梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

禊月稽古場便り・1

2009年02月26日 | 芝居
歌舞伎座3月興行『通し狂言 元禄忠臣蔵』のお稽古が早速始まりました。
『江戸城の刃傷』『最後の大評定』『御浜御殿綱豊卿』『南部坂雪の別れ』『仙石屋敷』『大石最後の一日』の6部構成のうち、『江戸城の刃傷』『御浜御殿綱豊卿』『仙石屋敷』に携わらせて頂きます。本日はこの3演目の<附立>でございました。

『江戸城の刃傷』では、師匠がお勤めになる浅野内匠頭とのやりとりがある、御坊主の関久和を勉強させて頂きますが、このようなお役は初めてでございますし、経験不足の身にとりましては畏れ多い限りで、大変緊張いたしております。稽古が始まる前から、ついついあれこれ悩んでしまうのですが、とにかく師匠をはじめ共演させて頂く方々のなさるお芝居の流れに添うこと、予め“こうしよう”とか“ああしたい”とか考えずに、その場でおきていることに素直に反応できるゆとりを持ちたい、そういうふうに願っております。
この度の『江戸城の刃傷』第1場、2場は、従来の演出とは少々違うやり方になりました。殿中での刃傷という、不測の事態の緊迫感をより高めたいという意図によるものです。私のお役も、そんな雰囲気をいささかなりとも作る存在ですので、本当に、本当に心して勤めたいと存じます。

『仙石屋敷』は、師匠が初役で仙石伯耆守をお勤めになります。伯耆守は、赤穂浪士の義挙に対して非常にシンパシーを感じている大名。2場目の、浪士一同に相対しての、討ち入りの仔細をただしてゆく問答は、真山青果の作品ならではの対話の面白さがあふれています。
私、この幕は生まれて初めて拝見いたしましたが、ことを成し遂げたあとを描くひと幕とはいいながら、ぴんと張りつめた空気が場を包み込んでゆく様子に、華やかさとか楽しさとかいうものとは違う、新歌舞伎ならではの面白さ、魅力を感じた次第です。
この芝居の幕開きには、兄弟子の梅蔵さんと部屋子の梅丸が伯耆守の家臣役として揃って出まして、台詞のやりとりがございます。この春中学生になる梅丸も、声変わりにさしかかっておりますが、元気に喋っております。どうかお見逃しなく!

『御浜御殿』は、幕開きのみの出演です。今回は奥女中同士の<綱引き>をお見せすることになりました。私の組の勝敗は、是非是非客席からお確かめ下さいませ…。