TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」166

2016年12月09日 | 物語「水辺ノ夢」

圭が仕事へと出かけていく。
それを見送り、杏子は家のことを片付ける。

洗濯を干そうと、外に出る。

天気はいい。



誰かが通りがかる。

杏子は慌てて、隠れる。
東一族の杏子は、本来、外へ出ることは許されていない。

誰か、数人は何かを話している。

杏子には気付かない。

・・・黒髪の子どもが生まれたらしいよ。
 まあ。気持ち悪い。
 このまま、生き続けるのだろうか?

杏子は、隠れたまま、目を瞑る。
西一族が行ってしまうのを待つ。

濡れたままの洗濯物をそのままにして、家の中に戻る。

家の中では
圭の作ったベッドで真都葉が眠っている。

「真都葉・・・」

杏子は、先ほどの言葉を思い出す。

黒髪の真都葉のこれからは、おそらく困難ばかり。
不安しか、ない。

杏子は首を振る。

弱気になってはいけない。
真都葉を守ってやれるのは自分たちだけなのだ。

そう、自身に云い聞かせる。

自分の腕を見る。
ブレスレッドが、ある。

「よし」

杏子は再度、外へ出る。
先ほどの洗濯物を、干しはじめる。

・・・・・・。

「え?」

杏子は顔を上げる。
空を見る。

「今、誰か・・・」

誰かの声。

・・・大丈夫。

そう、聞こえた。

けれども、誰もいない。

杏子は木を見る。
ただ、鳥がさえずっている。

「さて、」

西一族の男が、物陰から動く。
東一族の、その様子を確認していたかのように。

「圭は、作業場だったかな」



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