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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「続・夢幻章伝」110

2022年04月19日 | 物語「続・夢幻章伝」
「お、おお」
『リク様』

刃物と刃物がぶつかり合う金属音。
動きと共に舞い散る砂塵。

アヅチとマサキコ(リクインの蛇)の目の前で、
到底、夢幻章伝とは思えぬ、手に汗握る戦いが繰り広げられている。

リクインVS砂一族の青年

「これは」
『ええ』

でも、
でも、
ええっとあの。

リクイン、あんまり強くないな。

『えぇ、おっしゃりたい事は
 わかりますよ、南一族のお方』

「いや、俺、別に何も言ってないし!!」

いやいや、と
アヅチはフォローを入れる。

弱いかと言われると、そうでは無いけど。
強いかとなると。

言いたいなー。
でも自分のために戦ってくれてる訳だし
言ったらダメなんだろうなー。
わるいなー。
マツバだったら
きっぱり言っちゃうんだろうなー。
あいつのそう言う所、良いと思うー。

もどかしさに、もぞもぞするアヅチ。

「言いたい事あるなら
 はっきり言えやー!!」

リクイン様がカッとなる。

「そもそもなぁ、お前を送り届けるために
 ここまで来て戦ってんだぞ!!
 だいたいさあ、……だいたい、」

んん?と思案した後、
リクインが「はい」と挙手する。

「ちょっといいですか?」

審議申請。

「はい。どうぞぉ」

砂一族、審議了承。

「いつもの侵略と攻防ならともかく
 今回こいつ(アヅチ)を砂一族の村に届けるために来てるんだけど
 引き渡して終わりでよく無いか??
 お前たちの客人だぞ」

「いやそれねぇ。
 ただの東一族ならそれも有りなんだけど」

これがまた難しいところで、と
砂一族は頭をかく。

「お前、宗主の息子だろ。
 珍しい白髪の東一族。噂は聞いているよ。
 それなら、ちょっと引くに引けないんだよねぇ」

「え?」

ドキっとするリクイン様。

「それはつまり、
 僕は見逃しておけない存在ってこと?」

“お前ほどの強者を前に、
戦いを挑まぬなど戦士の名折れ、
誉れを持って挑ませてもらう“的な。

よせやい、照れるから、と
鼻の下をかくリクイン様。

「見逃せないよ~こんなチャンス。
 本当に実力が無いなら、そう言う奴は前線には出て来ない。
 むしろ村から出さないのが鉄則だろ。
 でも、中途半端に強いから前線には出てくる。
 いいよぉ~、中途半端」

「………ちゅうとはんぱ」

ふ、とリクインは少し俯く。

「知ってるよ、―――そんな事」

そんなしょぼくれたリクインに、
目線を会わせるアヅチと砂一族。

おおい、どうすんだよ。
えぇ、今のアウトだったかなぁ。
アウトだろ、見ろよ明らかに落ち込んでるだろ。
だよねぇ。

「「…………」」

ゴホンと咳払いをする砂一族。

「いや、言い方悪かったね。
 弱くは無いと思うよぉ。ああ、うん。普通」

「………ふつう」

すかさずアヅチもフォローに回る。

「そう!!普通なんだよ!!
 弱いって言ってる訳じゃなく。
 普通。基準は満たしてるってこと。アベレージ。平均。並!!!」

「………なみ」

「そうそう、並の力、
 だから手こずるけど、ウチの実力がある奴が有利になる。
 そうすると、
 有力情報抱えてる敵の一族が手に入るってわけだよ」

欲しいよ~、ぜひとも入手したい人物だよ。
我が社の求める人材だよ~、と。

「さらっと怖い事言うな砂一族」

俺、今からこいつらの村行くんだよな、と
不安を覚えるアヅチ。


「いや、だから、さぁ。
 知ってるって言ってんじゃん」


ダン、と地団駄を踏み、
ぼそりと呟くリクイン。


「自分が一番分かってるのに、
 何回も、何回も」


ぐす、と鼻水を啜る音。

「え?泣?」
「マジ?」


「どうして、そういう酷いこと言うのさ!!!!」


言葉と共にリクインの足元に現れる魔方陣。
東一族式の魔法。
ぼわわわ、と発動に合わせて淡く光り出す。

『出ましたよ、泣き虫リク様』

待ってましたとばかりに
リクインのお付きの蛇、マサキコがキコキコと首を振る。

「「泣き虫リク様!!!!??」」

『リク様は泣いてからが本領発揮なのですキコ』
「どういう事!!??」

感情の高ぶり、
普段かけているストッパーの解除的な、
色々あるけれど。

『子供のケンカとか、
 泣いた方が強い子とかいるじゃないですかキコ』

「いるわ~」
「いるけどぉ」

それが許されるの、
ギリギリ十代前半までじゃない。


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