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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「続・夢幻章伝」1

2020年12月01日 | 物語「続・夢幻章伝」
「起きるのよアヅチ!!」

朝も肌寒くなり、
布団の中が恋しいこの季節。

いきなり掛け布団引っぱがされて
強制覚醒のアヅチ。

「………心臓がヒュンってする」

「さあさ、起きるのよ。
 何時だと思っているの」
「え、俺、寝過ごしてる?」

むくりと起き上がり
あたりを見回すアヅチ。

視界に入るのは布団引っぱがし犯の姉。
そして見慣れた自分の部屋。
窓の外に広がる薄暗い景色。

「薄暗っ」

いやいやいや。

「まだ、夜明け前だし!!」

「アヅチ、早くしないと朝食が冷めちゃうぞ~」

更にエプロン姿で
声をかけに来る兄。

「夜明け、前だし!!!」

分かっていないわね、と
姉のマジダは頭を抱える。

「旅立つんでしょうアヅチ」
「え、うん」

旅立つんだっけ、と
首を捻りつつも頷くアヅチ。

ええっと、
へび呼ロイドの同僚である分子を助けるため
自分と同じ南一族であるマツバと旅をして
色々な出会い、そして別れを経て
ラスボス、ギャーズンドコズンドコを倒し村に戻って来たが
俺達の旅は終わらない。
次回作にご期待下さい。

………。

「何を言っているのか分からないと思うが
 俺もよく分からない。
 詳しくは夢幻章伝をお読み下さい」

「何を言っているのアヅチ」
「いや、何なんだっけ本当。
 えっと、旅立ち?」

「そうよ、旅立ちよ。
 それなら、もう出掛けなくちゃ。
 旅立ちは夜明け前って相場が決まっているのよ!!」

「そんな、ゆっくり準備して昼間でも」

「アヅチ。お弁当作っておいたからな。
 マツバと食べるんだぞ」

「兄貴もそんな常識みたいに」

うーん、と顔を見合わせる姉と兄。
別にいいのよ、と姉・マジダは言う。

「午前中の内に収穫を手伝って
 午後から出発しても」

「いってきますぅううううう!!!」

ひゅん、と
お弁当片手に家を飛び出したアヅチであった。


出発と言えばの、馬車乗り場。
そこでベンチに腰掛けアヅチは深いため息を付く。

「いや、よく考えればマツバん家とか
 普通に今の時間とか寝てるし、
 尋ねて行けるわけないし!!」

ご近所と言えども
それはそれ、これはこれ。

「あれ、アヅチ」
「タロウさん、珍しいね」

アヅチに声をかけたのは
いつも村の奥まった工房で農具整備の仕事をしているタロウ。

普段も村の中心地で見かける事は少ない。

「いや、俺はいつもこの時間
 このあたりで走り込みをして居るぞ」
「え」
「体力作りみたいな物だ
 油断していると筋肉はすぐ落ちるから」
「そう、なんだ」
「ちなみにこの後、スクワットと、腕立て伏せと」
「………筋肉は、裏切らない!?」
「正拳突きもルーティンだな」
「農具整備とは……」

それじゃあな、と
走り去るタロウを見送ると、
ざわざわと、賑やかな声。

「??
 まだ早朝なのに」

その御一行の先頭を歩いて居るのは
村長のユウジ。

「村長」
「ユウジで構わねぇよ」

その後ろに続くのは
南一族でも名のある老人達。

いぶし銀のユウサク。
知恵袋のキクコ。
仏の微笑みタンゾウ。
しめ縄綯い名人マサトモ。

等々。

「………」

一体何が、と構えるアヅチに
背中に背負った細長いバックを示しながら
ユウジが告げる。

「今から、早朝グランドゴルフなんだぜ」

そっか、と
彼らに手を振り

うん、と頷きながらアヅチは呟く。

分かってしまった。
世の中の仕組みを。

「お年寄りの朝は早ぇえ」

そもそも

「農家の朝は早ぇえ」

アヅチ、そろそろマツバも起きてるかもよ。

あとタロウは若くはないけど年寄りでもないよ、と
本人に変わってフォローさせて頂きます。


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