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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」60

2015年09月08日 | 物語「夢幻章伝」

「ねぇねぇ。ナギサ。
 栗って美味しいんだね~」

甘栗をほおばりながら海一族のシオリが言う。

「ウニも甘くて美味しいけど、これもいいな。
 とげとげした物って甘いんだな」

ナギサとシオリの言葉に
ヘイマスターことミナトは胸を痛める。

「父さんが栗を沢山買ってあげられたら」

なぜなら栗は海一族と敵対する山一族の名産品。
そう易々とは手に入らないのだ。

「あ、それなら
 南一族にも少し栗はありますよ」

売り出すほど取れないので
家庭用だが
おすそ分けできます。とモモヤ。

「南一族の親切なお兄さん!!」
「ありがとう!!」
「お礼にウニ送ります!!!」

モモヤわらしべ長者。

「ウニかぁ、
 アヅチのやつ喜ぶかな」

ふふふ、と
モモヤは弟の事を思い浮かべる。
さて、そのアヅチは豆乳早飲み対決の会場にいた。


「北一族祭!!
 豆乳早飲み対決。優勝を制したのは!!」

ドルルルルルルル。

ドラムの音が小刻みに響く。

「タクト選手―――!!!
 他一族からの参戦があったものの。
 まめぴよの産地、北一族の意地を見せたか!!」

「ありがとう皆さん!!」

どーん、とステージの中央に立つタクト。
ずずいっと司会者がタクトにマイクを向ける。

「優勝おめでとうございます。
 今のお気持ちを一言どうぞ」

あー、ゴホン。

「まさか、自分が優勝できるなんて
 思ってもいませんでした。
 僕のことを育ててくれた、厳しい父、優しくて病弱な母、
 あるいは反抗期の弟。この想いを伝えたい人は沢山居るのですが」

ずいっと、タクトはステージ脇を指し示す。

「切磋琢磨したライバル」

どーんとスポットライトが照らされるアヅチ。
おおーっと会場は謎の拍手に包まれる。

「豆乳美味しかったです」

ちなみに、アヅチは最初の一杯で
『あ、俺もういいです』と
普通に味を楽しんだだけだった。

「そして、そして
 何よりもこの想いを伝えたい
 マツバ!!!大好きだ!!!」

おわぁああああああ。と
会場が居ように盛り上がるがスポットライトが照らす先には

「……」

誰も居ない。
マツバ何処に行った。

「ふっ、照れなくても良いのに。
 さて僕は彼女を追いかけます。
 優勝賞品の豆乳一年分は会場の皆さんでどうぞ
 この喜びを分かち合いましょう!!!」

わぁああああああああああ!!
タクトの粋な計らい(?)に会場に歓声が響き渡る。

「では、準優勝の方にもコメントを頂きましょう
 アマ―――」

会場の盛り上がりに
司会者の音声がかき消される中

「うんうん。
 タクトのやつなかなかやるじゃん」
「北一族の男の中の男ですな」

いいねー。とロマニー達の中でタクトポイントが上がっていた。
そこにアヅチがステージから戻ってくる。

「あー、腹がタポタポする」
「アヅチ、全然飲んでないじゃん!!」
「いや、俺本番前に謎の豆乳飲んでるし」
 (夢幻章伝55参照)

「それにしたって、
 今、豆乳は貴重なんだよ」

もう!!分かってないなぁ!!
カカクコウトウなんだから!!
とロマニーが言う。

「この村の先に変なやつが居て
 そいつのせいで豆乳が運べなくて困ってるんだから!!」

だから、他一族が豆乳を手に入れるのは
とても大変なのだ。

「ふーん」

この村の先、というと、
アヅチ達がまだ通っていない
北一族の村から更に先(西一族方面)へ向かう道だろうか。
アヅチは一応、チェックを入れた。

「で、マツバは??」

居ない、逃げたな。
それに、―――クリミアも居ない。

「マツバはね
 おねえちゃんと一緒に」

ほら、とクリミアが
別会場の方を指さす。


「豆乳料理対決に参加しに行ったよ!!」


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