昨日、カズオ・イシグロの「クララとお日さま」読了しました。昨日はほぼ一日この本を読んでいました。
この本は、朝日新聞の読書欄の紹介を読んで読みたいと思って、浜松図書館の蔵書を検索したけど、当然蔵書にはなくて、購入依頼をして何回か浜松図書館で検索に引っかかるかと思って1ヶ月位してやっとヒットして予約を入れて4/26に図書館で借りました。予約してから、人気の本らしく、浜松図書館でも手に入れるのは時間がかかったようだ。そして借りてから、4日位(実質2〜3日)で読んでしまいました。それくらい面白い内容、ここ数年でこれほど面白く読めた本はこれが一番です。
さて内容は、AF(artificial friend)すなわちAI(artificial intelligence)のロボット「クララ」が主人公=わたしという内容の本です。それ以外の登場人物は、ジョジーという女の子、その母親(クリシー)、家政婦のミランダ、隣人のリックとその母親(ヘレン)、その他クリシー、ヘレンの元夫など。クララの周りの出来事をクララがいろいろ語っていく形で展開する。
私はカズオ・イシグロの作品は以下のようにこれまで数冊読んでいるし、ブログにも取り上げている。私は彼の小説のファンである。
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カズオ・イシグロが気になる〜ノーベル賞当然って感じ〜 - 温故知新~温新知故?
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さて、この小説はロボットが主人公なので、ロボットならではの独特な表現がある。それはターミネータでシュワルツネッガーがターゲットを見ている画面を覚えているだろうか?目で見る映像に検知したターゲットの情報が文字で表されるような表現でよく示されている。それと同様にクララが周りの情景を見る際に自分の見ている情景がボックスに区分されているとの表現がある。このような表現は面白い。
そして、クララは最新型のAFではないとのことだ。最新型はBF3でクララはBF2型。
また、嗅覚がなかったり、友達のリックは遺伝子操作である(と思われる)「向上処置」が行われてない、それを受けた子供と受けていない子どもではその後の人生に決定的な違いがあるとのことである。このような設定も興味深い。
さて、エンジニア的に、興味深く思った点について述べる。
まず、クララが店舗で、売られるまで過ごし、やっとジョジーの家に行くシーンや生まれてはじめて外に出るシーンのところで、色々考えさせられた。それははじめて、砂利道や草が生える道を進む描写だ。初めて、砂利で一歩一歩安定しない一歩を刻むことや、道がなく草をかき分けて進むのは初めての体験だろう。現在、自動運転やAIということでAIは人間より優れていて、夢の世界が近づいているとの話題が多いが、そう、人間は生まれて例えば20歳になるまでは、20年間に渡っていろいろな経験や体験をして、失敗を見たり、成功を見たりした上で、直面した課題を解決する場面に遭遇して、その場で判断している。以前白い車に惑わsれてセンサーが市場に反応しなかった、黒い背景で黒い歩行者には気が付きにくい、大きな道路を歩行者が横断することは想定外だったなどのニュースが有ったと思う。AIにはそれらの経験はない上での、生死にかかわる判断をしなければならないわけだ。
自動運転車が、製品として製品ラインで作られ市場で使われ、AIにとっては、未経験の体験をビッグデータなどの知見(いわゆる耳学問)で、いきなり初めて道路に出て、それを使っていくことになるのだと思うと、結構恐ろしいことではないだろうか?機械やCPUやセンサーには、仮にそれが、0.1%でもかならず誤差がある。そして、それの上限のものと下限のものとの組み合わせで市場に出てくることになる。障害物を発見し、それとぶつかるまでの時間を0.1秒単位で推定し危険回避の対応をするのだろうけど、製品個体のバラツキで上限のものと下限のものが現実に存在する。また、エンジンの出力や加速力の違いで障害物に到達する時間は変わる。エンジンの出力は現実にはプラスマイナス3%の誤差は生産ライン上では当たり前にある。このように考えると、いかに自動運転で危険回避というのは頼りないことかとみなさんも気がつくのではないだろうか?私は、自動運転の専門家ではないので、詳細はわからないし、現実は心配ないのかもしれないが、現時点での私の知識からは自動運転はいかに頼りないものかと思ってしまう。
以前にも何回かこのブログで述べているけど、やはりAIに命を託すということは、どれほど、危ういことかを表しているかを再認識させられた。
また、以下はエンジニアリングとは関係ないが、私はお日さまは、冬場など家の吹き抜けから入ってくる日差しがあるないかで部屋が温かいか寒いかが大違いなので、いつもお日さまの凄さを感じていたのでクララのお日さまの神聖化ぶりは驚かなかったが、お日さまは違うなにかの象徴ではとの指摘は、読後に書評を検索してみて、確かにそう思って読んだらまた違う感想になるなと思った。
カズオ・イシグロ『クララとお日さま』の不気味さ【感想・考察】
語り手のクララは、AF(人工知能が搭載されたロボット)であり、人間の感覚とは少し違った知覚を持っている。
わかりやすいのは、クララには嗅覚がないことである。
しかし、それ以上にこの作品がテーマの一つとしているのは、AFがどのように事象を認知するのかについてである。
クララは、視覚的に物体を見るとき、対象を分割して認知する。
格差社会・コミュニティ社会
そしてこの作品がもう一つのテーマにしているのは、格差社会とコミュニティ社会(この表現が正しいのかはわからないが)である。
この世界では遺伝子操作である(と思われる)「向上処置」が行われており、それを受けた子供と受けていない子どもではその後の人生に決定的な違いがある。
実のところ、このような格差社会というテーマ自体は、作品の本筋とはあまり関係がないように思う。これは私の読み込みが浅いからかもしれないが、もし社会に屹立する断絶というテーマを読みたいのであれば『わたしを離さないで』の方がお薦めかもしれない。
「お日さま」とは何なのか?
