に濃縮していますが、残りの約95%のウラン238からプルト二ウムが生まれるのです。
これを使用済み燃料から取りだすのが再処理で、そのプルトニウムとウラン238を混ぜて作るのがMOX燃料。「それを高速増殖炉で使うとプルトニウムを燃やしながらそれ以上のプルトニウムを作れる!」という夢=核燃料サイクルが描かれたのでした。

ところが世界のどこでも商業的に使える高速増殖炉を作れなかった。「増殖する炉」など夢だったのです。それでもどんどん生まれるプルトニウムの消費先にとプルサーマルが考え出されたのですが、それすらもう行き詰まりつつある。
こうなると次に来るのは再処理施設の閉鎖です。なぜってプルトニウムを作りだしても使う先がないから。いやそもそも日本の六ヶ所村再処理工場は、1997年完成予定がもう26年も延びて完成できていません。すでに終わっているのです。



原発推進策は終わっている核産業の生き残りだけのためのもの

この点をみれば、原発推進策など何の展望もないことが分かります。それでもゴリ押しするのは、核産業そのものが終わりを迎えつつあるからです。
とくに日本では新規増設も輸出もできていない。それどころかわずか10基しか稼働できておらず、技術そのものが朽ち果てようとしている。

世界的にも同じことが言えます。それで原子力産業に巣くう人々が延命を画策しています。その真ん中にいるのが核兵器産業=軍需産業です。
このままでは核兵器産業も行き詰ってしまうがゆえに、無理に原子力の「需要」を作りだそうと、気候変動やウクライナ戦争も口実にしています。

でもこの無謀な流れは必ず止めることができる。なぜって原子力はオワコンだから。展望などないから。だから輸出だって全部止められたのです。
原発反対の声を高めましょう。原発反対候補を応援しましょう。さまざまな原発反対行動に取り組みましょう。


なお原発がオワコン!と訴えた動画もご覧下さい。

#原発はオワコン #プルサーマルが止まりだした #もんじゅ廃炉 #核燃料サイクル破たん #高速増殖炉 #MOX燃料 #メロックス工場 #六ヶ所村 #再処理工場閉鎖 #原発反対候補の応援を

*****

核と戦争と社会的共通資本に関する研究、取材、執筆をカンパでお支え下さい!
振込先 ゆうちょ銀行 なまえ モリタトシヤ 記号14490 番号22666151
Paypalからもカンパができます。自由に金額設定できます。
https://www.paypal.me/toshikyoto/1000

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする