「ただいま~」
うぁああ、と玄関を開ける京子。
家の中は静まりかえっている。
「母さんは、まだ仕事中か」
そうよね、と
荷物をその辺りに放り投げると
キッチンでお茶を入れて
居間のソファに座り込む。
テーブルの上に置いてある
砂糖漬けの果物をつまみつつ
お茶をすする。
「ふ~、落ち着く~」
宿で体を休めるのとは違う、
勝手知ったる我が家だ。
「…………」
これから、京子がしないといけない事。
本来なら、
美和子の離反。
裏一族との接触。
東や、海一族と行動を共にしたこと。
これは村長への報告事項だ。
「でもなあ」
先程、千に話すのを躊躇ったのも
同じ理由。
きっと、京子は村から出してもらえなくなる。
狙われていると分かったならばなおさら。
身を守るためにみんなが動いてくれる。
ありがたいことだけど。
「これは自分で
解決しないといけない事だから」
なぜ、裏一族は自分たちを狙っているのか。
それに。
自宅で気が緩んだのか
京子はウトウトし始める。
旅の疲れがどっと出てきた。
少しだけ、と
ソファに横になりながら呟く。
「北一族の村に行かなきゃ。
満樹とツイナが待っているのだし」
起きたらしなくてはいけない事が
たくさんある。
だから、そう
少しだけ。
京子は瞼を閉じる。
「ほら、京子はそうやって
すぐあちこちで寝る」
ブランケットを駆けながら
風邪引くぞ、と言う声が聞こえる。
あぁ、夢だなと
思いながらも
眠気で目が開けられない。
(……お兄ちゃんだ)
キッチンで火を付ける音。
小腹が空いたのだろう。
夕食には少し早い時間。
具材を切る音と共に
小さく鼻歌が聞こえる。
何の歌だかさっぱり分からなかったけど
いつも同じ様に歌うから
メロディーは覚えてしまった。
美味しそうな匂いと
兄の声。
「京子、起きてる?
一緒に食べるか?」
そうやって、2人で軽食をつまんでいると
母親が帰ってきて
ちゃんと夕飯入るんでしょうね?と
怒られるのだ。
「お兄ちゃん」
京子は起き上がる。
家には京子の気配しか無く、
キッチンの火は消えている。
ブランケットも掛かってはいない。
「…………夢か」
懐かしい夢だった。
何てことのない日常で
つい一年前までは当たり前だった景色。
千と、
兄と雰囲気が似た人に会ったからだろうか
こんな夢を見てしまうなんて。
少し泣きそうになって、
首を横に振る。
北一族の村に向かう、もう一つ、大事な理由。
「お兄ちゃんは
絶対に私が見つけるんだから」
NEXT
うぁああ、と玄関を開ける京子。
家の中は静まりかえっている。
「母さんは、まだ仕事中か」
そうよね、と
荷物をその辺りに放り投げると
キッチンでお茶を入れて
居間のソファに座り込む。
テーブルの上に置いてある
砂糖漬けの果物をつまみつつ
お茶をすする。
「ふ~、落ち着く~」
宿で体を休めるのとは違う、
勝手知ったる我が家だ。
「…………」
これから、京子がしないといけない事。
本来なら、
美和子の離反。
裏一族との接触。
東や、海一族と行動を共にしたこと。
これは村長への報告事項だ。
「でもなあ」
先程、千に話すのを躊躇ったのも
同じ理由。
きっと、京子は村から出してもらえなくなる。
狙われていると分かったならばなおさら。
身を守るためにみんなが動いてくれる。
ありがたいことだけど。
「これは自分で
解決しないといけない事だから」
なぜ、裏一族は自分たちを狙っているのか。
それに。
自宅で気が緩んだのか
京子はウトウトし始める。
旅の疲れがどっと出てきた。
少しだけ、と
ソファに横になりながら呟く。
「北一族の村に行かなきゃ。
満樹とツイナが待っているのだし」
起きたらしなくてはいけない事が
たくさんある。
だから、そう
少しだけ。
京子は瞼を閉じる。
「ほら、京子はそうやって
すぐあちこちで寝る」
ブランケットを駆けながら
風邪引くぞ、と言う声が聞こえる。
あぁ、夢だなと
思いながらも
眠気で目が開けられない。
(……お兄ちゃんだ)
キッチンで火を付ける音。
小腹が空いたのだろう。
夕食には少し早い時間。
具材を切る音と共に
小さく鼻歌が聞こえる。
何の歌だかさっぱり分からなかったけど
いつも同じ様に歌うから
メロディーは覚えてしまった。
美味しそうな匂いと
兄の声。
「京子、起きてる?
一緒に食べるか?」
そうやって、2人で軽食をつまんでいると
母親が帰ってきて
ちゃんと夕飯入るんでしょうね?と
怒られるのだ。
「お兄ちゃん」
京子は起き上がる。
家には京子の気配しか無く、
キッチンの火は消えている。
ブランケットも掛かってはいない。
「…………夢か」
懐かしい夢だった。
何てことのない日常で
つい一年前までは当たり前だった景色。
千と、
兄と雰囲気が似た人に会ったからだろうか
こんな夢を見てしまうなんて。
少し泣きそうになって、
首を横に振る。
北一族の村に向かう、もう一つ、大事な理由。
「お兄ちゃんは
絶対に私が見つけるんだから」
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