総務省が、住民基本台帳に基づく人口動態調査を発表しました。悲しい現実が、その発表の中にありました。1947年に生まれた人は、268万人でした。いわゆる団塊の世代の人達です。この生まれてくる子ども達が、2000年には、120万人になり、2010年には107万人になりました。さらに、厳しい数字が続きます。2020年には、100万人を割り込み、84万人になり、2021年には81万人、そして2022年には77万人となっているのです。ちなみに、亡くなる人は、2020年は137万人、2021年には144万人、そして2022年には160万人と増え続けています。2023年1月1日時点で、日本人の人口は1億2200万人でした。前年から80万人以上減少しています。その減少幅は、調査開始以来最大の数字になっています。さらに、調査以降初めて全都道府県で前年より減ったということです。人口の減少は、当然予想されていたことです。でも、このまま日本の人口減少を座視することもできません。私たちは、人口を増やす仕組みを早急に工夫しなければならない状況にあるようです。そこで、いくつかの対策を考えてみました。利用できるものは、全て総動員するという意味で、プライバシーの面でリスクの高い方策も含んでいます。
外国映画を見ていた時のお話しになります。ストリップ劇場で、男性客の膝の上でラップダンスをする踊り子の映像がありました。ラップダンスするダンサーは、男性客からチップを貰う習慣があるそうです。チップは、少ないより多い方が嬉しいものです。このダンスをする女性には、排卵日になると、男性客からより多くのチップをもらえという経験則があったそうです。これに似たような出来事が、日本のメディアにも大々的に報道されました。2023年11月に和歌山県での党青年局の懇親会で、不適切な行為があったという報道です。露出度の高い女性ダンサーによるショーの中で、ダンサーに口移しでチップを渡すというものです。外国においては、普通にビジネスとして行われていることのようです。日本ではこのような行為が、ある状況の中では厳しい批判を浴びることになるようです。和歌山県連幹部の方は、「政治資金問題でより国民の目が厳しい時期で具合が悪かった」と反省の弁を述べていたようです。この行為を別の視点から見ると、子孫を増やす行為としては、肯定できるものになるのかもしれません。
子どもを増やすためには、結婚の数を増やすことになります。男女の出会いを円滑にいく仕組みをつくることが、一つの対策になります。その対策のヒントは、出会いとフェロモンにあるようです。アジア象のオスとメスは、通常は別々に暮らしています。メスが妊娠可能な時期になると、フェロモンを含んだ尿をまき散らします。オスはその臭いを慕って、やってきます。匂いが空気中に漂って、オスの鼻の粘膜を刺激するのです。匂いに対して、非常に敏感なので、生殖活動が活発になるわけです。人間の場合においても、女性と男性の間には、お互いを惹きつけたり、離れたりするサイクルがあります。排卵日には、女性特有のフェロモンがでます。この匂いに、男性は引き付けられるようです。人間は、動物的なセックスと社会的なジェンダーという側面を持っています。男女が醸し出すフェロモンが、感情の高揚と仕事の効率を上げることは経験的にはよく知られていることです。この経験的な事象を、会社側が用意することできれば、楽しい職場になります。会社が、男女の憩いの場を作るわけです。積極的に男女の接触をする仕掛けを働く制度の中に作ることが、一つの工夫になります。この工夫により、婚姻関係がスムーズに進み、企業の業績が上がれば、社員も企業もハッピーになります。もっとも、このような仕掛けを作る知恵を持つ企業は、少数派のようです。
「一般企業が手を出さないとならば」と、勇気あるスタートアップが、この対策に乗り出すケースもみられるようになりました。2012年にできたデートアプリのティンダー(Tinder)は、世界の多くの人々が利用しています。ティンダーは24カ国語に対応し、1日に2,600万以上のユーザーが使用しているのです。ティンダーのアプリは、スマホにダウンロードできます。スマホにダウンロードされると、加速度センサーやジャイロセンサー、照度センサー、GPSなど作動し、逐次発信してデータが集められます。集めた情報を、AIが分析します。この分析から、婚活をしている人達の行動パターンが分かるようになります。登録した婚活対象者の場所、移動、照明などをビックデータとして蓄積し、AIが分析するわけです。GPSから自宅にいるのか、会社にいるのか、ナイトクラブにいたのかがわかります。これらの行動パターンと事前に登録した履歴を比較しながら、より正確な人物評価が可能になるというわけです。婚活の対象者を、より詳しく知るアプリでもあるわけです。これらを利用しながら、結婚という1次的ゴール、そして、出産という2次的ゴールに到達する方もいます。
