「俺は、西一族産の肉料理が食いたい」
「そんなの山一族の村でも食べられるじゃない」
西も山も狩りの一族です。
どちらの村へも続いている道を歩きながら
アヅチとマツバはガイドブックを開いている。
「そんなこと言ったって
西は香草料理、
山は炭火焼料理で種類が違うだろう!!」
「アヅチ……意外とグルメなんだね」
ほうほう、とへび呼ロイド。
「俺はこの、西一族の有名な創作料理店
『けいくんの店』に行きたい!!」
「!!!!!??
絶対無いわ!!!!!」
マツバはガイドブックを引っ張る。
「こっちの、山一族の秘境にあるという
幻のジビエ料理店『グルメオブアキラ』がいい!!」
ぐぬぬ、と対立するアヅチとマツバ。
こりゃいかん、と
二人の間をとりもつへび呼ロイド。
「まぁまぁ、二人とも
とりあえず、ちょっと休憩しようよ
お茶でも飲んで!!」
「む」
「分かったわ」
だいぶ歩いてきたし、
仕方ない、やれやれ、と
草むらに二人は腰かける。
背負っていた荷物を降ろしながら
ふとアヅチはバックの一番上に入れている箱を取り出す。
谷一族のミィチカから貰った物。
「それにしても
これ、何が入っているんだろうな」
ガタガタ。
揺すってみる。
「もう開けてみてもいいのじゃないかしら」
問題は解決したし、とマツバ。
結果としてトウノは
ミィチカ達と谷一族の村へ帰って行ったし、対価を得ても良かろう。
特に何かしたつもりはないけど。
「二人とも、
おいら達の同僚を取り戻すという
大きな問題が残っていますよ」
へび呼ロイドが言うものの
それはそれ、これはこれ。
今は箱の中身が大事です。
「なんだろうな?」
「秘宝って言っていたわね」
わくわくわくわく。
「きちんと2で割れるかしら?」
「売買する場合は
お店を選ばないとな」
「美術品だったらどうしよう
本物かどうかとか、分からないのよね」
「為替相場もあるだろうから
手放すタイミングも見計らないとだな」
2人とも売る気満々。
「となると、専門店が多い
北一族の村で売った方が良いよな
でも、今更戻れな―――」
ぎゃーん!!!
と草薮から何かが飛び出し、
「とう!!」「!!???ぬぐんっ!!!」
アヅチにタックルをかます。
どしーん、と
箱を持ったままアヅチが吹っ飛ぶ。
「ちょっと何やってるのよ大丈夫(箱の中身は)?」
「痛っ……なんだなんだ?」
「なにすんじゃ、われーー!!」
「え?」「ん?」
どーん、と
アヅチ達の目の前に
1人の少年が倒れ込んでいる。
「あいたたたた、あいたたたた
足がぁああああああ
拙者の足がぁあああああ」
そのロマニーぐらいの年頃の少年は
地面でバタバタしている。
え?ぶつかってきたのそっちなのに???
と思いつつも
アヅチとマツバ、へび呼ロイドは駆け寄る。
「おいおい、大丈夫か?」
「拙者って、何者?」
「あわわわわわ、
みんな大丈夫??」
マツバが差し出した手を
バチーンと弾いて
二人を睨み付ける。
「どうしてくれる、
拙者の足が折れただろうが!!!」
えぇええええーーー!!!?
「お前、おれに「とう!!!」って
言いながら当たってきたよな」
「知らぬ知らぬ、
そんな事は言っておらん!!!」
えぇええええーーー!!!?
そして、仁王立ちで立ち上がると
どしーんと大きく構え
二人に手を差し出す。
「さぁ、金払え!!」
えぇええええーーー!!!?
これは、新手の詐欺なのだろうか。
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