浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

シューベルト弦楽三重奏曲第1番(メンデルスゾーン補筆完成版)世界初演

2012年12月06日 | 忘れられた作品作曲家
シューベルトには未完成の作品がいくつかあるが、この三重奏曲も第2楽章途中までしか残されてゐない。これをメンデルスゾーンの子孫、ウラディミール・メンデルスゾーンが補筆完成させたのが、今日聴いてゐる演奏である。

ウラディミール・メンデルスゾーンは編曲者、ヴィオラ奏者であり、我が國の藤原真理とカントロフの3人でモーツァルト・トリオを結成し活躍してゐる。此のメンバーが揃う最後の演奏会ライブ録音を愉しんでゐる。

藤原真理のセロは朗々とよく歌い、ときに厳しい表情を聞かせ、テクニックの衰えも微塵も感じさせない素晴らしいものだった。メンデルスゾーンのヴィオラは少し残響を残し気味にし、内声部の控えめな表現を聞かせるかと思へば、かかとやつま先で床を叩いて体全体で熱っぽい表現を聞かせたりする。その表情付けは音楽的に僕の好みであり、ヴィオラの響きも多少くぐもってはいるが奥行きを感じる渋い音色が大変魅力的である。

提琴は有名なジャン=ジャック・カントロフであり、技術的な衰へは隠せなかった。この演奏をもって指揮者への道に専念するとのことだが、メニューインを思い起こす。提琴は年を重ねるとともに衰えるのが激しい楽器なのだらうか。フ抜けてカントロになってしまったといふのは少々言い過ぎだらうか。

しかし、この明るく平和な若きシューベルトの作品を実に見事に完成させたメンデルスゾーンといふヴィオラ奏者は実にすばらしい。多くの人々に聞いてもらいたい作品である。


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