ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

笑いと監視社会  アイデア広場 その590

2020-06-15 16:45:56 | 日記


 スノーデンの暴露後、ドイツはアメリカを経由しないで電子メールをやりとりできるようにしたのです。ブラジルもまたアメリカ経由を避けて欧州との直通の海底ケーブル敷設を決定しました。海底ケーブルの敷設主体も、各国の通信会社からグーグル、アマゾンなどの巨大IT企業に変わりつつあります。アメリカのIT企業は、世界の自社データセンターを光ファイバーで結ぶプライベイトネットワークを目指しています。企業が持つビッグデータとA1技術が結びつけば、世界の政治や経済に影響を与えることになります。メールの利用者が誰と連絡をとり、どのような嗜好を持っているか、何を検索しているかの情報が、外国企業にビッグデータとして集まりつつあるわけです。
 ロシアや中国などは、スノーデン事件の以前から、インターネットの国内支配の強化を進めてきました。2011年に、ロシアは中国などと共同で、国連に「情報セキュリテイ行動規範」を提出しました。この行動規範では、「主権の尊重」、「情報通信技術による侵略の禁止」などを掲げています。ロシアや中国は、政治体制の違いとそれぞれの国益により、異なった規範をもっています。ここで言うロシアや中国の「主権」とは、政府による検閲や監視を認めるというものになります。現在はデジタル機器の進歩により、これらの国々における検閲や監視技術が急速に進んでいます。
 過去多くの諜報機関は、情報の取捨選択に失敗してきた歴史があります。膨大な情報を政府や企業が、効率的に整理し分析することは想像以上に難しいのです。情報を多く収集すれば、するほどそれだけ雑音も多く入ってきます。情報機関の老舗であるイギリスの当局者は、「データの大部分は閲覧もせずに破棄されます」と述べています。また、国民に対する検閲や監視が厳しくなると、いろいろな抜け道を考える人たちがでてきます。成熟した国民は、ユーモアや小噺で政権を揶揄する場合があります。そして、成熟した政府は、そのユーモアに一定の理解を示す態度を取ります。未成熟な政府は、ユーモアを政権批判と捉え、取り締まりを強化します。すると、国民のある人々は、当局の検閲で検索されるキーワードに触れない微妙な言葉遊びを始めるのです。検閲で検索されるキーワードに触れない独自な言語が、ユーザーである国民によって作り出され、それが独り歩きしていくわけです。
 ユーモアや笑いは、人々を引き付けます。テレビの定番に、お笑い番組があります。一般的には、健全な番組です。テレビ局は、短い時間でより多くの笑いをとれる生産性の高い芸人を集めます。その生産性の高いお笑い芸人を中心に、番組を制作する傾向があります。芸人は、新しいネタをつくり続けなければ、次の活躍の場は失われます。新しいネタは、高度なアイデアの結晶です。このアイデアを次々に作ることのできる芸人は、どんな分野にでもその才能を発揮できる才人になるかもしれません。この中には、検閲を切り抜けられるような独自の言葉遊びのできる人もいるわけです。
 笑いは、不自然さの発見、あるいは創作から始まります。芸人は、笑いを創作するため常にネタとなる不自然さを見つける観察眼を磨いているのです。先日の新聞に、寄席の風景が載っていました。新型コロナウイルスで自粛されていた寄席が再開され、笑いに飢えている愛好家が命を懸けて通っているようです。その中で「種も仕掛けもない箱から、皆さんの不安をパッと解消するものが出ます」。出たものは、「アベノマスク」でした。日本であれば、笑いで済みます。もし、これを北朝鮮でやれば、最高指導者を侮辱したということで、笑いだけでは済まないでしょう。プロの芸人は、素人なら気づかない当たり前のネタから、不自然さを見つけ出す訓練をしています。みんなと同じ情報を材料にしながら、新しく「考える」力を常に訓練しているともいえます。こんな訓練が、監視や検閲を和らげる道具になれば面白い世の中になります。
確固とした通信設備を所有し、管理していれば、通信情報は守られるという時代は終わったようです。アメリカが、外国公館の傍受を行っていることは周知の事実のようです。アメリカ発着およびアメリカを経由する電話や電子メールの傍受は、可能になってい ました。アメリカを経由する他国の電話や電子メールも、IT協力企業により傍受可能になっていたことも暴露されました。「全ては傍受される可能性がある」ということは、心構えとして間違いではないようです。でも、「全てが傍受されている」ということは、過剰な反応になります。ターゲットにされない限り、通信内容まで探るには無理があります。
 余談ですが、課題に向き合う姿勢があれば、アイデアは次々にでてきます。不思議なもので、ひとつアイデアが出始めると、次から次へと出てくるようになります。質よりも、まずは量を優先して進めます。アイデアは、良い悪いにかかわらず、どんどん書き出して勢いを止めないようにすることが大切です。多く出してから、あとで削るほうが効率はよいのです。大事なことは、課題に向かい合う姿勢を続けることです。考えないところから、アイデアは出てきません。お笑い芸人の方は、あふれる情報から琴線に触れるものを抽出し、それをお笑いに代えて、私たちを楽しませてくれます。感性の豊かな芸人さんがいる限り、監視や検閲は緩やかな制度として推移していくようです。もう少し「鈴本」に通って、笑いを取り戻す必要を痛感しているこのごろです。