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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」78

2014年06月20日 | 物語「水辺ノ夢」

「驚いた」

高子が云う。
「私が呼ばれたのだから、何かあったのかと思った」
「突然、ごめんなさい・・・」

高子は、診察道具をしまい、杏子を見る。

「まあ、悪いものでなくてよかったわ」
「・・・えぇ」
「圭も、ずっと病院に泊まり込んでいるし」
高子が云う。
「ひとりで不安でしょうから、たまには、沢子にも顔を出すよう云っておくわ」
「ありがとう・・・」
「気にしないで」
高子は立ち上がる。
「頼れる人には、頼って」
「ええ」

「圭にも、伝えておくから」

「圭に?」

「そう」

「それはっ」
杏子は首を振る。
「それは、」
「何?」
「それは、・・・圭には、伝えないでほしいの」
「え?」

高子は首を傾げる。

「圭には、・・・おばあさまのことが落ち着いてから、私が・・・」
「自分で云うの?」

高子の言葉に、杏子は頷く。

「落ち着いてから、ね」

高子は息を吐く。
「わかった。私からは何も伝えないわ」

「ありがとう」

「何かあったら、沢子を通して、すぐに私を呼んで」
「ええ」

高子は、扉を開き、外へと出る。

再度、杏子を見る。

「でも、圭に、必ず云わなくちゃならないわよ」

杏子は、何も云わず、高子を見る。

「ふたりでどうするか、決めなくちゃならない」
高子が云う。

「お腹の子どもの、こと」


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