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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」53

2018年03月20日 | 物語「約束の夜」

「満樹、うまくやってるかしら」

お茶で一服ついた後、
うーん、と伸びをしながら京子が言う。

「心配だよね。
 しっかり者の俺達がいない訳だし」

お菓子を頬張りながら
ツイナが答える。

「今頃、
 助けて、京子!!ツイナ!!って
 言ってたりして」

ツッコミ役が不在だとこうなります。

「それにしても、
 山一族の村がこんなに入りにくいとは」
「敵対しているとは言え
 閉鎖的よね。
 西一族でもここまでは無いわ」

「………」
「………」

うーん。

「そんな所に
 裏一族の拠点なんてあるのかな?」
「そう思うわよねぇ」

裏一族は各一族のはぐれ者達の集まり、
いろんな一族がひしめきあっている、はず。

市場があり、人の出入りの多い
北一族の村ならともかく。

ここが、拠点?

「ミツグ兄さん聞き間違えたんじゃ」

「やっぱり、そう思う?」
「兄さん、大事な所で
 うっかりさんだから」
「へー、意外」
「兄さん
 相方のコズエさんが(おそらく)好きなんだけど、
 この前兄さんの妹のカンナがさ」

「待って!!
 恋バナなら、お茶を入れ直すから、
 それから詳しく!!」

京子が女子トークに食いつく。

「ところで、ツイナって
 変な言い回しをするのね、
『妹の』で良いじゃない?」

『兄さんの妹』って。

「いや、だって、
 兄さんの妹じゃん」
「んん??」
「ええ??」

しばらく、首を傾げた後、
ああ、とツイナが言う。

「俺と兄さん
 兄弟じゃないから」

ここにきて、
舞台が海一族の村から
山一族の村付近に移動して

今、時差で
ちょっと衝撃の事実。

「そうなの!!!?
 わわわわ、これ、
 触れちゃいけない話題!?」
「あ~、確かに分かりづらかったな。
 小さい頃から一緒だったから
 兄さんって呼んでたけど」

ふっ、と
前髪で片眼を隠しつつ、
ツイナが謎ポーズを取る。

「俺って実は、
 秘密の過去がある系のキャラなんだよ」

「そう言えば、
 本名は、ユウトとか言ってたわね!!」
「おうとも」
「生まれが知りたいとか、なんとか」
「いかにも」
「ちょっと、設定詰めすぎじゃない!?」

「実は、本名は2つあり!!」

「なにそれ、
 ツイナと、ユウトと、もう一つ本名って、
 もうそれ、ツイナじゃなく、
 ミツナじゃないーーーーーーー!!」

ひゃーーっと
謎のテンションで盛り上がる2人。

「あの」

「待って、今
 大事なとこだから」

「そう、じゃあ、待っとくわね」

「それでツイナ
 ちょっと気になるミツグの恋バナも」

「私も、それ、聴きたいわ」

「……ん?」
「………んん?」

「どうしたの、続けて続けて」

年は京子達の親に近い。
どことなく、優しげな雰囲気、だが。

金色の瞳。額の入れ墨。
間違い無く、山一族。

村に入っていないとは言え、
そこに近いところで出くわす、とは。

「ところであなた達、
 西一族に、海一族?」

京子とツイナ、
大声で騒ぎすぎ問題。

まずい!!!!

京子とツイナの頭の中を
一族間の争いが、という
満樹の言葉がグルグルと回る。

まずい。

非常にまずい。

なんとか取り繕わねば、と
焦る2人。

「私達っっつ!!」

「ええ」

「僕達!!」
「私達は!!」

選手宣誓のようになる2人。

「その、」
「あの、」
「実は、西一族でも海一族でもないのです!!」

どーん。

「そうなの?
 どう見ても、西と海」

「違う違う!!
 違うんだよ、えっと、えーーっと」
「私達は、そう、あれよ、あれ」

完全にパニックを起こした京子が
高らかに宣言する。

「実は、裏一族なのよ!!
 ぐへへへへへ!!」

いくらなんでも、
その笑い方は無いだろう。



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