楊令伝を数日前に読了した。
この本は中国に勤めることになり、文化を知ることに役にたつと思い読みだした。本来水滸伝の方から読んだほうが良かったようだけど、水滸伝は全19巻、楊令伝は15巻、19巻はキツイな15巻なら、とか先日亡くなってしまった知り合いが読んでいて面白いと言っていたなどの単純な理由から、読みだした。
去年から、1年かかりかな。中国で読むので最初は文庫本を買ったりしていたけど、日本へ戻ったので、9巻くらいからは図書館で単行本を借りて読んだ。文庫本より少し字が大きくて読みやすいから。。。文庫本は、巻末に作家などの感想がある、それが読みたければ、文庫本がおすすめ。
読んでみると、中国の文化を知るには、なかなか役立った。香辛料を袋に入れて持ち歩き、戦場で焼いた肉にそれをかけて食べるなどの描写は、さもありなんという感じ。
最初の方は戦が主体で描かれているが、中盤から後半にかけては、帝がいて強い将軍が戦で勝つことによって国家が成り立つということに疑問を持ち、帝のいない民衆のための国家づくりという理想あるいは夢の実現に向かう者達が描かれている。北方謙三は、このあたりに思い入れがあるのかな。国を成り立たせるには税が必要だ、それを少なくして、国の物産などで税を徴収するだけでなく、交易から国家の財政を成り立たせるというのは、まさに戦国時代から、今のように戦わないで国家の力を得るように変わったプロセスの中には、こんな時代もあったんだろうなと思わせるスケールの大きなテーマのような気がした。
そういう意味では、読者には物足りないのかもしれない。
楊令伝 - Wikipedia
作者の北方が「『水滸伝』は反権力をテーマにした「夢」の話であり、『楊令伝』は新国家建設をテーマにした「現実」の話である」と言及するように、物語中盤で北宋という権力を打倒した梁山泊が逆に権力側となり、南宋や金といった勢力に囲まれながら新しい国家を建設するために楊令が苦悩しながらも梁山泊を導いていく様を中心に描かれていく。
感想を書いたサイトを幾つか紹介する。アマゾンでは、水滸伝と比べて、少しだけ評価が低いようだ。
北方謙三『楊令伝』の感想 - 優しさなんかない
『楊令伝』は、前半こそ、その「志」を追いかける物語なのだが、中盤からそれが実現し始める。正確にいえば、その「志」が具体的な形をとり始め、それが目に映るようになる。
その形は、梁山泊を混乱させる。そして、読者も混乱していく。この物語の行く先はなんなのか、と。
夢は、夢のままであるからこそ美しい、というアフォリズムはきっとどこかにあるだろう。夢が叶ってしまえば、希望は幻滅に変ることもある。
Amazon.co.jp: 北方謙三『楊令伝』完結BOX: 北方 謙三: 本
北方水滸伝に心を震わせ、何度も目頭を熱くした男(女も)は、当然のように読むべきもの。しかし、水滸伝の熱のありようは「次の世代」では変化している。これは北方の計算のとおりなのだろうが、水滸伝の血のたぎりをもう一度夢見る中年読者にとってはこれはやはり時代が変わる、ということなんだなぁ、とノスタルジックに感じてしまった。私ごときが星1個減点するのはおこがましいが、水滸伝のように「おまけ」がついていてほしかった(まるで子供?)
公式サイト、内容豊富でみきれていません。
北方謙三「大水滸シリーズ」◆中国歴史小説『水滸伝』『楊令伝』『岳飛伝』◆|集英社
地下書庫日誌 『楊令伝』読了
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます