「んんん?」
悪寒を感じて、満樹は振り返る。
悪者の気配、とかじゃなくて、悪寒。
「うー・・やだな。務めに行ったはずなのに」
他一族で変な噂とかされていたら困る。
目立つことをすると、外での務めは除外される。
「何か、やったっけな・・・」
いろいろです。
もう少し歩くと、東一族の村。
今日の門番当番は誰だろう。
滞在中に砂漠当番も、回ってくるかもしれない。
「・・・・・・」
正式には「当番」と云う言葉ではなく「務め」なのだが
判りやすく云いやすいので、みんなそう云う。
軽い感じに聞こえるが、結構大切な務め。
「とりあえずは、報告か」
満樹は歩く。
途中、道を外れ
東一族しか知らない村の入り口へとたどり着く。
このまま進めば、誰にも会わずに、
「満樹じゃないか」
会っちゃいました。
「まさか、務めの帰りか?」
「そう・・・」
「えっ。・・・務めの帰りなのに、裏道ルート?」
「いや、本当に、うん」
満樹は、流れで通り抜けようとする。
「ところで俺は、弟が門番当番をちゃんとやっているのか見に行くところだ」
えぇえ。
「もう、水樹(みずき)に門番させているのか?」
「体験だ」
「・・・体験」
「お前、どう思う?」
「どう思うって、大樹(だいき)・・・」
ささっと、大将のところに行って
大将が人を集める前に、ささっと報告しようと思っているのに。
「ちょっと早くないか?」
その弟やらは、まだ若い。
と云うか、未成人。
「やっぱりそうだよな・・・」
「でも、まあ。水樹は戦術のセンスはあるし」
うん、大丈夫。
うん。
「じゃあ」
満樹は歩き出そうとする。
「あいつが余計なものを東に入れないか心配で」
「大丈夫だよ」
「大将の名に恥じるだろう!」
「成院に任せておけよ!」
「次期大将のもとで、あいつはちゃんと学んでいるのか?」
「見る限り、鍛錬はちゃんとしてたって」
「でも、次期大将がなぁ。あの次男だったら、」
「それ、お前の占術で決めろよ!」
「満樹、俺が何を云いたいか判るか!?」
一旦まとめます。
現大将
現大将の孫その1)大樹
現大将の孫その2)水樹
大樹、次期占術大師
成院、次期大将候補
のもとで戦術を学ぶ、水樹
もうひとり
次期大将候補とされるのが現宗主の孫その2、佳院。
「何を云いたいって、大樹?」
ふう、と大樹は息を吐く。
「いいか、満樹。俺は占術師だ」
「知ってる」
「戦術は苦手だ」
「鍛錬しろよ」
「しかし、占術は得意だ」
「くどいな」
「お前が、外で何をしてきたのかだいだいは判っている」
えぇええー
大将に報告の必要ないじゃん。
「いや大樹。嘘はつくなよ」
「何」
「一から十まで、今のお前の占術では判らないはず」
「違うな。お前次第だ」
「えっ、どう云うこと!?」
大樹は、とっても真面目な人間だ。
とっても人が良い。
「あることないこと、俺は云うつもりでいる」
「!!?」
「もう一度、云おう」
「・・・はい」
「俺のはちゃけた弟が今、門番をしている」
「・・・・・・」
「大将である我が祖父のためにも、弟には頑張ってほしいと思っている」
「・・・つまり」
満樹は、遠い目で大樹を見る。
「俺のことはいいんだな。どうでも!」
だから、うん。
結局
大樹は自分の弟の心配を、すんんんごく、しているわけで。
「判ったよ・・・」
満樹は、東一族の村、外向けの入り口へと向きを変える。
「水樹の様子を見てくればいいんだろう!」
「満樹・・・」
「何だよ」
「まじめか」
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