浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ジークフリート・ワーグナー「熊の毛皮を着た男」自演 アーベントロートとの聴き比べ

2007年06月17日 | 指揮者
ワーグナーの音楽を単純にしたやうな序曲「熊の毛皮を着たおっさん」を数種類の演奏で聴いて愉しんでゐる。颯爽とした冒頭部の動機は幾度も現れ、曲想は大変分かり易い。時代は父リヒャルトから逆行して浪漫派前期辺りの感じがするのが不思議だ。

まず、コンラート・バッハ指揮の最近の録音で聴いて曲の雰囲気を掴む。続いてアーベントロートと作者自身の演奏を聴き比べてみた。作者自身の演奏は伯林国立歌劇場管絃團とのらっぱ吹込みによるレコヲドなので、時間の制約の中、異常な速度でSP2面に収めたのではないだらうか。これが作者自身の解釈ととるのはいささか早計ではないだらうか。こんな解釈が良いと思ってゐる人は世界中に7人も居ないだらう。

アーベントロートの演奏は1945年1月19日にライプツィッヒゲバントハウス管絃團とやったもので、終戦直前の悲惨な状況下での録音である。テンポは最新録音のCDとほぼ同じだ。これが普通だと思ふ。

曲には何らかのストーリーがあるのだらうが詳細は知らない。冒頭の勇ましい動機に続いて木管による描写的な場面、弦楽によるロマンティックな場面などが次々に現れ、最後には冒頭の動機が再び登場し曲を締めくくってゐる。

大作曲家の息子として、ジークフリートについてはいろいろと言ふ人が多いが、僕は完全な駄作だとは思ってゐない。バイロイトに一大文化を築いたこの時代の独逸といふ國を知る上で貴重な遺産であり、当時の空気を感じ取ることができて嬉しい限りだ。

盤は、独逸Archipelによる復刻CD ARPCD0275-2。


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