浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

メンゲルベルク&維納フィルハーモニー@ザルツブルグ音楽祭

2011年05月08日 | 指揮者
いつか取りあげやうと思いつつそのままになってゐたメンゲルベルクの維納フィルハーモニーとの演奏を半年ぶりに聴いた。曲はベートーヴェンの「エグモント」序曲である。

此の小品は指揮のお勉強によく使われるが、僕も中学生の頃に、チェリビダッケが廃墟で伯林フィルを指揮する、あの有名なフィルムを映画館で観て以来、英語の授業時間になるとスコアを手にして屋上に上がり、指揮の練習をしたものだ。今で言ふところの「エスケープ」、つまり問題行動である。

誰も見てゐないところといふものは何処にでもあるわけでは無く、考えた結果思いついたのが、得意の英語の授業に屋上に抜け出すといふ妙案だったのであり、問題を起こそうといふ悪い心はこれっぽっちもなかった(多分、おそらく・・そのやうな気がする・・)。

大空の下、気持ち良く大きな身振りで体をくねらせ、エグモントを指揮する僕の勇姿があった。チャイムで現実に引き戻されて教室に降りて来ると、英語のO先生からの手紙が机上に置かれてあった。「僕の授業を受けに来て呉れ給え」といふやうな内容だった。先生にそこまで思はれてゐることを知り、次からは屋上で指揮するのは止めたのだった。今考えれば、何故、行方不明の僕を先生たちが探しに来なかったのかは謎だ。

ところで、メンゲルベルクの維納フィルとの演奏で一番感じるのは、絃樂器の艶やかさである。コンセルトヘボウの絃はもう少しざらついた鋭角的な響きだが、維納フィルは角が取れた聴きやすさがあるやうに思ふ。コーダに向かう興奮は、スタジオ録音とは比較にならない。最後はやっぱりティムパニーを追加しまくって大騒ぎのうちに終わる。

盤は、仏蘭西TahraによるリマスタリングCDアルバム TAH401/402。


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