梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

綺麗にしたいです

2009年02月10日 | 芝居
踊りのお稽古に行く前に、歯科検診をうけてきました。
歯医者さんに足を踏み入れるのは随分ひさしぶり、他のお医者さんは平気なんですが、どうも歯医者は緊張しますね…。
お陰様で、虫歯になりかけている親知らずが1本あるだけ、歯の磨き方のゾンザイさに定評がある私としては意外な結果でしたが、とにかく簡単に済みそうで良かったヨカッタ。

一方、生え方が極端に悪い八重歯をこれからどうするかも、先生とじっくり相談。今はいろんな対処法があるのですね~。噛み合わせや発音など考慮して、これは近々本格的に治すことになりました。

…レントゲン画像が、診察台のパソコン画面ですぐ見られるということに、ちょっと感動してしまった次第です。

二ヶ月ぶりです

2009年02月08日 | 芝居
今日から踊りのお稽古が始まりました。
11月以来、2ヶ月ぶりのお稽古、私にとっては今日が本年初稽古。
藤間の御宗家へ通う道のりは、日曜日ということもあり大変な混みようで…。

引き続き『舞妓の花宴(しらびょうしのはなのえん)』、通称「男舞」です。
心身ともに鈍っておりました。深く反省。
早く勘を取り戻さねば!

思うこと

2009年02月07日 | 芝居
1月の『三番叟』や『鏡獅子』、当月の『勧進帳』と、続けて後見で出演しておりますと、あらためてその難しさを感じます。
そんなことが気にならなくなる境地まで早く達したいものですが、「演じる」ものではないので、かえって今の自分が出てしまう。それが怖いです。
勤める仕事の量や内容によりましても、多ければ多いほど、難しければ難しいほど、もちろん緊張もいたしますし、反省と改善の繰り返しに頭を悩ますことに違いないのですが、やっぱり、芝居の雰囲気を壊さないこと、これが一番気を遣うところで、そういう点で、やっぱり先輩方の勤められている後見は、居ずまいの美しさ、存在を消した存在になっている凄さ。大きな目標です。

昔、『土蜘』で師匠が演じる源頼光の後見をさせて頂いたおり、これは色々と用事があり、また舞台上で“龍神巻”を超短時間でしなくてはならないなど、ちょっと課題の多い後見だったのですが、自分ではテキパキ順調にこなしているつもりでも、はたから見ている方にはバタバタ騒々しく、シンよりも後見が目立ってしまうようだとご指摘をいただき、あの頃は後見の難しさにも気がついていない頃でしたから、そんな声にも正直「こんなに頑張っているのに…」と思ってしまいました。

後見が「頑張って」ちゃァいけないんだと気がついたのは、情けないことに遥かあとのことです。
どうして、もっと気をつけられなかったのか。自分の視野の狭さ、余裕のなさに、今でも後悔しています。
だから、いつか、『土蜘』の頼光の後見はもう1度勤めさせて頂きたいな、と思っております。
リベンジ、なんて言葉はふさわしくないかもしれませんが、今なら、もう少し、もう少しでも前進した仕事ができるはず(できなかったらウソだ)と思います。

1回1回の舞台、ホントに無駄にはできない!
心身のバランスに気をつけて、前向きに取り組んでまいります!




おさだまり

2009年02月06日 | 芝居
『蘭平物狂』の幕切れは、主なる登場人物が居並ぶなか、主人公である奴蘭平実ハ伴義雄が中央で緋毛氈の"三段"に上がり、ツケの打ち上げも華々しく皆々引っ張りの見得。

いかにも大時代な狂言らしい演出です。

先ほどまで大立廻りをみせていた花四天も、槍を手に上手下手に居並んでおりますが、止め柝の「チョン」をきっかけに、いっせいに槍を舞台に打ち付け、バンッ!と音を出してから改めて構え直しておりますが、これは古風な狂言ではよく見られるやり方で、『千本桜』の「奥庭」や舞踊の『将門』でも行われていますね。

…以前澤潟屋(段四郎)さんの『鎌髭』が上演されましたとき、私は花四天をさせて頂きまして、やはり古風な芝居でしたからこのやり方をしたのですが、ある日いつもと同じようにバンッとやったら、打ち付け方がまずかったんでしょうか、槍の穂先からボキッと折れてしまいまして、今さら予備と取り替える時間もなく、ひとりだだの棒を持ってキマるというハメになってしまいました。
いくら鹿爪らしい顔をして「ヤァーッ」とヤ声を言ったところで、手にいているのが折れた棒ですからね。茶番ですよこれは。
終演後は同じ役の皆様にお詫びしっ放し。恥ずかしいやら情けないやら、悔やんでもかえらぬ失態でした。

