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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」87

2018年07月17日 | 物語「約束の夜」

京子にとっては
顔も知らない父親。翼。

「お父さんは、
 女性陣に、結構人気があったのよ」
「そうだったんだ」

気になっては居たが、
最低限のことしか聞いていなかった。

子どもを1人で育てた母親に
聞いてはいけない気もしたから。

けれど、
母親の口から初めて聞く父親の話は
少しだけドキドキする。

「でも中々結婚しないから、
 周りに進められて、
 お母さんとはお見合い結婚みたいなもの」
「へぇ」

恋愛結婚が多い西一族では
めずらしいな、と京子は思う。
それとも親の時代にはそうだったのだろうか。

「そうしたら、
 お母さんは本当は別に
 ……気になる人が、居た、とか」

母親は首を振る。

「お母さんは、お父さんの事
 憧れの人だったから、
 やったー、ラッキーって感じ」
「ラッキーときた」

これは、
今までも躊躇わずに聞けたのでは。

「まあ!!最終的に出て行った訳ですが!!」
「そこら辺、吹っ切れているのね、お母さん」
「そりゃそうよ。
 そうしないと、こう、なんていうの
 モヤモヤとした黒い感情が」

ほとばしる。

あ、やっぱり
聞いちゃいけなかったやつ。

「まぁ、子どもを2人も作ったわけだし、
 最初から仲が悪かった訳では」
「……そうね、
 悪い関係では無かったと思うわ」

お父さんは、と
京子の母親が言う。

「あまり、家というより
 村に居付かなかったのよ。
 定期的に帰って来ては、
 長い間出かけるを繰り返して」

そして、
いつかぱたりと帰ってこなくなった。

それだけ聞くと
まるで、兄の失踪のようだ。

「なんとなくだけど」

そう前置きして、京子の母は言う。

「お父さん、この村に
 好きな人が居たんじゃないのかしら」

けれど、結ばれなかった誰か。

「その人のこと思い出すから、
 この村に居るのが
 耐えられなかったのかなって」
「………お母さん」
「推測だけどね」

それが、
父親が京子達を置いて出て行った理由。

お金は残してくれたから、
生活する分には困っていないが。

「と、言うことは」

「私のお父さんは、西一族」

「今までそう言う話の流れだったと思うけど!?」
「あ、あれ~~」

もしかして、
京子達が裏一族に狙われている理由が
他一族同士の混血児じゃないかと
思っていたのだけど。

「んんんん?」

おかしいな。

「待って、
 もしかして、お母さんの
 青春エピソードとか必要無かった?」
「いや、大事だったよ、うん」
「ホントのホント!?」
「ホントのホントよ!!!」



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