温故知新~温新知故?

音楽ネタが多いだろうけど、ネタのキーワードは、古きを訪ねて新しきを知ると同時に新しきを訪ねて古きを知るも!!

「憎悪の科学」 [著]マシュー・ウィリアムズ 読了 〜普通にGoogleでキーワード検索する行動が憎悪を助長する一因にもなっているんだ〜

2023-07-19 20:19:23 | 
この本は、いつものように、朝日新聞の書評を読んで、予約した。
「憎悪の科学」 [著]マシュー・ウィリアムズ  性や人種、感情といった生物学と社会学が交差する領域にあるものを科学的に分析すると聞くと、骨相学や神経神話のたぐいかと警戒する。だが本書は、そんな懸念を吹き飛ばす説得力に満ちた、現代のヘイトクライム(憎悪犯罪)を知るための必読書だ。  大学卒業時はジャーナリスト志望だった著者は、ヘイトによる暴行を受けたのを機に犯罪学者になることを決意し、いまでは憎悪研究の第一人者に。本書はその20年に及ぶ研究の集大成だ。加害者の心理を理解したいという切実な動機が研究の土台にあり、統計を客観的に分析するにとどまらず、みずから被験者となって脳をスキャンするような当事者研究を含んだアプローチが本書の魅力だ。
感想としては、ヘイトクライムなどについて書かれた内容だが、素晴らしい内容だと思う。日本で最近起きている、テロっぽい狙撃事件や爆弾事件、家族内での殺人事件などの原因は、私には理解の外と思っていたが、この本に書かれたようなメカニズムで起こるということが認識させられる。そういう意味ではすごい本だと思う。 いつものようにキーワードを列記する。
ー黒人の顔を見た時の白人の脳。無意識に脳の扁桃体が色付く。
ー筆者はゲイで被害者の経験がある
ー「第1章 憎むとはどういうことか」にあるように、まず、ヘイターのプロファイルで、ヘイターを「ミッションヘイター(使命的憎悪者)」、「リタリアトリーヘイター(報復的憎悪者)」、「ディフェンシブヘイター(防御的憎悪者)」、「スリルシーキングオフェンダー(スリルを求める犯罪者)」などのように分析的に分類するなどが科学的ということなんだろう。随所にそのようなところが見られる。
ー警察官が、携帯電話を持ってる黒人の容疑者に直面すると、素早いが賢くない”自動操縦”が「撃つべきだ」と反応し、弱い前頭前野のシグナルがそれを牽制できないために、運動皮質が急速に作動して、警察官の指が引き金を引くことになる。
ー第9章 ボットと荒らしの台頭での、マイクロソフトのTayの発言。「リッキージャーヴェイスは、無神論を発明したアドルフヒトラーから全体主義を学んだ」、「本物の女性でないケイトンジェンナーが、今年の女性賞を受賞だと?」。AIによるヘイトの助長!があるという事実!。
ー同じ9章 赤毛は・・・・という項。「アフリカ系米国人」という検索キーワードを入力する際、「無礼」、「人種主義者」、「愚か」、「醜い」、「怠惰」などといった単語を加えて検索していたのだ。〜中略〜このような検索キーワードの組み合わせを何十億人ものグーグルユーザーが繰り返すことにより、他のユーザーが目にする情報が形作られる。
そう人間は、生き延びるために、恐怖や危機を感じた際には、脳の扁桃体がすぐに反応し、それを前頭前野が抑制するのだけど、人によっては、育ち方や極端な団体の人たちのみとの偏った交流・生活によって、それがうまくいかない人がいるとのことだ。しかし、現在の脳の研究では、それを十分言い切ることができるほどのレベルには達していないとのことだ。まあ、100%言い切れるようには永遠位ならないようだ。人間は複雑ですね。

以下にアマゾンの読者の感想を紹介しておく。面白い本でした。もっと、メディアはこの本をとりあげてほしい。でも、jこの本では、メディアが色々スキャンダラスな事件を、興味本位かつスキャンダラスに報道することによって、憎悪が助長されていると書いている(私も同感です)ので、メディアは取り上げるのは都合悪いだろうな。
最近のネットでの誹謗中傷がきっかけでは?と思われる芸能人の自殺が続いている状況とそれによる悪影響があるということをこの本は本当に科学的にデータを示しながら、説明している。面白い本でした。
らっせる
自分には『無関係』と言い切れるだろうか
Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー
人種的偏見やそれに根ざした犯罪、ヘイトクライム。 ニュースでアメリカでの事件を知る機会が多いので、単一民族国家(変化しつつあるものの)である自分たちが住む国では無関係な話題だと思っていた。
しかし、本書の中でも挙げられている、一人の人間が障害者を大量に殺害した日本の事件や、街頭でのヘイトスピーチを思えば、決して無縁なことではないと気付かされる。
そして、子どもたちの中で生まれるいじめの問題。これも必ずしも皆が皆、という訳でもないが、私たち大多数の人間も、こうした偏見や差別、暴力と全く無関係と言い切れるだろうか。