3重苦の障害を乗り越えたヘレン・ケラーは、合った人がどの場所から来たかを言い当てることができたそうです。台所にいたのか、庭にいたのか、病室にいたのかが分かったのです。人が場所から別の場所に移動したときに、その人がいた場所を特定できたわけです。人の場合、500万個の匂いを感じる細胞を持っています。臭いの感覚は、味の感覚に比べ、はるかに敏感です。動物の例ですが、マウスのメスが妊娠一週間以内に、交尾相手とは違うオスの尿のにおいをかぐと流産するそうです。でも、どんなオスの尿のにおいでも流産するわけではありません。流産するのは、メスと遺伝子が大きく違う匂いほど流産させる作用が強いのです。遺伝子が遠いほど、種の繁栄をもたらすということを本能的に知っているのでしょう。もっとも、人の場合はにおいをかいで流産することはありません。でも、男女の匂いが、好き嫌いの状況を作り出すことはあるようです。ある若い男女を、グループ別に活動してもらう実験をしました。活動後に、着ていたTシャツの匂いを嗅いでもらったのです。女子学生の中には、好ましい匂いと好ましくない匂いがあることが分かりました。彼女たちは、自分と異なる遺伝子をもつ男子学生の匂いを好ましいと答えたのです。遺伝的に遠い遺伝子ということもできます。若い女性の男性にたいする匂いの好みには、遺伝的に遠い関係にある男性でした。彼女達は、自分と同じような遺伝子をもつ男子学生の匂いを好まなかったわけです。匂いから、男女の出会いを演出することも可能のようです。
匂いとビッグデータの知見から、男女の出会いを演出する仕組みを考えていると、そこに閃くことが起こりました。先日、所用で山形まで行くことがありました。山形までの新幹線つばさは、全席指定になっています。福島から山形までは、いつも席が空いているので、立ち席を購入して、空いている席を利用するパターンでした。ところが、ほとんどの指定席が満席だったのです。これには、びっくり仰天ということです。でも、ここでアイデアが閃きます。指定席が、絶好の出会いの場になるという発想です。そこで、指定席の利点を調べてみました。JR旅客6社は、2023年12月上旬に、年末年始期問の指定席予約が350万席に達したと発表しました。この数字は、比較可能な1996年度以降、1日平均の予約席数としては過去最高を更新したのです。さっそくJR旅客は、年末年始で予約できる席数を2018年度比で15%増となる合計884万席用意しました。29~30日の東北新幹線「はやぶさ」や秋田新幹線「こまち」は、全指定ですが終日ほぼ満席の状態でした。東海道新幹線の「のぞみ」は、全席指定で走らせています。新型コロナの5類移行に伴い、帰省や観光の移動需要は回復を続けています。
最後になりますが、JR東日本には、スイカによる多くの個人データが蓄積されつつあります。たとえば、旅行を数多くする人がいます。この人たちの指定席を近づければ、会話が弾む状況を作ることが可能になります。もちろん、好みの席を指定する人もいるでしょうが、その好みが合えば、指定席を近くにすることができます。総務省傘下の情報通信研究機構では、SNSから知能や精神状態、生活習慣を見抜く実験に成功しています。この実験では、AIが短文投稿サイトの情報から、人々の内面を表す23種類の特徴を推定しました。この実験は、数百の少ないデータでも、AIを賢く用いることで、新たな手法の開発したことに高い評価を得ているのです。ツイッターの投稿内容とアンケートの内容を、AIに学ばせます。学習を終えたAIは、ツイッターから人々の内面をあぶり出す規則性を次々と発見したわけです。スイカのビッグデータは、おそらく情報通信研究機構より整備されているようです。指定席が演出する男女の出会は、彼女や彼らに「良いとか悪いとかの感情」、「好きとか嫌いの感情」、「引き付けるとか離れるという行動」を引き起こすかもしれません。その感情や行動を把握し、より良い組み合わせを作ることも可能になるかもしれません。指定席を近づければ、匂いの効果も出るかもしれません。量子コンピュータのD-Waveは、「組み合わせ最適化問題」を解くことが得意なツールです。このようなツールを使って、引き付けあう男女を職場に配置することも面白い工夫になるかもしれません。子どもが生まれる人数が少しでも増える対策を、あらゆる場を通じて行っていきたいものです。