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覚醒剤受刑者の治療を考える

2016-10-04 22:16:18 | 日記
覚醒剤受刑者の治療を考える

 覚醒剤取締り法違反で検挙される人は、ここ何十年も毎年1万人を超えています。刑務所の収容人数は、7万人で推移してきました。その7万人のうち、20%が覚醒剤の受刑者です。薬物経験者まで含めると50%にも及んでいます。刑務所の受刑者で最も多い罪は窃盗で、2番目が覚醒剤になります。今回は、覚醒剤の受刑者についてその治療と更生についてトット記者が遠山さんにお話を聞きました。

記者「覚醒剤取締り法違反では有名人が逮捕され、世間に大きな話題を投げかけています。でも、なかなかなくならないようです。覚醒剤で受刑者になった方の特徴を教えて下さい」
遠山「覚醒剤の再犯率は高く、4年以内の再犯率は30%になります。長期服役者の増加現象が、まったく止まっていない原因が覚醒剤の受刑者なのです。薬物使用者が再び刑務所に入る再入率は、近年55%に上昇しています。その多くが、覚醒剤の受刑者なのです。性犯罪の再犯が話題になります。でも、それは3%程度です。覚醒剤はその10倍の30%になっているのです」

記者「『健全な身体に健全な精神が宿る』といわれています。刑務所で糖尿病患者のように規則正しい生活を送ることで、治療の効果を上げることはできないのですか」
遠山「残念ですが、身体訓練や精神の鍛錬では覚醒剤の誘惑を取り払うことはできません。覚醒剤がやめれないのは、依存症によるものです。依存症は、精神や意志の力では防止できません。日本でも、刑事収容施設法により、薬物受刑者に対して『特別改善指導』が義務化されました。現在、日本の全ての刑務所で、薬物受刑者に対して何らかの指導がなされています」

記者「薬物というのは覚醒剤や麻薬などの総称ですよね。薬物対策は、外国ではどうなっているのですか」
遠山「中国では、薬物の取引には、死刑という厳罰で取り組んでいます。フィリピンでは、大統領が代わってから、厳しく薬物取引を取り締まっています。でも、ほとんどの国では、刑罰より治療が優先されていいるのです。先進国の中で、薬物使用によって刑務所に入る国は、日本くらいになっています。EUは、薬物の密輸や密売には重罪で望んでいます。でも、個人の使用に対しては、刑罰より治療を優先しています。薬物使用者に対して、刑罰の厳罰化による再犯防止は効果がないのです。再犯防止には、治療それもグループでの治療が一番効果が上げることも分かっています。薬物依存には、社会復帰を支援するという非刑罰化の立場を取る国が大半です」

記者「覚醒剤の依存症のメカニズムは、どのようなものなのですか」
遠山「覚醒剤を摂取すると、中脳の辺縁系でドーパミンが大量分泌されます。ドーパミンは、意欲とか快感に関連した物質です。ドーパミンの大量放出は、多幸感を得ることができるのです。ところが大量放出後、ドーパミンの枯渇が生じます。ドーパミンの枯渇は、意欲の減退や不安に襲われ、禁断症状を誘発します。覚醒剤の乱用者は、快感を得るためと禁断症状を和らげるために、再度薬物を使用することになります。覚醒剤の問題は、この薬が強力な依存性を持ち、使うごとに精神が犯されていくことにあります」

記者「意志や身体の力では、矯正できないことがわかりました。どのような治療があるのですか」
遠山「薬物依存症において難しいことは、薬をやめることではなく、やめた状態を続けることなのです。薬物をやめる場合、二度と手に出さないと決意するより、とりあえず今日一日使わないようにすることです。薬物依存が進むと、友人は薬物使用者ばかりになります。生活は全て薬物中心に回って動きます。薬物関係の仲間と離れ、自助グループで新しい仲間と付き合う方法が有効です。仲間のいる繁華街に行かないで、その時間は近所を散歩をして過ごすわけです。とにかく、その日一日は、薬を使わないようにする工夫を続けるのです」

記者「覚醒剤の密輸を摘発する方法もあるのではないですか。覚醒剤がなくなれば、覚醒剤を使用することはないのですから」
遠山「どの国も、最初は禁止します。密輸を厳しく取締り、薬物使用者を厳しく処罰する方向で対処するのです。でも、これがことごとく失敗していきます。取締り強化で覚醒剤の供給が減れば、薬の価格は高騰します。高騰しても乱用者は、薬物を求めます。密輸するほうも価格が高騰すれば、利益は莫大になるために、危険を冒してでも供給量を確保し続けます。取締りと密輸のイタチごっこになり、密輸側が勝利という構図が続いたわけです」

記者「確かに依存者が減れば、密輸する方も利益が減ります。覚醒剤使用者が減少することは、密輸組織の利益が減ることになりますね。違法な組織が、弱体化することにも繋がるわけですか」
遠山「覚醒剤の受刑者には、刑務所で罰を与えただけでは、犯罪の連鎖から抜け出すことはできません。覚醒剤の再犯を減らすためには、処罰に加えて、『治療』という新しい仕組みを導入することが求められます。PFI刑務所では、薬物依存離脱指導として、ダルクが開発したプログラムを取り入れています。治療で変えることのできる要因、犯罪の原因になっている要因に的を絞って治療を重点的に行うようにしています」

記者「覚醒剤の再犯防止の難しさが、少し分かりました。新しい治療方法ができて、再犯率が下がるとよいですね」
遠山「はい、新しい治療の萌芽が出てきました。脳科学者とゲーム関係者との協力で画期的治療方法が開発されてきました。現在の脳科学の技術を使えば、人間を永遠に満足を感じさせることが可能になっています。脳の快楽中枢にセンサーを置けば、快楽を感じ続けることができるのです。そして、ゲームクリエイターは、『人間を飽きさせない』技術を持っています。現在、脳科学者とゲームクリエイターが、覚醒剤依存症の行動パターンと依存に入り込んでいく背景を把握することに努めています。いずれ、『薬をやめることではなく、やめた状態を続ける』をゲームをプレイすることで、解決できるようになるでしょう。この二つの分野のコラボレーションで、薬物依存症の問題は解決できる日が来ると思いますよ」
記者「興味深いお話をありがとうございました」


注意
ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。再度申し上げますが、現実の世界ではありません。虚偽の世界のお話の中に、有益だなと思うことがあるかもしれません。虚偽の世界のことを、現実の世界で試してみることは、推奨されることはあっても、禁止されることではありません。ただし、利益をあげても損害を受けても、自己責任ということをおわすれなく。