浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

北欧の浪漫派交響曲 ベルワルドの「サンギュリエール」

2007年09月11日 | 忘れられた作品作曲家
シューベルトより1歳年上のベルワルドは生涯に4曲の交響曲を残してゐるが、現代では殆ど忘れ去られた感がある。それもそのはずで、この交響曲などは存命中には初演されておらず、存命中から忘れ去られた作曲家だったことが分かる。しかし、古典的な響きの中にも今までに体験したことのない奇抜なアイデアや、北欧の幻想的な風情を聴かせてくれる。

LP時代にこの不思議な北欧の作曲家を世界に紹介したのは、イゴール・マルケヴィッチといふ指揮者である。なんとオーケストラには伯林フィルを使い、1955年に独逸グラモフォンからLPとして発売してゐる。

1955年と云へば、フルトヴェングラー亡き後の混沌の中、新世代の担い手を模索してゐた時期だ。万人受けするカラヤンの台頭は予定どおりだったのだらうが、この時期、チェルビダッケ、ケンペン、レーマンをはじめとして、数多くの個性的な指揮者がこの指揮台に立ってゐて興味深い。鬼才マルケヴィッチがベルワルドを引っさげてレコヲド界に殴りこみをかけた(かどうかは知らないが)、その気魄のこもった(と思いこんでゐる)名演(と云ふかこれしか知らない)を今宵は愉しんでゐる。

緩徐楽章での突然のティンパニーの強打と何故だかスケルツォの速いパッセージ、異様な転調と露西亜風の派手な金管楽器。イメージが特定できないまま30分弱の短いシンフォニーは終わってしまった。再度聴き直したが結果は同じだった。だが、ベルワルドは個性的な色彩を持った作曲家であることは疑う余地がなく、決して忘れられるべき存在ではないことだけは確かなやうだ。

盤は、独逸GrammophonによるリマスタリングCD 457 705-2。


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