梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

思うこと

2009年02月07日 | 芝居
1月の『三番叟』や『鏡獅子』、当月の『勧進帳』と、続けて後見で出演しておりますと、あらためてその難しさを感じます。
そんなことが気にならなくなる境地まで早く達したいものですが、「演じる」ものではないので、かえって今の自分が出てしまう。それが怖いです。
勤める仕事の量や内容によりましても、多ければ多いほど、難しければ難しいほど、もちろん緊張もいたしますし、反省と改善の繰り返しに頭を悩ますことに違いないのですが、やっぱり、芝居の雰囲気を壊さないこと、これが一番気を遣うところで、そういう点で、やっぱり先輩方の勤められている後見は、居ずまいの美しさ、存在を消した存在になっている凄さ。大きな目標です。

昔、『土蜘』で師匠が演じる源頼光の後見をさせて頂いたおり、これは色々と用事があり、また舞台上で“龍神巻”を超短時間でしなくてはならないなど、ちょっと課題の多い後見だったのですが、自分ではテキパキ順調にこなしているつもりでも、はたから見ている方にはバタバタ騒々しく、シンよりも後見が目立ってしまうようだとご指摘をいただき、あの頃は後見の難しさにも気がついていない頃でしたから、そんな声にも正直「こんなに頑張っているのに…」と思ってしまいました。

後見が「頑張って」ちゃァいけないんだと気がついたのは、情けないことに遥かあとのことです。
どうして、もっと気をつけられなかったのか。自分の視野の狭さ、余裕のなさに、今でも後悔しています。
だから、いつか、『土蜘』の頼光の後見はもう1度勤めさせて頂きたいな、と思っております。
リベンジ、なんて言葉はふさわしくないかもしれませんが、今なら、もう少し、もう少しでも前進した仕事ができるはず(できなかったらウソだ)と思います。

1回1回の舞台、ホントに無駄にはできない!
心身のバランスに気をつけて、前向きに取り組んでまいります!