最後に本題に入りたい。
この作品の最大の謎は、「お日さま」である。
クララたちAFは、太陽光で動く。
それゆえ、クララは「お日さま」を神聖視している。クララの「お日さま」の捉え方は、明らかにこの世界を生きている私たちとは異なっている。
クララはことあるごとに、「お日さま」を気にする。「お日さま」が機嫌を損ねていないか、「お日さま」は恵みを与えてくれるのか……などなど。
そして、あたかも「お日さま」に 超自然的な力があるかのようにーーそしてそれが当たり前かのように、クララは叙述を続けるのだ。
このようにクララが神聖視する「お日さま」は、私たちが普段見ている「太陽」と同じものなのだろうか?
恐らくこの作品を読んだ読者は、この疑問が常に浮かんでいたはずだ。
「お日さま」 というのは、太陽ではなく、何かの装置なのではないか? と。
カズオ・イシグロ「クララとお日さま」土屋政雄訳 読んだ!
というのも、クララはB2型のAF(Artificial Friend)で太陽光を栄養源としている。この設定は全編を通して貫かれており、場面で光に関する描写が多いのは、クララが常に光を求めているからだろう。
「ボックス」という視界や認知システムの構造が説明されることなく当然のように描かれるのも、読者を想定していないクララのためのクララの語りを意識しているからだろう。この辺りの文体(というより意図的な説明カット)は非常に好みだし、とても良かったと思う。
第6章では、端的に「人を人たらしめるものは人の何処に存在するか」という話になる。科学技術は「人の中身」や「神の不在」を精査するのに適しており、実際にそれが可能になる日も近い。しかしながら、クララは「人の本質=魂」は人の外部、つまりその人を囲む他者にあるのだと考える。
この翻訳者である土屋政雄さんはカズオ・イシグロの作品をよく通訳しているようだ。その定評のある土屋さんなので、以下にあるようにsharp pencilをシャーピ鉛筆などと表現しているのはどういう意図があるのか、興味あるところだ
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堀正岳(ほりまさたけ)@mehori
「クララとお日さま」読了。可愛らしい話でした。でもカズオ・イシグロ独特の不安の盛り上げ方は共感性羞恥心もちにはたいへん
あと、原文と並行して読みましたが sharp pencil が「シャーピ鉛筆」で、oblong (長方形、長い楕円形)が「オブロン端末」になるのはなんでだろう(笑)3月9日
アマゾンの書評でも好評のようだ。
クララとお日さま 単行本 – 2021/3/2
カズオ・イシグロ (著), 土屋 政雄 (翻訳)
パンダの背中
いつもながら考えさせられる
朝イチで購入、読了した。カズオイシグロと言えば、信用できない語り手、書き換えられた記憶、がお約束だが、今回はAIロボが語り手なので大丈夫。ただし、ロボには欠けている部分がある。それが上手く機能して、人間のいい部分やダメな部分を照らしている。ロボの情報処理が追いつかない?時の物の見え方が独特で面白い。少年と少女の交流はとても微笑ましかった。
人工友人であるロボ、クララの心は友愛に満ちて温かい。ところが同じ愛でも、人間のそれは素敵と手放しで言えるものではない。人間が人間であるがゆえの、どうしようもない悲しい部分を描いているのは、いつものカズオイシグロだった。
また、普段はロボの友人=ドラえもん♪などど気軽に考えているが、AIロボという商品を友人にするとはどういうことか、真面目に考えさせられた。
日和下駄
AIの美しく無垢な魂
まさに巻を措く能わずで、1日で読了しました。面白く、かつ、リーダビリティにも優れた作品です。ノーベル賞受賞後ということで、それなりのプレッシャーはあったと思うのですが、特に奇を衒うでもなく、淡々といつものイシグロワールドが展開されています。
極端な設定を置くことで、人間とは何か、心とは何かを描き出そうとするその手法は、なんとなく「わたしを離さないで」のテイストを思い起こさせます。
友人への献身、無償の愛、自己犠牲など人間にとって最高の精神的・道徳的価値とされるものがロボットに体現されていることは、逆説的ですが、その意図においてとても効果的となっているように思います。
ロボットであるクララの目を通して映る人間の嫉妬や後悔、過去への拘泥といった愚かさ、醜さの描写には、はっと胸を打つものがあります。
しかし、何にも増して、クララの心の動き、内面の描き方が素晴らしく、この純で無垢な魂の持ち主に誰もが感情移入してしまうことでしょう。一体、どれだけの人がこのロボットには心がない、と言えるでしょうか。それほどまでに、クララというロボットの造型がすばらしく、解説の河内恵子氏が「クララはカズオ・イシグロが創ったもっとも美しい子供だ」という言葉に頷けます。
異論はあると思いますが、個人的にはイシグロ作品の中でも、トップ3に入るお勧めの傑作です。
以下のように、すごく評判がよく売れているようだ。映画化もされるようだ。ぜひ、見てみたい。
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まあ、すごい小説に出会えました。今回、いままで、引用などはライブドアブログのブログ投稿という機能を使って、かんたんに投稿できていましたが、今回、Big Surの更新したせいか?ライブドアブログの仕様が変わったせいかうまく使えなくなり、Gooブログの機能でなんとか作成したため、時間がかかり、出来栄えもイマイチとなってしましたが、我慢してください。今後新しいやり方を確立したいと思います。
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