梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

早苗月稽古場便り・壱

2006年04月27日 | 芝居
今日から<團菊祭 五月大歌舞伎>の稽古がはじまりました。
私が出演させて頂く『外郎売』『権三と助十』『黒手組曲輪達引』は全て<附立>。歌舞伎座客席ロビーでのお稽古です。
『外郎売』で私が演じます<新造>は、舞台の色どりとして、並んで座っているだけですので、別段演技をするというわけでもございませんが、こういう役こそ、そのお芝居の雰囲気を邪魔せぬよう、気を抜かずに勤めなくてはなりません。二十分ほど正座をしたあとで立ち上がり、居所を変えるので、しびれを切らさないようにしなければなりませんね。
この演目、病気を克服された成田屋(團十郎)さんの復帰のお舞台。これまでと変わらぬお元気な成田屋さんのお姿を、久方ぶりに拝見して、私のようなものでも感慨深こうございました。これからひと月、同じ舞台に立てるという喜びもひとしおでございます。
…今回この演目では、普段は登場しない<曽我十郎>役で、師匠が出演いたします。といっても前例がないわけではなく、この演目が復活上演されてから、数回、十郎を出す演出があったそうです。後半、五郎と十郎それぞれに、奴がからんでの立ち回りがございますが、十郎の立ち回りの手順は、まず私が立師さんから教わりまして、それを私から師匠におうつしいたしました。これは、どんな演目のお稽古でも見られる、ごく普通のことなんですが、お稽古で、立ち回りの場面になると、私が師匠の前に立って動きをお見せするのが、ちょっと緊張いたしました。間違ったことをお伝えしてはいけませんし、口でも説明しながら動くというのが案外難しいんです。今回は短い立ち回りですので、混乱せずに無事勤まり、ホッといたしましたが、その間私は自分の勤める新造の出番をほっぽってしまいました(こういうこともままございます)。明日はちゃんと座りっぱなしで、新造に専念します!

続いての『黒手組曲輪達引』、こちらでも私は<新造>役でございまして、京屋(雀右衛門)さんの三浦屋揚巻について出てまいります。『外郎売』と同じく、お芝居の背景として、<何もしない>演技をせねばなりません。
このお芝居の序幕「不忍池の場」は、音羽屋(菊五郎)さん演じる番頭権九郎が、面白おかしい演技を見せる<チャリ場>でございます。しかも昔から、時事ネタや当世のギャグ、アドリブが入ってもOKとされておりますので、演者によって演出もかわるのですが、今回も相当面白いネタが繰り広げられ、稽古場は一時爆笑の渦でした。ここで言いたいのをグッとこらえておりますが、皆様どうか本番の舞台でご確認をお願い申し上げます。それから、大詰めの演出も、従来とは大きく変わるようですので、お楽しみに!
師匠は二幕目に<紀伊国屋文左衛門>役で出演いたします。

最後が『権三と助十』でしたが、<長屋の女房>ということで、井戸替えをする大勢の住人のうちの一人です。随分と大勢の出演者が、ぞろぞろ登場いたします。てんでに捨て台詞を言いながら賑やかに出入りを繰り返しますが、こういうときどんな台詞をいうか(それも女で)、色々工夫ができそうで楽しみです。前に作った“汚れた手拭“を、また使ってみましょうかね。

四月公演が大変な仕事量でしたので、今月は三役出演といっても、内容的にも時間的にも、随分とラクに感じられます。とはいえ決して気を抜かず、それぞれのお役の分をわきまえ、しっかり勉強したいと思います。
師匠は五役出演から二役に、しかも舞台に出ている時間は二つ合わせても三十分を越すか越さないかというくらいなので、ずいぶんな変わりようですね。
兄弟子の梅蔵さんは『江戸の夕映』『権三と助十』『黒手組曲輪達引』に、梅二郎さんは『外郎売』『権三と助十』に、弟弟子の梅秋は『権三と助十』『傾城反魂香』『黒手組曲輪達引』に、そして部屋子の梅丸も『江戸の夕映』に出演いたします。

明日は夕方からのお稽古なので、またまた朝寝坊をし、それからちょっと片付けものをしようと思っております。
少し余裕のある五月公演となりそうです。

…写真は家の近所に咲いていた花です。エニシダですかね? ご存知の方はご教授下さい。