温故知新~温新知故?

音楽ネタが多いだろうけど、ネタのキーワードは、古きを訪ねて新しきを知ると同時に新しきを訪ねて古きを知るも!!

あきらめる 山崎ナオコーラ 著 読了 〜新しい未知の土地に移住する際にはエリートだけでなく「弱者」が不可欠だそうだ。そうだろう!〜

2024-07-24 20:21:50 | 
この本は、おそらく朝日新聞の批評欄かなんかで読んで、「あきらめる」の語源と火星移住というキーワードに反応したと思った。
「あきらめる」 [著]山崎ナオコーラ
 たしかに現実世界だけれども、ちょっと違う。「すこしふしぎ」な方のSF小説だ。
 早乙女雄大は川沿いを散歩中に、子供を連れた同じマンションの住人・輝(あきら)に出くわす。
輝は「親と見える人」だ。ジェンダー(社会的性差)は薄まり、性別を表す言葉は避けられている世界。ゆえに、母も父もない。
態度や言葉選びを細かく配慮する雄大は、アップデート済みの価値観を持つ〝成熟者〟である。
 成熟者とは、老人・高齢者・シニアと呼ばれることを好まない人々が増え、新しく生まれた流行(はや)り言葉。
かように言葉は時代と人の心を映す。
タイトルの「あきらめる」も然(しか)り。語源は「明らかにする」だから、古語の「あきらむ」は物事を明晰(めいせき)にする、よい意味合いだったという。

火星移住についてはイーロンマスクもご執心なので、興味を持っていた。だから、実際火星移住って小説で書くとどうなのかという興味がいっぱいだった。それを裏切らない内容だった。私は、火星移住のまじめな技術的難易度などの情報より、本当に火星移住したら、普通の日常生活はどんなのようになり、何が不便で、何が便利なのかという日常生活を想像することに興味がある。
上の書評にも書いてあるけど、火星に移住することが可能になる未来では、老人・高齢者・シニアと呼ばれることを好まない人々は、成熟者という言葉を使うようになるというのは、面白い。高齢者、elder peopleでなくてポジティブな成熟者という言葉を提示した著者は大したもんです。

この著書のストーリーとは関係ないが、著者の想いが溢れていると私が思った気になったキーワードを、いつものように紹介する。
ー大学などの機関から地位が与えられたアーティストだけが堂々と意見を言い、在野の人間には発言権がない。世間の人々は、肩書きのある人だけをアーティストと捉えている。”著者は、色々な場面でこのような経験をしているのだろう”
ー過去も未来も見えなくなり、社会に居場所がないと感じられるとき、悪口はいくらでも思いつく。”SNSでの誹謗中傷などが話題だが、そうか、みない場所がないと感じてるんだ”
ー「社会批判を論理性を持って行う」。国や社会の批判をしなければ生き残れない。つまり、国を批判しながら国に与する、という複雑怪奇なことをしなければならない。”ああ、ありそう。コメンテーターもそうかな?”
ー(火星への移動中の生活)ただ、いつもふわふわと浮いて移動しているわけで、天井でも床でも、手で触りに行くのは同じ行動だ。収納は、天井、左右の壁、床、すべてが利用されている。言葉では「天井」「床」などと呼びつつ、使い方はどの壁も同じ。”御意。著者は経験者にヒアリングしたのかな”
ー・・・、と強靭な精神を体力を持ち、IQが高く、リーダーシップが取れる働き盛りの人たちが集まり、火星基地を築いていった。だが、街ができ、社会が生まれ始めると、どうにもうまくいかないことが増えた。”まあ、未知の世界に人を住まわせようとするとき、優秀な人を優先的に活かせようと思うだろうね。でも、それでは、うかむいかないんだろう”
ー人間社会の維持には「弱者」の活躍とそのケアが不可欠であること、そして、その「弱者」が誰であるかの事前の規定には意味がないということが新しい常識になっていった。”今の政治家やどっかの首長に聞かせたいし、この本を読んで自らのアクションを振り返って改善して欲しい”
ーためし行動とは、自分が愛されているかどうか不安な子供が、親にどこまで受け止めてもらえるかを試すために反抗的な態度や暴力的な行為を繰り返すことだ。”私は教育に関しては素人なのだが、教育のプロには常識なんでしょうね。”
ー火星の人口は地球に比べてぐっと少ない、それでいて設備やスタッフは充実している。そのため、病院などでの待ち時間は地球の公的機関では考えられないくらい短かった。”このような火星での日常生活の記述が、私には興味深い、このことをわざわざ記述している著者は、わたしと同じ興味の視点を持っているようだ。”
ーファザー・コンプレックスという古い言葉を聞いたことがある。その言葉の、本来の意味はよく知らない。とにかく、その略語がファザコンだ。今では親の性別を表す言葉は滅多に使われなくなっているから、ファザーもファザー・コンプレックスもファザコンも、新聞でもインターネットでもほとんど見ないし、聞かない。死語というものになっている。”なるほど、なるほど”
ー地球の山だったらさ、登山開始直後は、民家があって、木や花があって、登るにつれて、だんだん低い木ばかりになって、花も素朴なものになって、やがては植物が全然なくなって、岩だらけになって、空気が薄くなって、・・・・・って、その変化が、なんていうか登山の一歩一歩を応援してくれるんだよな。”火星では、酸化鉄の赤い砂や赤い岩ばかりで、登山の際の景色の変化がないことを記述している、これも、なるほど!。”