TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」157

2019年07月09日 | 物語「約束の夜」

「おはよう!!
 少し寝坊してしまった。わるいね」

寝坊したとは思えない
爽やかな顔で、
マサシが現れる。

「おは、よう」

ホテルのロビーで出迎えた満樹に
わぁ、とマサシは声を上げる。

「満樹、酷いクマじゃないか。
 どうしたんだ、
 寝不足?お肌の大敵だよ!!」
「う、うん」
「ご飯は食べたのか!?」
「頼むから、大きい声出さないで」

割と徹夜とか平気なはずなのに
なんでだろう、心労?

「大丈夫、平気だ」

そう?と
訝しがるマサシを制して
満樹はホテルを出る。

「耀、………探している西一族なんだが、
 見つけるアテはあるのか?」
「うーん、
 基本的には他一族というのは
 目立つから、
 あちこち話しを聞いて回るぐらいだねぇ」

それとも、と
マサシは問いかける。

「その、耀ってのが
 観光で谷一族の村に来たってなら
 話しは別だけど」

鉱石採掘体験とか
加工体験所とか、
水辺遺産、古代の壁画とか。

耀も裏一族の手から逃げている
もしくは
裏一族について探りを入れているのなら
表だっては歩き回らないだろう。

「それは、無い、かな」
「残念。
 ここの鉱石は上級品で
 お土産にはもってこいの
 素敵な加工を施すんだけどね」
「………土産」

ふと、満樹は
京子の話を思い出す。

耀に谷一族の首飾りをねだった。
お土産に買ってきてくれると
約束した、と。

「………もしか、するのか?」

「心当たりがありそう?」
「分からない、が」
「何も無いよりは良いよ。
 そこからあたってみよう」

いざ、と
満樹はマサシに連れられ
鉱石の加工品を扱う店が
集まる地区へ向かう。

「ウチの村の鉱石は良いよ。
 鉱夫達が毎日頑張って掘り出して来てくれるんだ」
「仕事は、大変だろうな」
「重労働には違いないけど、
 稼ぎも良いし、人気の職だよ。
 ワタシも鉱夫になれたら良かったけど」

「………なりたかったんだ」

なんとなく、
重労働とか無理というタイプかと思っていた。

「うーん、ワタシは魔法が使えないから」
「魔法?」
「谷一族は灯りの魔術に特化しているとは
 聞いたことない?」

あれ、特に
鉱山で役に立つからなんだよ、と
マサシは説明する。

「基本的には皆、初歩的なレベルは使えるのだけど、
 ワタシは西一族の血が混ざっているから
 そこら辺が影響しているのかも」

困ったもんだよね、と。

「西一族」
「あぁ、昨日も言ったろう。
 ワタシの父親は西一族」

満樹はマサシに歩調を合わせて
横を歩く。

「その事について聴きたいんだが」
「だろうと思ったよ」
「その父親は、今は?」
「居ないよ。
 というより、母とはその時だけの関係だったらしい」
「………言いづらいことをすまん」
「いいよ」

気にするな、とマサシは続ける。

「会ったのは数回だけ。
 ワタシに、名前だけは残していった様だけど、
 どんな人だったかはあまり分からないんだ」

ただ、

「ワタシとその京子ちゃん。
 顔立ちが似ているというのなら、
 もしかするのかもしれないね」




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