『食え食え食え食え』
ぼわーん、と現れたのは、
ギャーズンの手に落ちてしまった
へび呼ロイドの同僚達、こと
―――分子ズ!!!
それがマツバの剥いていたゆで卵の中から
溢れ出たのだ。
「熱湯で茹でたのに!!??」
一体何故に、と
マツバは色々思いを巡らせる。
水はH2Oで熱することによりH2とO2になり。
ちなみに、会場の人たちは
「なるほど、豆乳のゆるキャラか~」
「最近どこも色んなゆるキャラ作るよな。
地元経済が潤えばいいけど」
イベントの一種だと思い込んでいる。
なぜなら分子の見た目は丸いふわふわした生き物。
「しかし、デザインがシンプルすぎるわね」
「いいえ、そこがいいのよ」
かわいいかどうかは人それぞれ。
『食え食え食え食え』
だが、
「マツバさん、これ!!」
「つまり電子レンジの原理で振動を、え?
―――クリミア、あなた気付いたようね!!」
この異常事態にいち早く気付いたのか
やるわね、とマツバがアイコンタクトを向けるも。
「魔法、ですね!!
魔法はダメだって司会の方が
言ったじゃないですか!!」
「え?違っ!!」
「それに、いくら高等な魔法で来たって
私、負けませんから。
本当に必要な事は
ああああ………あ……愛なんですから!!!
きゃーーー!!!言っちゃったーーー!!!!」
もう、やだ~、と
恥じらいながらマツバの肩をばしばしと叩く。
痛い。
「「「「…………」」」」
会場客席サイドでは
いつの間にかアヅチの隣にやって来ていたモモヤが言う。
「お前、あそこまで想われるって
そうそう無いぞ」
「待ってくれ、そもそも
愛があるからまずい料理も食べられるのであって
ただの料理から愛は生まれない」
「おねぇちゃん料理は酷いからね」
クリミア&ロマニー家の食事は
ロンロンが準備致します。
「マツバ、俺のために料理を作ってくれるだけでなく
魔法まで披露するなんて、俺はっ……俺はっ!!」
タクトはタクトで暴走している。
アヅチはステージの事態をなんとかしなきゃな、と
思いながらも同時に
あそこ行くと面倒なことになりそうだな、と
ひっそり隠れても居たかった。
「そう言う訳にもいかないか」
と、ため息をついてアヅチはステージに向かう。
『食え食え食え食え』
同僚達はついに会場の食べ物に群がり始める。
準備されていた料理大会用の食材から
完成した料理まで。
「わーーー!!」
「せっかく作ったのに」
「貴重な豆乳が~~」
大会参加者やスタッフから悲鳴が上がる。
マツバのゆでたまご(ちゃんとした方)
クリミアのクッキーまでもがその魔の手に。
「いやあああ。私のクッキーが!!
マツバさん、いくら何でも
これは酷いですよ!!!」
「いやだから」
「私、マツバさんの魔法ステキだなって思ったのに。
こんな仕打ちないわ」
ムキーーーっとマツバも反論。
「そもそも。私こんな
しょっぼい魔法なんて使わないから!!」
そこ、大事。
ぽろん。と、その場に妙な効果音付きで一匹の同僚が転がり落ちる。
ポロリとクッキー(多分、そして、黒い)を吐き出す。
『ま、まずっ!!!』
「「…………」」
ぴーん、と、マツバの頭上に電球が灯る(イメージ)。
「そうだ、これよ。
クリミア。あなたのクッキーをこの同僚達に食べさせるのよ。
そうすれば、一網打尽じゃない!!」
「いやあああああああ」
「何気にお前は酷いことを言うなぁ」
アヅチもステージに上がってくる。
「マツバ、助けに来たよ!!
武術は苦手だけど、魔法なら、
使えないことも無いこともないかもしれない」
タクトも居た。
一目惚れだけで、よくぞここまで。
「私だって、おしゃれ魔法で名高い北一族として
負けていられません!!」
むん、とクリミアが気合いを入れる。
その自信が逆に怖い。
「「ええっと」」
タクト&クリミアの勢いに
何だかついて行けないアヅチ&マツバ。
このメンバーで一体どうしよう。
NEXT