浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

メニューヒン シューベルトのロンド・ブリランテ

2006年10月19日 | 提琴弾き
若き日のメニューヒンのレコヲドはどれも素晴らしいと思ふが、このシューベルトの演奏は特に瑞々しさを感じる名演だ。伴奏は妹のへフツィバーである。

録音は1938年の5月6日にHMVによって行われた。この9年後、ルツェルン音楽祭でフルトヴェングラーと協演し、ナチへの協力の嫌疑がかかっていたフルトヴェングラーを擁護したのは有名な話だ。若かりし頃のメニューヒンの演奏は、フルトヴェングラーと協演するやうになった10年後の演奏とは少々スタイルが異なるやうに感じる。ヴィブラートのかけ方や音色に関してそのやうに感じるのか、提琴の奏法に詳しくないためうまく表現できないのが残念だ。若い頃は演奏法が古風だったのかも知れない。あるいは、10年間で円熟味を増し音楽づくりに渋みが加わったのかも知れない。

メニューヒンは多くの指揮者と協演し、レコヲドも多く残してゐるが、フルトヴェングラーとのいくつかの協演やミュンシュとやったブルッフなどは、演奏家が互いに影響を与え合って一つの音楽の中で燃焼していくさまをまざまざと見せつけてくれる。このことは同曲の別の共演者との演奏と比較すれば分かる。

シューベルトのロンド・ブリランテはこの演奏を聴くまでは知らなかったが、快活さと憂いが同居するシューベルト独特の世界が凝縮されてゐる。このCDには他にシューマンとピツェッティの奏鳴曲がカップリングされている。

盤は、英國Biddulph社のSP復刻CD LAB067。


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