浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ミトロプーロスの洋琴を堪能できるレイファーの狂詩曲

2008年11月28日 | もう一つの顔
ドミトリ・ミトロプーロスの洋琴はプロコフィエフの協奏曲で一度取り上げてゐる。激しい音楽に見せるエキセントリックな一面を愉しんだが、今日の音楽はマイナーな作品(忘れ去られた作品)ながら、実に美しくセンスに満ち溢れた名曲であり、ミトロプーロスの繊細で美しい洋琴の音色を堪能できる、僕のお勧めの1枚である。

まずなんと言っても、この作品自体が素晴らしいのだ。チャールズ・マルティン・レイファーといふ作曲家をご存知の方は少ないだらう。どれくらい少ないかは分からないが、恐らく日本國に住む善良な支那人よりも更に少ないだらう。しかし、この忘れ去られた作家の狂詩曲を大指揮者、ミトロプーロスがレコヲドに残してゐるのだから驚きである。それなりの期待感を持ってCDを取り寄せてみたが、やはり予感的中だ。

レイファーは1861年に独逸に生まれたが伯林でヨアヒムに提琴を学び、その後、仏蘭西に渡りギローに作曲を学んだ。1881年に渡米し、ボストン響の提琴奏者として20年活動したが、1903年に退団して1935年までの22年間、マサチューセッツで作曲に専念した。今日の「2つの狂詩曲」は1901年の作品である。

イングリッシュ・ホルン、トランペット、洋琴と管絃樂の作品、サクソフォン協奏曲、ビオラ・ダ・モーレの数々の作品、オルガンと管絃樂、ジャズバンドの為の作品など変わった編成の作品が多く、中でもサックスとビオラ・ダ・モーレの組み合わせは驚きだ。楽器同士の新たなコラボレーションを模索した作家だったやうだ。「2つの狂詩曲」も亜米利加のヤンキーの雰囲気を全く持たない純仏蘭西風の音楽であり、今までに聴いたどの米國作品よりも高尚で気品がある。

「プール」と「バグパイプ」といふ標題の付いた2つの小品から成るが、「プール」が仏蘭西的で美しい。フォーレとツェムリンスキーを足してお湯で割ったやうなかほりがする。「バグパイプ」の方はドビュッシー風だ。ミトロプーロスの洋琴は残響の多い録音の中で美しく響き、プロコフィエフのときに持った打楽器的な印象はこのレコヲドからは全く感じられず、終始柔らかい表情の洋琴を聴くことができる。

演奏は、ミルトン・ケイティムスのヴィオラ、ハロルド・ゴンベルグのオーボエ、ミトロプーロスの洋琴で、コロムビアのLP盤、ML5603のオリジナルテープからのリマスターである。

盤は、米國Pantheon Legendsによるコレクター用限定盤 番号なし。写真でお分かりのやうに、このCDはNBC響で活躍した偉大なヴィオラ奏者、ミルトン・ケイティムスのアルバムである。


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