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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」155

2019年07月02日 | 物語「約束の夜」

「ええっと、まず」

満樹は立ち上がり、
部屋の電気を
豆電球から一番明るい設定に切り替える。

「なぜに?」
「なんとなく!!」

なんか、薄暗い部屋で
二人っきりとか。
ムード出しちゃ駄目だと思って。

「うーん、怖がらせちゃったかな。
 ……じゃあ、俺から質問だけど」

「うん?」

今、俺って言った。

「驚かせたい訳じゃ無いからさ。
 こういう話し方の方が落ち着くだろ」

接客業だからね、
普段お客相手にはこう話すよ。と
マサシは言う。

「お仕事バージョンの俺も
 なかなか男らしいだろ」
「………いや。
 悪かった。マサシのいつも通りに話してくれ」

謝るのは自分の方だった、と
満樹は東一族の礼をとる。

「ふふふ。
 満樹は良い子だねぇ」

今、そうやって笑う顔は
やはりどこか京子に似ている。

「では、
 雑談はここまでにして」

マサシは問いかける。

「まず満樹の事を聞かせてもらおうか?」
「!?いや!!
 俺は探し人の事を聞けたら」

おいおい、と
マサシは呆れる。

「物事には順序が必要だ。
 ワタシは満樹の事を知る必要がある」
「ええ」

「困っている所は助けてあげたいけれど」

何もかも手放しにと言うわけにはいかない。

「ワタシの情報をどこまで出すべきか
 見極める必要があるってこと」
「なるほど」

それは、
満樹も同じ。

マサシはいい人だろうが、
どこまで信じて良いものか。

「順序立てて話そう。
 まずはお互いの事」
「………」
「そして、今の状況の確認」
「………」
「最後に、マッキーが探している。
 耀?の事」

「………巻き込む事に、なるかも」
「それ、今さらだよ」
「そうか」

うん、と満樹は切り出す。
マサシは何かを知っている気がする。

「………」
「………」

一通りの話しの後、
うーむ、と
マサシは頭を抱える。

「裏一族と来たかぁ」

え?え?と
ずばりな事を提案する。

「それって、割と重くない。
 自警団に頼るとか、
 それぞれの村長に言うべき事でない!?」
「ごもっともで」

警察行けよ、みたいな。

「危ないといってるんだ。
 腕に覚えがあるかもしれないけれど、
 女の子も居るんだろ」
「それは、わかっている」

以前から考えていた事。

「耀さえ見つかれば、
 京子は村に帰そうと思っている」

ツイナは何となく着いてきそう。
ヨシノは、
ちょっとわからないです。

「京子ちゃん、ね」
「ああ、
 その子の兄を捜している」

心当たりがある、と言っていた。

「知っていることを教えてくれ」

ふむ、と
口元に手を当てながら
マサシは目を細める。

「実は先日
 今日の満樹と同じ反応をした客が居た。
 ワタシの顔を見て驚くそぶりを見せた男が居て」
「それは!!」

「ああ、彼が
 満樹の探している人じゃないのかな?」

「耀、か」

これまでにない情報だ。

「七日とは経っていないけど、
 この村に留まっているかは
 分からないよ」
「彼の顔は覚えているか」
「もちろん」
「悪いが協力を」

「出来ないね」

ばっさりと、マサシは断る。

「………そうか」

確かに裏一族に関わるとなれば
誰もが身を引く。

「もう、これから動く気かい?」
「うん?」
「満樹は北一族の村から着いたばかり。
 疲れも取れない状況で
 もう日も暮れるって言うのに」

谷一族の村って
洞窟の中だからちょっと時間の感覚が。

「なんのために
 お宿に案内したと思ってるの!?」

ぷんすこ、と
マサシが立ち上がる。

「今日はもうお休み。
 疲れを癒して、耀の捜索は明日からだ。
 まさか朝は苦手だとか言わないよな」
「ああ。ええっと」

朝は苦手だけど、
大丈夫と頷く満樹。

「じゃあ、ワタシは帰るから。
 明日朝にここのロビーで待ち合わせでどうだい?」

「助かる。
 ありがとう、マサシ」

よろしく頼む、と言いながら
満樹はマサシの背に問いかける。

「ところで、
 西一族に知り合いは居ないか?」
「西一族?」
「ああ」

とても他人の空似とは思えない。
京子や耀に何か関係が。

「あるよ」

あっさり、とマサシは答える。

「ワタシの父親は西一族」




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