浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

またまたミハウォフスキ登場 ショパンの前奏曲2つ

2007年08月05日 | 洋琴弾き
【前回までのあらすじ】
7日間世界1周の旅を終えたバニーちゃんは、子犬を連れて帰って来た。パブロフ博士はこの子犬にベルを鳴らして餌を与える実験をした結果、ベルを鳴らすと反射的にパブロフ博士が子犬に餌を与えるやうになった。(パブロフ博士のお話を読みたい方は、土屋先生の「ツチヤの軽はずみ」文春文庫を購入して読まれることをお勧めする。立ち読みは許されないらしい。)

さて、ミハウォフスキのショパンだが、子犬のワルツ、軍隊ポロネーズに続いて前奏曲も大変興味深い表現に満ちてゐるのでご紹介したい。

1905年のG&Tレコヲドに残されたのは、コラール風の第20番とこれを聴くとお腹が痛くなることで知られてゐる第7番の2曲で、一つのシリンダーに吹き込まれてゐるやうだ。このことが後に大きな問題に発展するのだ。

先ず、非常にゆったりとしたテンポで第20番が厳かに演奏される。どれほどの遅さかといふと、これ以上ゆったりとした演奏は小学生の初見演奏以外に聴いたことがないほどだ。続いて某製薬メーカーのCMで有名な第7番が演奏されるのだが、この曲も非常にゆっくりと演奏してゐて、アルペジオ風に分散され浮き立たせられた右手の旋律が独特の味わいを醸し出す。こっそりとオクターヴ下の低音をゴロンゴロンと付けてゐる辺りは油断ならない。

1回で止めれば良かったのだらうが、ミハウォフスキ大先生は突然、勝手に第7番を繰り返して演奏を続ける。慌てた技師は腕をぐるぐると回して大先生に早く終わるやうに合図を送る。大先生はそれに気づいたのか、途中からテンポを倍に上げてなんとか蝋管シリンダーのぎりぎりのところで最終音に辿り着くも、本来あるべきペダリングによる余韻は収まりきれずに終わってしまふ。こんな妄想が広がる他に類を見ない名演奏なのである。【続く】

盤は、英國Appian P&Rによる蝋管の復刻CD APR5531。


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