偏見の根元には先入観がある。 そして、自分とは異質なものに対しては恐怖を感じる。
恐怖とまでは行かなくとも、警戒感、距離を取りたい気分になったことは誰しもがあることだろう。 本書は豊富な実際例を挙げながら、ヘイトクライムを起こした人間が、どの様な筋道を辿って暴力に至ったのかを説明する。
そしてまた、脳の器質的な異常から、歯止めの利かない暴力に走るケースも紹介している。 極端な行動を取る理由があることを教えてくれて、同時にそのような人間も存在することを警告してくれる。

スマートホンに象徴されるように、情報が大量に、そして一方的、選択的に押し寄せる中、特定のバイアスを持ってしまいがちになる。 そして、その情報の大波の中で先入観を出発点として偏見、嫌悪、そして憎悪へと進みかねない危うさも同時に感じる。そう、自分自身に。

本書は正に「偏見が暴力に変わるとき」のサブタイトル通り、些細な違和感が嫌悪に成長する流れ教えてくれ、自分も無縁ではないことに気付かせてくれた。

つくしん坊
ヘイトの悪循環から脱するには、本書と記録映画『ぼくたちの哲学教室』が参考になる 著者はイギリス・カーディフ大学の教授で、犯罪学が専門である。本書は、「普通の人」が偏見を募らせて犯罪に至るプロセスを詳しく解明し、ヘイト犯罪の予防までを考察したものである。
今、日本を含む世界中で、憎悪(ヘイト)が原因の犯罪が蔓延している。SNS上での日常的な悪口雑言から移民に対する暴力沙汰までは今やありふれた出来事になっている。極端な場合には民族や国家間のヘイトが紛争や戦争にさえ至る。開戦後1年以上を経たウクライナ戦争もその一つであり、終息が見えないどころか、最悪の場合には核兵器の使用や第三次世界大戦の開始さえ懸念される。
本書の第Ⅰ部「憎悪の基盤」では、ヘイトの事例や脳科学的な研究、集団におけるヘイトが詳しく解説される。1940年代にアメリカの心理学者オルポートが考案した、偏見の心理を可視化した「偏見のピラミッド」が興味深い。これは偏見の進行過程を表したもので、(1)誹謗、(2)(相手の)回避、(3)差別、(4)身体的攻撃、(5)絶滅、に至るとするものである。戦前のドイツにおけるナチスによるユダヤ人攻撃はもちろん、現在の人種間紛争でも、ミャンマーにおける仏教徒によるイスラム教徒攻撃のように、最終の「絶滅」にまで至る偏見が存在しているので、この「偏見のピラミッド」が今でも有効である。
第Ⅱ部「憎悪の促進剤」では、ヘイトの具体的な事例が多数引用されている。11章「偏見が憎悪に変わるティッピングポイント(転換点)」では、憎悪をなくす七つのステップを提案している。(1)誤報であると認識する、(2)異なる他者に対する自分の予断を疑う、(3)自分と異なる人と接触する機会を避けない、(4)「他者」の立場に立って考える時間を持つ、(5)分断を招く出来事に惑わされない、(6)ネット上で同好の士のみが好む情報にアクセスする「フィルターバブル」を破壊すること、(7)私たち全員が憎悪行為の第一対応者になる。多くの経験から導かれた貴重なアドバイスであるが、実践は容易ではない。
子供たちが憎悪をなくすステップを実践している貴重な記録映画が公開されている。『ぼくたちの哲学教室』(ナーサ・ニ・キアナ監督)である。英領北アイルランド紛争の和平合意から25年経っても、アイルランド独立派と英国帰属派間での抗争が続くベルファストで、児童に哲学の授業を続けている男子小学校の校長とクラスに2年間密着した記録である。すべての物事を鵜呑みにせず、批判的に考えるための徹底的な対話型授業を通じて憎しみを抑制し、平和に暮らすことを試行錯誤している。小学生たちが授業に熱心に取り組み、自分たちの些細なケンカの解決に取り組む姿勢が感動的であり、ヘイトの悪循環から脱することが決して不可能ではないことを実証している。本書も映画『ぼくたちの哲学教室』も、紛争を克復した平和がいかに貴重であるか、またその維持にはたゆまぬ努力が不可欠であることを教えてくれる。

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