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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」83

2018年07月03日 | 物語「約束の夜」

「美和子!!?」

距離を取り構える京子。

うっかりしていた、
美和子はもう村には戻らない物だと
そう思い込んでいた。

「本当にケンカしてたんだな」
「京子、話しぐらい
 聞いてあげなさいよ」

「……っつ!!
 違うの、みんな、美和子は」

「無理よ」

そっと、美和子が呟く。

「ねぇ、どうやって私が裏一族だと
 説明するの?
 こうやって、きちんと村にも戻ってきている」
「私達を襲ったのが何よりの証拠に」
「なるかしら?
 誰もそれを見ていないのに」
「………やってくれたわね」

先手を打たれた。

2人が揉めているという話を聞いている皆は
腹を立てた京子が
あてずっぽうで文句を言っていると
そう思うだろう。

「みんな、先に行ってくれる?
 京子と話してくるわ」

「分かった。早く仲直りしなよ~」
「待って!!」

二人っきりにしないで、と
すがるように皆を見るが
人のもめ事に口を出すのははばかれるのだろう。

大丈夫だよ、と、そのまま去っていく。

「………っ」

どうしよう。

満樹もツイナもいない。
1人で立ち向かわないと。
他に裏一族が潜んでいたら。

「…………大丈夫よ、
 私も村では騒ぎを起こしたく無いの。
 定期的に戻らないと怪しまれるから
 戻っただけだし」

つまり、
美和子も京子を追ってきた訳では無い
と言う事。

手短に、と美和子が言う。

「裏一族に来るつもりは無い?」
「無いわ。
 どうしてもというなら、
 この前のように、無理に連れて行けば」
「言ったでしょう。
 騒ぎを起こしたく無いと」
「お兄ちゃんについては
 どこまで知っているの?」
「裏一族に来たら教えてあげる」
「お断りだわ」
「私達を連れて行って、
 それでどうするつもりなの」
「私からは、言えない、けれど」

「今、大人しく付いてきて居た方が
 ケガをせずに済むわ」

あなたの、ためよ、と。

「………」

「私はまた村を出るわ。
 次、会うときは
 こうはいかないから、覚悟して」

定期的に戻らないと、と
美和子は言っていた。

西一族に潜むためとも
取れる、けれど。

本当は
西一族として村を捨てきれない?

「ねぇ、美和子。
 あなたはどうして裏一族に?」

村の風習に合わずに村を飛び出した者達、
はぐれ者の集まり、
禁術の使い手。

噂に聞く裏一族の話。

そのどれとも美和子が結びつかない。

「……誰か、美和子の大事な人が居るの?」
「どうかしら」

美和子が立ち去り
1人きりになった京子の元に
巧が様子を見にやって来る。

「京子、大丈夫か。
 何だか、様子がおかしかったから」
「……大丈夫」

でも、美和子と対峙して分かった。

京子は満樹のように武術を鍛えている訳では無い。
ツイナのように先視の術は使えない。

2人のようには戦えない。

西一族として狩りに出るから
多少、武器の扱いに慣れている、

それだけ。

「……京子、その
 本当に大丈夫か」
「だいっ、じょうっ、ぶよ!!」

悔しい。
何も出来ないのは。

「……京子、あの、何してんだ!?」

ふん、ふん!!と
スクワットをする京子。

そう、強くなるために。

「筋トレよ!!!!」



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