小保方さんの件は、未だにけっこうな話題になっていますね。対決だとか。でも、私は以下に紹介したサイトに非常に近い意見だ。
STAP細胞の問題はどうして起きたのか 片瀬久美子 - SYNODOS JOURNAL(シノドス・ジャーナル) - 朝日新聞社(WEBRONZA)
捏造問題は過去何回か起きており、それが繰り返されているというのは私の実感と同じ。
そう勝手な憶測が、まことしやかに語られている。
これらは、冷静な分析だと思う。
私も査読した経験があるが、全くここで書かれている通り、再現性を確かめるなんてことは、そもそも査読という行為の範囲外です。
このような緻密で、冷静な分析が必要です。新聞とかが本来すべきだけど、ジャーナリストにそういう姿勢は最近全く失われているように思う。自分の地道な分析ではなく、人の意見のうけうりが多い。
リコール対策でもお上(かみ)に問われるのは再現性です。問題となった事象が再現して、初めて原因が正しいと認知され、その原因対策が有効だと認められるのです。しかし、この問題を再現するのが非常に難しい。
現在の世の中は、話題性を求めているから、こうなって当然なのかもしれないですね。
理研に限らないでしょう。
そうなんです、過去から何も改善していないのです。
STAP細胞の問題はどうして起きたのか 片瀬久美子 - SYNODOS JOURNAL(シノドス・ジャーナル) - 朝日新聞社(WEBRONZA)
ノーベル賞級の発見だとして世間が熱狂ムードにある中、私は違和感を感じ、次のようにツイッターでつぶやきました。
「STAP細胞の研究についての色々な意見を見て思ったのですが、論文の共著者に有名な研究者の名前があるからきっと信用できるだろうという意見が散見されました。共著者に著名な研究者がいるかどうかではなくて論文の中身で判断しないと危ういです。過去の捏造問題から何も学んでいないことになります[*1]」
捏造問題は過去何回か起きており、それが繰り返されているというのは私の実感と同じ。
論文公表直後から、再現できないという報告が相次ぎ、「小保方さんが自分でも意識していないコツがあるのではないか?」「成功に必要な手順が特許の関係で隠されているのではないか?」などという憶測がなされ始めました。
そう勝手な憶測が、まことしやかに語られている。
不注意による間違えではなく、故意による操作が入るほど悪質性が高くなります。DNA電気泳動画像の切り貼りは、故意に操作しないとできません。また、多能性を示した組織画像についても、博士論文の画像の文字の部分を黒い四角で塗りつぶしてその上から新たに文字を書き入れており、これも故意の操作がされています。いずれも、STAP細胞の特徴である「分化した細胞から作られた証拠」と「多能性の証拠」となる最も重要なデータで、これらに不適切な画像が使用されていた事は、論文全体の信頼性を大きく損なっています。
小保方氏の博士論文の元になったTISSUE ENGINEERING: Part Aに掲載された論文(筆頭著者は小保方氏、責任著者はハーバード大学教授チャールズ・バカンティー氏)でも、複数のPCRバンド画像の「重複」が見つかり、今年3月13日に訂正(Erratum)が出されました。この様な数々の不適切な行為が見逃されてきたのは、周囲の指導的な立場にいた人達の問題でもあります。STAP細胞論文の共著者でもあり、バカンティー氏の研究グループに所属する小島宏司氏にも過去の論文で複数の不適切な画像の使い回しが指摘されています。
これらは、冷静な分析だと思う。
問題の多い論文が、どうしてNature誌に掲載されたのか?
科学誌での論文査読(同じ分野の研究者による論文掲載の可否の審査)は、主に内容に整合性があるか等のチェックを行った上で、内容のレベルや話題性などを判断して掲載するかどうか決定されます。不正がある前提で査読されないので、不正のチェックとしては機能していません。また、再現性があるかどうか実際に実験して確かめるという再現性の検証は論文査読の段階では行われません。
私も査読した経験があるが、全くここで書かれている通り、再現性を確かめるなんてことは、そもそも査読という行為の範囲外です。
客観的に比較するために、STAP細胞論文を投稿する前の主要科学誌の掲載論文数[総説も含む]と論文の最高引用数を調べてみました。Nature誌に掲載された論文の数は、笹井氏10本、丹羽氏1本、若山氏3本、バカンティー氏0本。Science誌に掲載された論文の数は、笹井氏0本、丹羽氏0本、若山氏2本、バカンティー氏0本。Cell誌に掲載された論文の数は、笹井氏6本、丹羽氏2本、若山氏1本、バカンティー氏0本(主要3誌の合計論文数は、笹井氏16本、丹羽氏3本、若山氏6本、バカンティー氏0本)。
論文の最高引用数(Google Scholarより)は、笹井氏1133回、丹羽氏3965回、若山氏2719回、バカンティー氏595回でした(595回引用されたバカンティー氏の論文は、背中にヒトの耳が生えている様に見えるネズミを牛の軟骨細胞を使って作ったという論文で、「バカンティマウス」として知られていますが、幹細胞研究分野のものではありません)。
このような緻密で、冷静な分析が必要です。新聞とかが本来すべきだけど、ジャーナリストにそういう姿勢は最近全く失われているように思う。自分の地道な分析ではなく、人の意見のうけうりが多い。
再現性への軽視が生んだ「スター研究者」
STAP細胞の研究を進めていく過程で、「再現性」が軽視されていた事は、大きな問題だと捉えています。「再現性」というのは、他の誰でも同じ結果を出すことができるというもので、客観性を担保する上で重要となります。科学の手続きの中でも結果の信頼性を保証する大事な項目です。
しかし、若山氏が(理研に在籍している時に)小保方氏に教わって一度成功した他は、STAP細胞は小保方氏しか作ることができませんでした。Natureに論文を出すくらい自信があり、権威とされる人達が共著者にいるのですから、何重にも確認してから投稿したものと多くの人達は思っていましたが、実際には、理研の組織内では追試が積極的に行われずに「小保方氏の関与なしには再現できない」という「再現性が欠落」したまま突き進んでしまっていました。
リコール対策でもお上(かみ)に問われるのは再現性です。問題となった事象が再現して、初めて原因が正しいと認知され、その原因対策が有効だと認められるのです。しかし、この問題を再現するのが非常に難しい。
科学として成立する大事な条件の1つである「再現性」の軽視は、「未熟な研究者」を「優秀な研究者」だと誤認させた原因ともなっています。
現在の世の中は、話題性を求めているから、こうなって当然なのかもしれないですね。
1.教育の不備
2.権威のある共同研究者の名前で信用されてしまう
3.科学の手続きで大事な「再現性」の確認が軽視されがちである
以上3つのポイントについて取り上げましたが、これらは理研以外の研究機関でも共通して起きる可能性があります。
理研に限らないでしょう。
過去の捏造問題を振り返ると、他の人ができない実験を難なくやりこなす「黄金の腕」「神の手」等と賞賛された「凄腕の研究者」が実は不正を行っていたというケースが、しばしば社会を騒がせる大事件に発展しています。
興味のある方は、ジョン・ロング事件(1979年)、マーク・スペクター事件(1981年)、ヘンドリック・シェーン事件(2002年)などを調べてみて下さい。
そうなんです、過去から何も改善していないのです。