着かたにも先人のお知恵が

2009年02月04日 | 芝居
『勧進帳』の義経は、紫色の<水衣(みずごろも)>に鶸色の<大口(おおくち>の袴、赤白段染めの地に笹竜胆模様の織物着付という扮装が、“定式”として伝わっております。

どなたが義経をなすっても、この決まりはかわりませんが、なさる方によって、<水衣>の着方が少々変わります。

両袖を、肩の部分であらかじめたくし上げたかたちで着て、両の襟先は重ね合わせない。(なので袴の紐の結び目が見える)というもの。

袖はたくさず、両襟先は袴の紐の結び目を隠すように、重ね合わせる、というもの。

写真などで見比べて頂けると有難いのですが、双方で、描くフォルムがだいぶ変わりまして、うける印象も違ってくると思います。
義経を演じる方が、どの<型>でなさるかということで違ってくるものなのですが、ちなみに持ち道具の<中啓>も、襟に差すのか、水衣を締める紐に小刀と一緒に挿すのか、という違いもございますし、笠の持ち方にもそれぞれのなさり方がございます。

<見た目>の違いばかり申し述べてしまいましたが、<型>を支える根幹は<心>であることは申すまでもなく、これにつきましては私は語る資格をもちません。
弟子として、義経というお役に携わる上で、先輩方から“心得事”として教わったことだけ、今回はご紹介させて頂きました(師匠のなさり方と違う着せ方しちゃったらタイヘンですものね)。

鬼は外!

2009年02月03日 | 芝居
本日、昼の部『京鹿子娘二人道成寺』終演後に、恒例の<豆まき>が行われました。
幹部俳優の皆様が、紋付袴姿でうち揃って、客席へ豆の入った袋を…。


先ほどまで『二人道成寺』にお出になっていらした大和屋(玉三郎)さん、音羽屋(菊之助)さん、所化役の方々も扮装のままで。大人数での賑々しい催しとなりました。

音羽屋(菊五郎)さんのご発声を合図にはじまった、派手な鳴物の中での数分間の<客席と舞台の交流>。ご来場賜りましたお客様には、楽しんで頂けましたでしょうか?
赤鬼さん、青鬼さんも、お疲れさまでした!


↑鬼のウォーミングアップ


夜の部『三人吉三』「大川端の場」も、お嬢吉三の台詞に「ほんに今宵は節分か…」とあります。
今日はまことに時節にぴったりの歌舞伎座でございました。

北風吹きすさぶ日々

2009年02月02日 | 芝居
「煙比べん浅間山」が、煙りどころか噴火してしまいましたが、あいかわらず寒い毎日が続いております。
二月の歌舞伎座といえば、「節分の豆まき」やら「初午(二の午)祭り」やら、行事が色々ございますが、楽屋やロビーに飾られる<地口行灯>も、如月の風物詩です。
今月は、この行灯をたっぷりご紹介する機会を作りたいと思っております。

…夜の部の一演目にしか携わらない立場ですので、お芝居のお話をいたしますのもなんともおこがましい限り、せっかくですので、<歌舞伎座>についての記事が、お伝えできたらと考えているのですが…。


※ついでながら、私の10年間の役々を羅列しただけの「梅之の10年」を、1月のエントリーに追加掲載していますので、お暇な方は御覧下さいませ。時間は確実に潰せます。

始まりました!

2009年02月01日 | 芝居
お蔭様をもちまして、本日歌舞伎座如月興行<二月大歌舞伎>の初日を、無事迎えることができました。
『勧進帳』義経の後見に一点集中のひと月となりますが、まずその第1日目、大過なく勤めることができまして、安堵いたしております。
日曜日だったこともあるのでしょうが、大勢のお客様のお出ましを賜りまして、大変盛り上がった初日の舞台でございました。
大変有難いことでございます。
大昔から“入りが悪い”と言われる2月ですが、そんなジンクスを吹き飛ばすかのような熱気! このまま千穐楽まで無事つつがなく勤まりますよう、何卒よろしくお願い申し上げます!