美味しい物でも食べて
気分転換をしなさい、と言われ
結局とぼとぼと家に戻る事になる。
「先視で自分の事も見れたら良いのに」
そうしたら、
寝坊する事も分かっていただろう。
この力を持つ他の者がどうかは分からないが
シズクにはこの先良い事がある
悪いことがある。
そう言ったぼんやりとした事が分かる。
なので、
司祭を初めとする歴代の先視は
毎日の漁の前に、今日の漁を占う。
結果次第では漁を取りやめることがあるぐらい
海一族の漁師はその結果を重んじている。
けれど、
先視は自分自身の事は見えない。
先視同士でも見ることが出来ない。
他人の事でも
自分に関わる事は見えなくなる。
そういう制約がある。
そして、
人の死期は見えたとしても言ってはいけない。
未来が何もかも見通せたら
それはきっと良くないことだからだ、と
納得しているけれど。
「寝坊するかもぐらいは、さあ」
思い出したら悲しくなってきた。
「………ユウヤはいつもそう」
不器用な人というのは知っている。
良い所が沢山あるのも。
でも、
そう昨日だって、
随分な事を言われた気がする。
「私が何も言わないのも悪いのかな」
ニコニコと受け流していれば
すぐ終わる事だから。
文句を言われても
そうだね、と笑うようにしている。
「ふう」
もし、ユウヤじゃない人と
恋人になっていたら、
それは、どういう日々だっただろうか。
「どうしたんだ?」
それが少しユウヤに似た声だったので
びっくりして振り向いてしまった。
「あ、ええっとこれは何でもないの」
シズクは涙をぬぐう。
「他の一族の人ね。
ええっと西、それとも北の方?」
「西一族だ」
「観光かしら?
そうしたら、港に行くの?」
水辺を囲む八つの一族で
唯一海に面して居る海一族の村。
海を見たいと訪れる人も多い。
「ああ、今日はそう言う目的じゃないんだ」
「そうなの?
誰か尋ね人?」
「俺の事覚えて無いかな?」
「ええ?」
何を言ってるのこの人、と
シズクは一瞬パニックになるが
そういう声かけがあるって聞いたことがある。
久しぶり~、同級生だけど、みたいな。
「………」
どうしよう、詐欺かな、と
少し距離を取るが
西一族の青年は言う。
「冗談だ。
そんな目で目の前を通られたら
放っておけないからなぁ」
あぁ、本当。
声だけはユウヤに似ている。
他一族の人なのに。
「君が落ち着くまで少し話さないか、
なに、今から帰る所だから
村境に行くまでで良いんだ」
お茶でも出来たら良いけれど、と
冗談めいて彼は言う。
「それはさすがに君の恋人に悪いだろう」
NEXT
気分転換をしなさい、と言われ
結局とぼとぼと家に戻る事になる。
「先視で自分の事も見れたら良いのに」
そうしたら、
寝坊する事も分かっていただろう。
この力を持つ他の者がどうかは分からないが
シズクにはこの先良い事がある
悪いことがある。
そう言ったぼんやりとした事が分かる。
なので、
司祭を初めとする歴代の先視は
毎日の漁の前に、今日の漁を占う。
結果次第では漁を取りやめることがあるぐらい
海一族の漁師はその結果を重んじている。
けれど、
先視は自分自身の事は見えない。
先視同士でも見ることが出来ない。
他人の事でも
自分に関わる事は見えなくなる。
そういう制約がある。
そして、
人の死期は見えたとしても言ってはいけない。
未来が何もかも見通せたら
それはきっと良くないことだからだ、と
納得しているけれど。
「寝坊するかもぐらいは、さあ」
思い出したら悲しくなってきた。
「………ユウヤはいつもそう」
不器用な人というのは知っている。
良い所が沢山あるのも。
でも、
そう昨日だって、
随分な事を言われた気がする。
「私が何も言わないのも悪いのかな」
ニコニコと受け流していれば
すぐ終わる事だから。
文句を言われても
そうだね、と笑うようにしている。
「ふう」
もし、ユウヤじゃない人と
恋人になっていたら、
それは、どういう日々だっただろうか。
「どうしたんだ?」
それが少しユウヤに似た声だったので
びっくりして振り向いてしまった。
「あ、ええっとこれは何でもないの」
シズクは涙をぬぐう。
「他の一族の人ね。
ええっと西、それとも北の方?」
「西一族だ」
「観光かしら?
そうしたら、港に行くの?」
水辺を囲む八つの一族で
唯一海に面して居る海一族の村。
海を見たいと訪れる人も多い。
「ああ、今日はそう言う目的じゃないんだ」
「そうなの?
誰か尋ね人?」
「俺の事覚えて無いかな?」
「ええ?」
何を言ってるのこの人、と
シズクは一瞬パニックになるが
そういう声かけがあるって聞いたことがある。
久しぶり~、同級生だけど、みたいな。
「………」
どうしよう、詐欺かな、と
少し距離を取るが
西一族の青年は言う。
「冗談だ。
そんな目で目の前を通られたら
放っておけないからなぁ」
あぁ、本当。
声だけはユウヤに似ている。
他一族の人なのに。
「君が落ち着くまで少し話さないか、
なに、今から帰る所だから
村境に行くまでで良いんだ」
お茶でも出来たら良いけれど、と
冗談めいて彼は言う。
「それはさすがに君の恋人に悪いだろう」
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