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「約束の夜」80

2018年06月22日 | 物語「約束の夜」


「お帰り、満樹」

今は一線を引き、ほぼ卓上で務めをしている大将。

のもとに、やっとたどり着いた・・・。

「どうした?」
「いえ・・・」
「ずいぶん疲れているな」
「えーっと、」

トドメが、あなたのお孫ズでした。

首を傾げ、大将が訊く。

「報告の前に、皆を集めよう」

大将が人を呼ぼうとする。



「大将」
「何だ」
「皆に報告出来ることなのか、まずは訊いていただけますか」

満樹の言葉に、大将は持っていた筆を置く。
満樹を見る。

「何かしら情報があったのか」
「・・・・・・」
「満樹?」
「はい・・・」
「お前、いったいどこまで行ってきたんだ?」

満樹はうつむく。

「南と、その先。海もか?」

「あと、山一族の方にも」

「山へ?」
「はい」
「・・・そうか」

大将は、息を吐く。

「ずいぶんと、西の近くまで行ったものだ」
「西は経由していません」
「当たり前だ」

まあいい、と、大将は満樹を見る。

「では、報告を聞こう」

満樹は頷き、話し出す。

南一族、海一族、山一族のこと。
各一族で失踪した者がいると云うこと。
裏一族に会ったこと。

彼らの目的は判らないこと・・・。

満樹は、京子のことは伝えない。
西一族と接触することは、もちろんタブーである。

結局は、当たり障りのない報告となる。
満樹としても、不確かなことを伝えていいものか
迷ったからだ。

満樹が話し終わると、大将は頷く。

これで、報告として、受け取られただろうか。

満樹は、大将を見る。

「実はな、満樹」

大将が云う。

「ここ数日、北一族の商人とやらが頻繁に出入りしている」
「北の商人?」

大将の言葉に、満樹は首を傾げる。
商人の出入りは、けして珍しいものではない。

「その者と接触した者が多い」
「何をしに東へ?」
「外の品物を、配って回っていると」
「外の品物?」

もちろん、それも普通のこと。
商人は、商売に来ているのだから。

「でも、目的は売買ではない」

「・・・・・・?」

「東一族の誰かを探している」

「まさ、か」

「つまり、相手は、北一族のふりをした裏一族だ」

満樹は首を振る。

「なら、包囲網を」
「その商人は入れ代わり立ち代わり、何人かいる」

大将が目を細める。

「本当の北一族の商人と、間違えるわけにはいかない」
「・・・裏一族はいったい誰を探して、」
「それは、満樹が掴んできたのだろう」

その言葉に、満樹は目を見開く。

大将は続ける。

「どうも、東側の裏切りや諜報員、と云うわけではなさそうだ」

大将の目は、まっすぐ満樹を見る。

「いったい、うちの一族の誰を探している」



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